02-所得税

退職所得の所得税と住民税

退職所得の所得税と住民税

退職所得の所得税と住民税

退職所得に対する住民税

住民税は、通常は翌年課税ですが、退職所得に対する住民税は、特別徴収により完結する現年課税です。課税権も、退職所得が支払われた年の 1 月 1 日現在の住所地の自治体にあります。
課税標準も、他の所得と分離されているので、完全分離課税となります。所得税での退職所得も分離課税と言われますが、所得税では、合計所得金額の構成要素であり、損益通算や、純損失・雑損失の繰越控除や、所得控除の適用が可能です。しかし、住民税での退職所得については、合計所得金額の構成要素ではなく、損益通算や、純損失・雑損失の繰越控除や、所得控除の適用は出来ません。分離課税の分離の程度が徹底しています。

例外としての総合課税の退職所得

但し、次のような、特別徴収が義務ではない退職所得は翌年課税で総合課税です。
①常時2人以下の家事使用人のみに給与等の支払いをする者が支給する退職手当等
②租税条約等により所得税の源泉徴収義務を有しない者が支給する退職手当等
③退職手当等の支払いを受けるべき日の属する年の 1 月 1 日現在、国内に住所を有しなかった者が国内で受ける退職手当等

合計所得金額の概念が異なる不都合

退職所得があることによって、所得税で、公的年金等控除額が 10 万円又は 20 万円引下げられたとか、配偶者控除・配偶者特別控除が減額又は適用除外になったとか、寡婦控除・ひとり親控除・基礎控除の適用除外となったとか、雑損控除と医療費控除の足切り額が大きくなってしまったとか、ということになったとしても、住民税では、分離課税の退職所得があることによるこのような影響は、完全に排除されます。
とは言え、所得税の申告書の提出だけで、住民税での退職所得の影響の排除は、自動的に完全になされる保証はありません。特に、適用除外の場合の復活は、所得税の申告書だけからでは遡及追跡困難なので、住民税の申告書の提出が必要です。
国民健康保険料や介護保険料や後期高齢者保険料の計算は、住民税に準拠してなされるので、これらの負担にも影響します。

自問と疑問 退職所得は申告不要でよい?

自問と疑問
退職所得は申告不要でよい?

自問と疑問 退職所得は申告不要でよい?

退職所得は申告から外すのが原則

源泉徴収によって納税済みなので、退職所得の金額については、確定申告をする必要がありません。これは、現職当局者執筆の「確定申告の手引」において記されているところです。
それでも強いて退職所得申告をする場合があるとしたら、退職所得の金額を損益通算の対象に出来る場合、退職所得の金額から純損失や雑損失の繰越控除が出来る場合、退職所得の金額から所得控除が出来る場合、寄附金控除の限度額計算で有利計算に出来る場合など、有利選択の場合でしょう。

有利選択でない時に申告に含めると

逆に、「公的年金等に係る雑所得」以外の所得の合計所得金額が 1000 万円超の場合には、公的年金等控除額が一律 10 万円引下げられ、2000 万円超の場合には、一律 20 万円引下げられます。配偶者控除・配偶者特別控除は、本人の合計所得金額が 900 万円から段階的に控除の金額が減少し、合計所得金額 1000 万円超では対象外となります。
寡婦控除・ひとり親控除は、合計所得金額500 万円以下との適用制限があります。基礎控除は合計所得金額 2500 万円以下に限定です。雑損控除と医療費控除の足切り額は合計所得金額が大きくなると増える場合があります。これらの場合に於いては、退職所得を申告に含めると、税負担を増やす結果になることがあります。

突然ですが・・・・

国税庁のホームページの確定申告コーナーにおける今年の確定申告書A「令和3年分用」には、「令和5年1月から申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます」の文字が記載されていて、確定申告書A用の「手引き」の表紙にも、同じメッセージが記載されています。そして、確定申告書B用の「手引き」の「退職所得がある方」の項目の欄において突然、従来通りの文言の後に「退職所得のある方が確定申告書を提出する場合は、退職所得を含めて申告する必要があります」との追加挿入文を入れ、申告からの除外は許されないとしました。
税制改正無しのままでの解釈変更なのか、改正への予告なのか不明ですが、申告書AとBにおける 2 つの突然のメッセージは、表裏の関係にあるように思われます。

 

不動産所得の事業的規模とは?

不動産所得の事業的規模とは?

不動産所得の事業的規模とは?


