06-法務

公益通報者保護法の改正 ~役員も対象になります~

公益通報者保護法の改正
~役員も対象になります~

公益通報者保護法の改正 ~役員も対象になります~

公益通報者保護とは

公益通報者保護とは、「公益のために通報を行った労働者を保護するためのツール」とされています(消費者庁 HP)。
従来、「リコール隠し」や「産地偽装」「事故の隠ぺい」などの会社の不祥事について、労働者から行政機関などへ通報(内部告発)が多くなされてきました。
公益通報を行った労働者が保護されないと、公益通報をしたことによる不当解雇などの不利益を被る可能性がありますので、労働者が安心して公益通報をしやすくするための法律が「公益通報者保護法」です。

「公益通報者保護法」の改正

「公益通報者保護法」は 2006 年に施行され、施行後5年を目途に見直しするとされていましたが、今年 6 月から改正法が施行されることとなりました。
以下の3点が改正の目的とされています。

①事業者自らが不正を是正しやすく、安心して通報が行われやすくする。
②行政機関等への通報を行いやすくする。
③通報者がより保護されやすくする。

①については、窓口の設定、調査是正措置などの体制整備の義務づけ(300 人以下の中小事業者は努力義務)、助言指導・勧告・公表などの行政措置の導入、通報者特定情報の守秘の義務化などが行われます。
②については、行政機関や報道機関等への通報の条件が拡大されます。
③については、通報に伴う損害賠償責任の免除が追加され、保護対象の通報は刑事罰だけでなく、行政罰も加わりました。

役員も公益通報者保護の対象に

公益通報者の範囲が拡大され、労働者だけでなく、退職後1年以内の退職者、役員(自ら調査是正措置に努めたことが前提)も新たに対象となりました。
役員に公益通報を行ったことによる解任などの不利益が生じた場合、当該役員は会社に対して損害賠償請求が可能となります。
会社としては、労働者以外に公益通報者保護の対象が拡大することを前提に準備と対応が求められます。

身元保証書に極度額と有効期限の 取り決めはありますか?

身元保証書に極度額と有効期限の
取り決めはありますか?

身元保証書に極度額と有効期限の 取り決めはありますか?

民法改正で個人保証に極度額の定めが必要

2020 年 4 月1日に施行された民法の大改正が行われたことをご存じと思いますが、個人保証に極度額の定めが必要となり(改正民法第 465 条の 2)、社員から受領する身元保証書についても極度額の定めが必要となっています。
そもそも、身元保証に関する契約については、「身元保証ニ関スル法律(以下「身元保証法」)」という、わずか6条からなる古めかしい法律があり、その中では極度額について規定されていません。
しかし、改正民法第 465 条の 2 第 2 項で、「個人保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めており、2020 年 4 月 1 日以降に取り交わされた身元保証契約が対象となります。

身元保証の契約上限は5年

身元保証法第 1 条では、期限の定めのない身元保証契約の上限を 5 年としており、身元保証契約は自動更新ができないため、5年を経過すると新たに身元保証契約を取り交わす必要があります。
しかし、5 年を経過した身元保証書の取り直しが行われていることは、実務上少ないのではないでしょうか?

身元保証書を入手できない場合の対応

身元保証する側にとって、極度額がある方が無制限保証より安心ではありますが、連帯保証の形式をとることが多いため、極度額が設定されていたとしても、連帯保証がネックとなって、保証人が躊躇し、会社が身元保証書を入手できないケースも増えることが予想されます。
その場合、「身元保証書」や「身元保証契約書」ではなく、「誓約書」の形式として、被保証人たる社員が社員としての適格性を有することや、万一の場合には問題解決に向けて会社に全面的に協力することを保証人に誓約いただくなど、柔軟な対応をとることもやむを得ないかもしれません。

いつの時代も絶えない結婚トラブル 「3枚の婚約証書」事件

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「3枚の婚約証書」事件

いつの時代も絶えない結婚トラブル 「3枚の婚約証書」事件

昔の契約書-「起請文」(きしょうもん)

古典落語に「三枚起請」という演目があります。元は大阪落語の話。5 代目志ん生さんや 3 代目志ん朝さんの持ちネタでした。
起請(起請文)とは、約束を破らないことを神仏に誓う昔の誓書(契約書)のこと。
次のような順の構成で書かれるそうです。

熊野誓紙「熊野でカラスが三羽死ぬ」

鎌倉時代から、起請文は社寺で頒布される牛王宝印という護符の裏に書くのが通例となり、熊野三山のものが有名だったそうです。その護符が熊野の神使であるカラスに似ているので、「約束を破ると熊野でカラスが三羽死ぬ」と言われていました。
「三枚起請」は、遊廓の遊女が3人の客にそれぞれ「遊女の年季明け後に結婚する」という前書の起請文を3枚書いたことにより、客の男3人が「いったい誰と結婚するんだ!」と遊女に詰め寄る話です。

