08-経営他

サイバーセキュリティ お助け隊サービスとは

サイバーセキュリティ
お助け隊サービスとは

サイバーセキュリティ お助け隊サービスとは

サイバー攻撃で工場稼働停止等の実害も

今やパソコンやインターネットを仕事で利用するのが当たり前の世の中になりました。そんな中、近年日本では企業を狙ったサイバー犯罪が増加しています。
警視庁は 2021 年のサイバー空間をめぐる脅威の情勢などについてまとめた資料を公表しました。国内におけるランサムウェアによる被害件数は 146 件で、被害を受けた組織の 54%は中小企業です。
2022 年に入ってもトヨタ自動車の仕入先で、サーバーのシステムを暗号化しサーバー内の情報やシステムの身代金を要求する「ランサムウェア」の攻撃を受けて発注・受注システムが停止し、結果的にトヨタ自動車の部品調達が難しくなり、国内すべての工場が停止するという事例がニュースになっています。

中小企業向けサイバーセキュリティ対策

中小企業はその規模ゆえに、サイバー攻撃の予防や対策を行うための人員・情報等にリソースが割けないのが実情です。そんな中小企業向けに、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は「サイバーセキュリティお助け隊サービス」をお勧めしています。
この制度は IPA が認定する、サイバー攻撃への対処として最低限必要な施策を効率的かつ安価、確実に提供する企業のサービスを「サイバーセキュリティお助け隊サービス」として認定し、マークを付与するものです。
主な施策は異常がないか監視する「見守り」、問題が発生した時の「駆けつけ」(リモート支援も含む)、サイバー攻撃で突発的に発生するコストへの「保険」です。

IT 補助金では加点、今後は専門枠も

令和 3 年補正予算の IT 導入補助金事業においては、導入する IT ツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していると、補助金の審査について加点が得られるようになっています。
また、経済産業省はコロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に関連する施策発表の中で、サイバーセキュリティお助け隊サービスについては IT 導入補助金の「セキュリティ対策推進枠」として独立した枠を設けることを公表しています。
この機会にサイバーセキュリティ対策について考えてみてはいかがでしょうか。

会計検査院とは どんな組織なのか

会計検査院とは
どんな組織なのか

会計検査院とは どんな組織なのか

税制改正に会計検査院の指摘対応

令和4年度の税制改正にて、住宅ローン控除の大幅な見直しが行われましたが、発表等を見ると「会計検査院の指摘への対応」という文言があります。
低金利の下、実際の住宅ローン控除の借入金利が令和3年までの住宅ローン控除の控除率である1%を下回っている、と指摘をしたのは会計検査院です。普段聞きなれないこの「会計検査院」はどんな組織なのでしょうか。

会計検査院の仕事

会計検査院の仕事は簡単にいうと「国やその周りの組織の経理・財務を監督する」ことです。また、国の決算を確認するという職責も負っています。
会計検査院という組織は明治 22 年(1889年)、大日本帝国憲法が発布されるとともに、憲法に定められた機関になり、財政監督を行ったのがはじまりです。その後の日本国憲法にも第 90 条にて規定がされています。
ちなみに憲法に「会計検査院」という名称が明示されているため、名称を変えるには憲法改正が必要となります。
簡単に経理や財務の監督といいましたが、その内容は多岐にわたります。例えば ODA(政府開発援助)の検査や、医療費・年金の検査、消費税の検査や入札・契約手続きの検査等です。各項目について徴収不足や不正・誤りがないか、法令や制度に改善点はないか等をチェックし、不適切なものを発見したときには、指摘のみにとどまらず、是正や改善を要求する権限があります。

近年ではコロナ関係の検査も

近年では国の財政に大きくかかわる新型コロナウイルス感染症への対策費や感染症対策等による財務への影響についてなどもレポートしており、一部報道などで話題に上がった陽性者接触確認アプリ「COCOA」の不具合対応について、厚生労働省に対して是正改善の処置を求める内容を公開しています。
国会や裁判所に属さず、内閣からも独立した憲法上の機関として、様々な内容をチェックする会計検査院。「国の税務調査を行う税務署」みたいな印象を持ちますね。

“儲かっているはずなのに なぜお金がないのか”の分析

“儲かっているはずなのに
なぜお金がないのか”の分析

“儲かっているはずなのに なぜお金がないのか”の分析

儲かっているはずなのにお金がないの!?