青色申告者が不動産所得を申告する場合、貸室が 5 棟 10 室に届かない場合でも、賃料収入の大きさや賃貸活動の状況などによっては、貸付けが事業的規模に該当すると認めてもらえることもあります。

事業性が認められる場合の特典

不動産所得が事業として認められた場合には、以下の特典が受けられます。
① 建物取壊、除却損の全額を経費に算入
② 貸倒損失を回収不能の年に経費に算入
③ 青色専従者給与が適用可
④ 複式簿記の記帳で 55 万円控除(電子帳簿保存又は e-Tax により 65 万円控除)

社会通念としての事業規模

貸付けが事業として行われているかについて、国税庁は「社会通念上、事業と称するに至る程度の規模」と定義しており、5 棟 10室基準はその例示として示されていますが、判例では「5棟 10 室基準を満たせば事業として行われているものとするという十分条件を定めたにすぎず、当該基準を満たしていなかったとしても、これをもって直ちに社会通念上事業に当たらないということはできないと解する」と示されています。
事業性は賃貸の営利性、継続性や危険負担、精神的・肉体的労力の程度などで個別に判定されます。賃借人が同族会社で安定した賃貸先のため、リスクはないとして事業性が認められなかった判例もあります。

賃貸人のリスクは必ずしも小さくない

不動産賃貸は、事業所得を生む事業と比べ、精神的・肉体的負担は少なく、賃借人が入居してしまえば、設備の不具合でも起きない限り、手間はかからないといえます。
一方、退去時の原状回復、建替時の立退交渉などは負担を伴い、また最近はリモートワークで間取りが少なく狭い物件は、敬遠されがちとなり、リフォームも必要となります。その他、地震による建物の倒壊リスクや、火事の延焼や類焼リスクなど賃貸する側には相応の負担が生じます。

事業性を認めてもらうためには

5棟 10 室まで至らなくても、賃料収入や不動産所得で相応の規模が確保されているのであれば事業性は一定程度、備えているとも言えます。継続的に賃貸を行い、修繕やクレーム対応などきめ細かな賃貸管理は事業性を高めることにもつながります。事業的規模に該当するか気になる時は、税務署に貸室の数や収入金額、事業状況を説明して確認を受けるのもよいかもしれません。

青色専従者給与の適正額は?

青色専従者給与の適正額は?

青色専従者給与の適正額は?

事業所得、不動産所得等の計算に当たり、必要経費に算入される青色専従者給与の額は、親族以外の第三者に同じ仕事をしてもらう場合に支払ってもよいと考えられる金額を想定して決めると良いかもしれません。

青色専従者給与の経費算入

生計一の配偶者や親族が事業から支払を受ける対価は、原則として必要経費に算入されません。しかし、青色申告を行う個人事業者には適切な帳簿記帳を行う見返りとして、事業に従事する生計一の配偶者や親族に支払う給与を一定の条件のもと、必要経費に算入する特例が認められています。
ただし、生計を一にする配偶者や親族に支払う給与は、家計からの資金流出を実質的に防ぎ、さらに必要経費に算入して税負担を圧縮することが可能となるため、この制度の利用には制限が付されています。

青色専従者給与の認定要件

青色専従者給与として経費に算入できる要件は、以下のものです。
① 事業者と生計を一にする配偶者その他の親族に支払われるものであること(支払を受ける側は、給与所得として課税)。
② 12 月末現在で 15 歳以上であること。
③ その年を通じて6月超(一定の場合は従事可能期間の2分の1超)、その事業に専ら従事すること。
④「青色事業専従者給与に関する届出書」を算入しようとする年の 3 月 15 日までに所轄税務署長に提出すること。
⑤ 労務の対価として相当であると認められる金額であること。

課税上の扱い

課税上は、同じ職場の使用人給与の額や類似業種の専従者給与の額と比較して適正な水準かが問われます。判例には税理士の妻や歯科医の妻(歯科衛生士)に支払われた給与について、同業者の青色専従者給与の平均額と比較し、高額と認められた部分の経費算入を認めなかったものがあります。
アパート経営においても不動産会社と管理契約を締結している場合、オーナーの業務はほとんど発生しないため、配偶者や親族を青色専従者にするときは業務内容から給与設定する慎重さが必要となるでしょう。
なお、事業としては認められない程度の事業規模の場合や、配偶者や親族が他の仕事にも従事して年に6月超、事業に従事できない場合には、青色専従者給与そのものが認められなくなるので注意しましょう。

 

住宅ローン控除 令和 4 年入居でも改正前の条件適用

住宅ローン控除
令和 4 年入居でも改正前の条件適用

住宅ローン控除 令和 4 年入居でも改正前の条件適用

改正された住宅ローン控除

令和 4 年以後の住宅ローン控除は、控除率、控除期間が見直され、さらに環境性能に応じて借入限度額が 4 つに区分されます。

令和 3 年改正の特例延長が生きている

住宅ローン控除は基本的に入居を開始した年分の条件で適用されますが、令和 4 年入居の場合は 2 パターンの取扱いが存在します。
注文住宅の場合は令和 2 年 10 月から令和3年9月末までに請負契約を締結、分譲住宅の場合は令和 2 年 12 月から令和 3 年 11月末までに売買契約を締結したものについては、令和 3 年度税制改正の住宅ローン控除の特例の延長により、令和 4 年度税制改正の前の控除率等での適用となります。