現代でいえば「婚約証書」

昔の婚姻トラブルの話ですが、現代でも、そのような起請文を書くことはできます。
「婚約証書」というものです。
婚約自体は手続を要しないものなので、法律の規定自体は存在しませんが、大正時代に「婚姻の予約」を認める判例が出たことで「法律的な約束」として認められております(不当に婚約を破棄すると慰謝料の賠償責任が生じることになります)。
「婚約証書」は、神仏には誓いませんが、公証人役場に行って公正証書にすることができます。主な記載内容は次のとおりです。

また、「婚前契約書」という形で、婚姻の届出、夫婦のあり方、家事分担、財産、その他、生活費、子どもの教育、慰謝料、離婚などを具体的に定める場合もあります。
また、民法では、夫婦間の財産上の問題に関する取り決めについて、婚前に行う「夫婦財産契約」という制度があります。

民法の改正による 電子領収書の提供請求権

民法の改正による
電子領収書の提供請求権

民法の改正による 電子領収書の提供請求権

書面主義を卒業

昨年9月1日施行の民法改正があり、商品等の買い手は売り手に対し、書面での領収書に代えて電子領収書の交付を請求できることになりました。書面主義だった民法が変わったのです。
条文としては、弁済者に電子領収書の交付請求権があり、弁済受領者には、不相当な負担でない限り、それに応ずる義務があると、しています。弁済者には、領収書の提供方式が書面と電子のいずれに依るのかの選択権が与えられたわけです。

保存・閲覧の可能状態

電子領収書の発行とは、弁済者が電子領収書を保存、あるいは閲覧し得る状態にすることです。閲覧する電子領収書は、撮影等による画像保存が可能でなければなりません。アプリ上で画面表示された領収書の内容を撮影画像として保存されたものも、弁済がなされたことの証拠として一定の価値を有する、と案内されています。

「不相当な負担」の意味

また、「不相当な負担」の意味は、次のような場合のことです。
①請求時点において弁済受領者側に電子領収書提供情報システム等が整備されていない
②請求時点においてシステム障害等による電子領収書発行困難事情がある
③弁済者の要求が弁済受領者側の対応困難な方式での電子領収書である
なお、電子領収書の発行システム等の体制整備がされているにもかかわらず、前例がないことを理由にしたり、たまたま対応した従業員に操作能力がなかった、というような場合については、「不相当な負担」には当たりません。

インボイスとの兼ね合い

また、令和5年 10 月より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されますが、「民法上の受取証書」と「区分記載適格請求書(インボイス)」では、必要とされる記載事項が異なります。ただし、「民法上の受取証書」と、それ以前に発行されている請求書や納品書を含めて、インボイスが必要としている事項、①請求書発行者の氏名又は名称、②取引年月日、③取引内容、④税率ごとに区分して合計した税込対価の額、⑤請求書受領者の氏名又は名称、が記載されていれば、これを保存することにより消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。

経営他

新登場! M&A支援機関

新登場!M&A支援期間

M&A支援機関登録制度の創設

中小企業のM&A促進戦略として中小企業庁が4月に公表した「中小M&A推進計画」では、M&A支援機関に係る登録制度の創設を唱っていました。
全国的に大規模・中規模向けのM&A支援機関が活動しているが、M&A支援機関の支援の妥当性を判断するための知見が不足している中小企業が存在する状況下での、M&A支援機関の質を確保する仕組みを創らなければならない、としていました。
制度創設日は、改正中小企業等経営強化法施行日の2021 年8月2日です。

登録可能な対象者

経産省の「登録制度の概要」によると、M&A支援機関とは、「中小M&Aを支援する機関」であり、ファイナンシャルアドバイザー業務(FA・片方代理)又はM&A仲介業務(双方代理)を行う者です。
具体的には、M&A専門業者(FA、仲介業者)、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマー、事業承継・引継ぎ支援センター等が登録してくれることを予定しているようです。

第一次公募による登録状況

公表された登録M&A支援機関数は、2021 年10 月15 日現在で2278 件です。うち、法人は1700 件、個人事業主は578 件です。また、上位5業種は、M&A仲介専門業者が544 件、FA専門業者が394 件、税理士が517 件、公認会計士が233 件、地方銀行・信金・信組が125 件です。
M&A契約に深く長く関わるM&A支援機関登録で、税理士・公認会計士が33%をも占めているということには、驚きです。

登録要件は?

①「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言し、遵守すること
②登録要件を充足している旨を自社HPで掲載すること
③登録要件を充足している旨を顧客に書面で事前説明すること
④毎年度、実績報告を提出すること
なお、登録をしたものの、特段合理的な理由なく支援実績が芳しくないなど、一定の要件に該当する場合には、登録の継続を認めず、登録取消しとなります。
また、登録されたM&A支援機関に対する苦情情報提供受付窓口を設けて、公開監視による制度充実をはかる予定になっています。