A社は社長の代替わりを機に、店内の内装を一新し、在庫の品ぞろえも増やしました。その結果、順調に売上件数や売上高も増え、新社長のBさんは、そこそこ儲かった感触で決算期末を終えました。会計事務所に税金を計算してもらうと、予想通りに利益が出ていたようで、納税額も結構な金額が算出されました。
ところが税金を払う段になってみると、儲かったはずのお金は残っておらず、むしろ納税のために借入が必要な状況で、B社長は愕然としてしまいました。
なぜこんな事態となったのでしょうか?

会計上の利益とお金の実在は別のもの

税金計算のもととなる会社の会計上の利益は、売上などの収益から、売上原価や人件費その他の販売費および一般管理費などの経費を差し引いて計算されます。経費にできる売上原価は、当期の売上に対応するもののみであり、まだ売れていない在庫の購入費は当期の経費とはなりません。また、業務のために用いられる店舗の内装費や車両などの資産は、時の経過によりその価値が減るものとして経費の計上時期が複数年にわたりますので、代価として支払った金額のすべてが当期の費用となるわけではありません。
会社の利益は会計上のルールで計算されたものであるのに対して、お金の出(=在庫となっている品の仕入代金の支払、設備投資の支払など)が先行して、将来の経費に繰り延べされているものがあるため、A社は会計上の利益に比べ、儲けとして残っているはずのお金が足りなくなっていたのです。

お金が足りない理由を明確化する計算書

会計上の当期純利益とお金の流れの違いを説明してくれる書類があります。間接法によるキャッシュフロー計算書と言われるものです。損益計算書の値を減価償却費や在庫の増減等で調整することで、営業キャッシュフローを導き出すことができ、なぜお金が足りなくなっているのかの原因を分析することができます。
例えば、品ぞろえの幅を広げるために在庫を大きく持ってしまったことや内装の設備投資でお金の出が先行し、会計上の利益との乖離が出てしまったことがわかります。
逆に会計上の利益よりもお金が多く残っている場合もその原因がわかります。
作成してみることオススメの書類です。

企業が SDGs に取り組む理由

企業が SDGs に取り組む理由

企業が SDGs に取り組む理由

最近よく聞く SDGs とは

SDGs は「持続可能な開発目標」のことです。「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現」のため、2015年 9 月の国連サミットで採択された、2030年を年限とする 17 の国際目標があり、その下に 169 のターゲット、231 の指標が決められています。
日本国内では国が主導して SDGs 推進本部を構成し、政府施策のうちの重点項目を整理した「SDGs アクションプラン」を策定。
SDGs 達成に資する優れた取組を行う企業や団体を「ジャパン SDGs アワード」を通じて表彰しています。

企業はなぜ SDGs を推進するのか

最近、SDGs に取り組んでいることを掲げている企業が増えています。単純に「SDGsに取り組んでいます」という宣誓は社会責任を果たしている組織ということですから、イメージアップしやすいというのはありますが、他にもメリットはあります。
近年、地球温暖化や食料不足等の社会課題に対する危機意識が高まっています。その社会課題を地球規模の「需要」と捉えると、その部分にビジネスチャンスがあると考えることもできるわけです。SDGs に取り組むことによって製品やサービスに付加価値が生まれることもあります。例えば自然環境に配慮した製品であれば、見た目や機能が同じものでも、消費者が購入を決める際の判断材料の一つになるということです。

資金調達面でも SDGs が有効?