来年の確定申告時にはご注意を

上記の表のように、控除される金額等が異なる令和 4 年開始の住宅ローン控除が存在します。来年の確定申告時には誤りがないように注意したいですね。
なお、すでに令和 3 年以前に入居して、住宅ローン控除の適用を受けている場合については、令和 4 年以降控除率が下がることはありません。

 

NISAの現状とおさらい

NISAの現状とおさらい

NISAの現状とおさらい

NISA は浸透したのか

NISA とは、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となる個人投資家のための税制優遇制度です。3種類あり、金融庁発表の2021年6月末の各制度の利用状況は、
(一般の)NISA:約 1237 万口座
つみたて NISA:約 417 万口座
ジュニア NISA:約 57 万口座
となっています。
まだつみたて NISA がなかった制度開始時の 2014 年 3 月末時点のデータでは、NISA総口座数は 492 万となっているため、7 年間で約 3.5 倍の利用口座増となっています。
「家計の安定的な資産形成の支援」と「成長資金の供給」を目的とした NISA 制度は、徐々に定着してきているようです。

NISA の特徴をおさらい

NISA の特徴は
1.投資で得た利益が非課税になる
2.毎年の購入上限枠がある(一般 120 万円、つみたて 40 万円)
3.非課税期間は一般 5 年間、つみたて 20 年間
というところです。通常株式等の売却益が出た場合、所得税や住民税がかかりますが、NISA で出た利益に関しては非課税となるのでお得です。一方、損が出てしまった場合は、他の口座との損益通算や損失の繰越しができないデメリットも存在します。

非課税期間が終わる際の選択肢

一般の NISA 口座の場合、非課税期間 5 年が終了した場合、以下の選択が可能です。
1.非課税期間終了までに売却
2.翌年の非課税投資枠に移管
3.他の課税される口座に移管
非課税期間終了までに売却すればその利益は非課税です。翌年の投資枠に移管する場合の上限がないため、前述した「購入上限枠」を超えての持ち越しが可能ですが、その年の新規投資枠は 0 円ということになります。他の課税される口座に移管した場合は、その移管時の価格が取得価格となるため、非課税期間に値上がりした価格差はきちんと非課税扱いとなります。
なお、2024 年 1 月から、新 NISA 制度が始まりますが、現状の NISA を行っている方は一部銘柄を除き「翌年の非課税投資枠に移管」が継続して行えます。

確定申告書 第一表の「区分」とは?

確定申告書
第一表の「区分」とは?

確定申告書 第一表の「区分」とは?

ずいぶん増えた「区分」の欄

令和3年分の確定申告書 B の第一表の用紙を見てみると「区分」という欄が目立ちます。令和元年以降用確定申告用紙と比べてみると、左側だけで 10 か所も「区分」が増えています。
この「区分」の欄ですが、その項目の金額がどういう分類のものかを細分化して説明するための欄であり、申告書の金額が添付書類や第三者作成書類等と合っていれば、記載しなくても問題にはなりません。手書きで申告書を作成する方に対してのガイド、もしくは申告書の金額がどのような根拠で計算されたかをチェックするための項目、といった意味合いが強いですね。

事業や不動産の「区分」は青色判定に利用

例えば事業収入・不動産(区分 2)の欄については、
1:電子帳簿保存法で税務署長の承認を受けて、元帳等の電磁的記録等による保存を行っている
2:会計ソフト等を利用して記帳している
3:日々の取引を複式簿記に則って記帳している(1・2 の該当を除く)
4:複式簿記以外の簡易な方法で記帳している(2 の該当を除く)
5:いずれにも該当しない
という区分になっています。この区分を確認することによって、青色申告を行っている場合は特別控除の適用額等が変わってくるのをチェックができる、という具合です。

謎の区分、その正体は?

雑収入の「業務」の区分ですが、国税庁が出している令和 3 年分の確定申告書手引きでは「記入不要です」とだけ記載されています。
この欄はおそらく、令和 2 年度税制改正で出された、令和 4 年分の申告から適用される雑所得の業務の現金主義特例か、1,000万円を超える業務収入がある方の収支内訳書の添付義務、業務収入 300 万円超の方の現預金等取引関係書類の保存義務、あたりに関する項目と思われます。
今後もこのような区分は増えてゆくのでしょうか。

 

 