金融業界が企業に投資する際に、財務情報を見るのはもちろんですが、国連は金融業界に対して「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(管理体制)」の略称である ESG を反映するよう提言しています。
SDGs は ESG を考える上で重要な指標となっているため、資金調達でも有利になることがあるのです。

中小企業の SDGs の相談先

中小企業の SDGs への取り組みについては人員や資本の問題もあり、「考えたこともない」という会社も多いと思います。ただ、今後は社会課題に対しての企業の姿勢に目を向けられる機会は増えてゆくはずです。
自社で SDGs の何を目標にして、どう活動してゆくのかは、各都道府県にある中小企業支援センター等のよろず支援拠点で相談が可能ですので、この機会に検討をしてみてはいかがでしょうか。

「損益分岐分析」は簡単

「損益分岐分析」は簡単

「損益分岐分析」は簡単

損益分岐分析とは

日商簿記検定の工業簿記・原価計算の出題範囲にも含まれていますが、比較的簡単な財務分析の手法に、損益分岐点を計算して営業計画や予算の策定に生かす「損益分岐分析」という手法があります。損益分岐点とは利益がゼロになる時の売上高を指し、この時の売上高を損益分岐点売上高といいます。この売上高を基準にするとより実情に即した営業計画や予算を策定することができます。

ポイントは変動費・固定費の分解

この手法では、まず一定期間の損益計算書の費用項目を売上高に対して比例的に変動するか、定額であるかによって変動費と固定費に区分します。例えば商品仕入は変動費ですが、地代家賃や人件費や減価償却費は固定費です。区分した変動費と固定費を合計し、売上高から変動費を差し引いた利益(限界利益=粗利益といいます)でその期間の固定費を賄うには売上高はどれだけ必要かを計算します。粗利益で固定費をトントンで賄うことができる時すなわち粗利益=固定費の時の売上高を損益分岐点売上高と言います。

計算してみましょう

売上×粗利益率(粗利益)=固定費となります。この算式で売上を求めると、
売上=固定費÷粗利益率となります。これが損益分岐点売上です。

更に損益分岐点売上を超えた売上の粗利益を計算すると以下となります

(売上-損益分岐点売上)×粗利益率=(売上-固定費÷粗利益率)×粗利益率=
売上×粗利益率-固定費=粗利益-固定費=利益

損益分岐点売上が分れば、超えた売上の粗利益が利益であるとすぐに見当が付きます。また逆も同じで、損益分岐点に足りない売上の粗利益が赤字です。

起業時の法人銀行口座開設の ハードルと事前準備

起業時の法人銀行口座開設の
ハードルと事前準備

起業時の法人銀行口座開設の ハードルと事前準備

年々高くなる法人銀行口座開設のハードル

警察庁の発表では、令和元年の特殊詐欺の認知件数は 16,851 件(-993 件、-5.6%)、被害額は 315.8 億円(-67.0 億円、-17.5%)で、前年に引き続き認知件数、被害額ともに減少しているが、依然として高い水準の被害が発生していることから、深刻な情勢です。こうした特殊詐欺に実体のない法人銀行口座が使われることが多いことから、銀行での法人口座開設のハードル(=準備すべき書類、事業実態の実在性など)は年々高くなっています。

起業時に法人口座開設で躓かないために

口座開設ができなければ、顧客や取引先から「銀行から認められていない存在」との烙印が押され、事業は立ち行きません。
法人の設立(=会社を作ること)も暴力団対策法等で株式会社の定款認証が厳しくなってきていますが、さらに会社と事業の実在性を示さなければならないのが口座開設時です。銀行により審査基準は違いますが、次のような準備をしておくことで法人口座開設を乗り切ることができます。


(1)資本金はある程度必要
資本金は 1 円から会社設立ができますが少な過ぎると事業実態がないとみなされます。事業遂行可能な金額が必要です。
(2)事業実態のある場所が必要
繁華街の住所表示目的でバーチャルオフィスを本店にすると、実在性なしとされる可能性が高くなります。銀行から訪問調査されても対応できる場所が求められます。
(3)事業実態説明の事業計画書を準備
事業実態の実在性を示すために、締結済みの顧客との売買契約書(=複数が望ましい)などを示すことができればベターです。
まだそうした証拠を示すことができない場合には、少なくとも、銀行に実現可能性を納得してもらえるだけの事業計画書を準備しておきましょう。

法人の所有者が外国法人の場合

法人の株主が非居住者(=外国法人・国外在住者)の場合には、提出書類が増えます。親会社の上にさらに親会社がある場合などには、実質的支配者の本人確認資料(=パスポートの写し、公的機関発行の会社登記・居住者証明書など)も必要となります。
なお、2016 年 10 月に政府が対日直接投資推進目的に金融庁経由で 3 メガバンクに態勢整備を要請し窓口はできていますが、審査体制(必要書類)に優遇はありません。

ご存じですか? 中小企業施策利用ガイドブック

ご存じですか?
中小企業施策利用ガイドブック

ご存じですか? 中小企業施策利用ガイドブック

中小企業向け施策利用の決定版!

中小企業庁は「中小企業施策利用ガイドブック」を公開しています。このガイドブックは、経営改善・資金繰り支援対策・震災対策など、中小企業者が国の施策を利用するための手引書として、主な施策の概要を紹介しているものです。
目次から施策を分野別に探すことができるほか、ニーズから適した施策を探すこともできるようになっています。また、各種相談窓口の連絡先も地域別に掲載されています。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2022/index.html

目次から探す

中小企業施策を分野別に探すことができます。


経営サポート:技術力の強化、創業・ベンチャー支援、経営革新支援、新たな事業活動支援、知的財産支援、再生支援、雇用人材支援、海外展開支援、取引・官公需支援、経営安定支援、小規模企業支援
金融サポート:融資制度、保証制度など
財務サポート:税制、会計、事業承継
商業・地域サポート:商業・流通支援など
分野別サポート:建設業、農林水産業、商品、生活衛生業など
相談・情報提供:相談窓口など

インデックスから探す

自身のニーズに適した融資、補助金、相談、セミナー等を探すことができます。
技術開発・創業・効率化や革新・他事業者との連携・知的財産権活用・事業再生・IT利活用・あっせん・環境適応・小規模支援・事業承継・人材育成雇用・海外展開・防災対策・働き方改革等のニーズから探すことができます。

詳細は各問い合わせ先に

各施策の説明の最後には利用方法・問い合わせ先のURLや電話番号等が掲載されています。不明点は詳細ページにアクセスするか、担当部署に問い合わせましょう。
また、このガイドブックを冊子で欲しい場合は、中小企業庁の冊子請求フォームから注文が可能です。冊子は無料ですが、送料は着払いで自己負担となります。

大企業向け賃上げ促進税制 マルチステークホルダー経営宣言とは

大企業向け賃上げ促進税制
マルチステークホルダー経営宣言とは

大企業向け賃上げ促進税制 マルチステークホルダー経営宣言とは

令和 4 年度税制改正の賃上げ促進税制

継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大 30%(中小企業については最大 40%)を税額控除できる賃上げ促進税制ですが、一定規模以上の大企業に対しては「マルチステークホルダーに配慮した経営への取り組みを宣言していること」が要件になりました。
資本金 10 億円以上かつ、従業員数 1,000人以上の大企業が賃上げ促進税制を利用したい場合は自社のウェブサイトに宣言内容を公表したことを経済産業大臣に届け出なければなりません。

マルチステークホルダー経営宣言とは

「マルチステークホルダー(・プロセス)」とは、従業員や取引先、消費者や関係会社等、企業活動をするうえで影響を受ける利害関係者である「ステークホルダー」が持続可能な発展を目指して協働して課題解決にあたる合意形成などの意思疎通を図ることを言います。
マルチステークホルダー経営宣言を要件にしたということは、「取引先等への配慮もしながらこの賃上げ促進税制を利用してください」、言い換えれば「意思決定の社会的正当性の確保もしてください」ということなのでしょう。

日本に古くからあった CSR 的概念

近年、CSR(企業の社会的責任)や SDGs(持続可能な開発目標)や、今回取り上げたマルチステークホルダー経営宣言等、企業経営が社会的責任についてどういった影響をもたらし、どのように反映させてゆくのかを明文化する動きが強くなっています。
旧来、日本には近江商人の経営哲学である「三方よし」、「売り手によし、買い手によし、世間によしであればよい商売といえる」という概念があります。これを詳細に詰めてゆくのがマルチステークホルダー等の、最近流行の明文化と考えても差し支えないでしょう。
商いと社会には切っても切れない縁があり、どんな規模や業種の企業でも、ステークホルダーと協働している面があるはずです。自社の企業活動を、ステークホルダーへの影響等の視点から見てみると、何か発見があるかもしれません。

どのくらいの規模? 中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模?
中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模? 中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模の会社のことをいう?

ニュース等でよく聞く「中小企業」「小規模企業」「中堅企業」「零細企業」という企業規模を表す言葉ですが、実は「中堅企業」と「零細企業」は法で定められていない、あくまでもイメージの言葉です。
「中小企業」と「小規模企業」の定義については、中小企業の経営革新や創業、経営基盤の強化等を行うべく制定された中小企業基本法によって定められています。

ただし、制度によって「中小企業である」として扱われる範囲が異なる場合もあります。また大企業の子会社等で「みなし大企業」として扱われて補助金等が受けられない企業や、旅館業やソフトウエア業等、原則の定義とはことなる枠組みで指定されているケースもあります。「中堅企業」という言葉は、「中小企業でも上の方、中小企業を超える場合もあり」といった規模感を指すことが多いようです。

ただしこちらも例外があり、宿泊業や娯楽業の従業員数 6~20 人の事業者は「小規模企業」の対象になる場合があります。
「零細企業」という言葉は、特に小規模企業の中でもわずかな資本・設備で経営している企業を指すことがほとんどです。

「中小法人」という定義もある

今までの説明は中小企業基本法における「企業規模」の定義でしたが、法人税法における「中小法人」の定義は業種を問わず「資本金 1 億円以下」になります。こちらにも例外があり、3 年間の平均所得が 15 億円超である場合や、みなし大企業は除外される等があります。

 

ロシア金融制裁における 損害リスクと税務上の取扱い

ロシア金融制裁における
損害リスクと税務上の取扱い

ロシア金融制裁における 損害リスクと税務上の取扱い

ロシアへの金融制裁=SWIFT締め出し

ロシアのウクライナ侵攻に対する金融制裁として、日本もアメリカやEUに続き、SWIFTからロシアを締め出すことを表明しました。SWIFTは貿易などの送金で使われる国際的な決済ネットワークです。
ここから締め出されると世界の経済の動きの中から締め出されることを意味します。
日本は、ロシアからは石炭をはじめ、サケ・マスなどの海産物まで、たくさんの輸入をしています。代金の支払ができなくなれば、次の輸入も止まり、輸入業者のみならず私たちの生活にも影響が出ます。

金融制裁下での送金リスク

金融制裁が始まってすぐのころ、取引先銀行からA社に海外送金の予定に関する照会がありました。A社では実際にロシアに送金する必要性があったので、銀行に対して送金依頼を掛けたらどうなるか逆に質問してみました。
銀行からは、1)現在社内規定でロシア宛の送金は厳しくチェックされることになっており、送金自体ができるか分からない、2)仮に受付銀行でOKとなった場合でも、経由銀行で資金が差し押さえられ、没収されるリスクがある。こうなった場合資金は戻って来ない、という回答がありました。
こうしたリスクが残る中でイチかバチかに賭けて送金することはできません。

経由銀行で没収された損害の税務上の扱い

没収リスクを承知の上で、送金手配をし、実際に没収された損害は、税務上どのように取り扱われるのでしょうか?
法人や個人事業主がその事業に係る送金で没収された損害は、事業上の損金や必要経費として扱われることになるものと考えられます。しかしながら、支払義務は残ったままですので、丸々損害として経営にダメージを与えます。
一方、事業に関係のない個人が生活上で購入した対価として支払うものが没収されたら何か救済措置はあるのでしょうか?
所得税法に「雑損控除」という救済制度があります。しかしながら、これは災害や盗難などで資産に損害を受けた時のものであり、送金経由銀行での没収は該当しないものと考えられます。となると、やはり、丸々大損です。
リスクがあると送金は控えられます。こうして金融制裁が効いてくるのです。