自己の土地か他人の土地かで違う スキー場のゲレンデ整備費用

自己の土地か他人の土地かで違う
スキー場のゲレンデ整備費用

自己の土地か他人の土地かで違う スキー場のゲレンデ整備費用

北京オリンピック・スキー会場は張家口

北京オリンピック2022のスキー・スノーボード競技は、河北省にある張家口で行われました。高地で傾斜のある場所でのコース作りは大変だったでしょう。現代の冬季オリンピックは種目も増えていますので、尚更です。NHKの報道では、今回のオリンピックでは、コースの約90%は人工雪で作られ、100台以上の機械でスタッフも2交替・24時間態勢で整備したとのことです。

スキー場のゲレンデ整備費用の通達

日本の所得税や法人税では、このような整備費用について、通達があります。
積雪地帯のスキー場でリフト、ロープウェイなどの索道事業を営む事業者は、既存のゲレンデに、次のような支出をした場合には、支出日の必要経費・損金となります。

自己保有土地の整備費用は、構築物

これらの支出以外で、自己所有の土地をスキー場として整備するための土木工事(他人の土地を有料のスキー場として整備する場合を含む)に要する費用は、構築物(競技場用・運動場用のもの・スキー場の土木工事・30 年)の取得価額となります。

他人の土地の整備費用は、繰延資産

国、地方公共団体や民間の開発会社から借りた土地をスキー場として整備する場合もあるでしょう。他人から借りた土地をゲレンデとして整備するために立木の除却、地ならし、沢の埋め立て、芝付け等の工事を行った場合には、繰延資産(12 年)となります。そのスキー場でホテル、売店、レストランの経営者が、費用の一部を負担した場合についても同様です。
借地権として処理する方法も考えられますが、スキー場の場合、建物所有目的以外の土地賃貸借契約となると考えられるため、借地借家法によらず、民法の賃借権となります。実際の契約関係が「借地権がない」という結論であれば、現実的に繰延資産で費用化するというのが通達の趣旨でしょう。

医療費を補填する保険金

医療費を補填する保険金

医療費を補填する保険金

保険金が出た時に陥りやすいミス

所得税の確定申告で多い医療費控除ですが、個人で入っている生命保険から、入院給付金等が出ている場合、医療費控除の計算からその金額を差し引かなければなりません。ただし、差引計算はその補填を受けた治療等のみが対象なので、入院給付金が対象の治療費以上の額になったとしても、他の医療費から差し引く必要はありません。
例えば、
①病気で入院して、30 万円かかった
②生命保険契約により入院給付金として 50万円給付された
③入院とは別に、歯の治療により 20 万円かかった

という方の場合、医療費の計算は(30万円+20万円)-50万円=0円、という計算ではなく、30万円-50万円=0円(マイナスは計算しない)+20万円=かかった医療費は20万円ということになります。
保険制度が充実している昨今、こういった誤りが散見されます。注意しましょう。
また、かかった医療費よりもらった入院給付金等が多い場合ですが、怪我や病気になった時に受け取る入院給付金等については非課税となっていますので、この金額を所得として申告する必要はありません。ただし、被保険者が生前に受けた給付金を残して死亡した場合、残りの額は相続税の課税対象となります。

申告時に未確定の場合は見積額で

12 月に支払った入院費用を補填するための保険金の額が、翌年 3 月の確定申告の際に確定していない場合は「見積額」で申告することになります。また、見積額が後日保険金等の確定額と異なった場合は、医療費控除を訂正して申告する必要があります。

年またぎの保険金の補填は?

確定申告を行う年分とその翌年分に支払った入院費用に対して補填する保険金を、まとめて受け取った場合の医療費控除の計算は、支払った入院費用の額に応じて、各年分に按分する必要があります。
例えば、
①12 月にかかった入院費用は 50 万円
②翌年 1 月にかかった入院費用は 100 万円
③入院給付金等は 2 か月分で 60 万円

という方の場合、12 月分の保険金の補填額の計算は 60 万円×50 万円÷(50 万円+100万円)=20 万円、ということになります。

相続税額の取得費加算の特例

相続税額の取得費加算の特例

相続税額の取得費加算の特例

相続で土地、建物、株式などの財産を取得した後、これらを譲渡した場合、譲渡所得に所得税が課されます。この場合、相続財産の譲渡に係る「取得費加算の特例」を利用することにより譲渡した資産に対応する相続税額を取得費に加算し、譲渡所得を減らすことができます。

相続人の譲渡所得税の負担を軽減する制度

この制度は、相続により財産を取得した者が、納税資金の捻出などのため、相続財産を売却しようとする場合、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインに課税されることから、納税者の所得税負担に配慮した調整措置として設定されています。

適用要件は3つ

この制度を利用する要件は次の3つです。
① 相続または遺贈により財産を取得した者であること。
② その財産を取得した者に相続税が課税されていること。
③ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後、3年を経過する日までに譲渡していること。

上場株式の譲渡で申告不要の選択に注意!

上場株式を譲渡した場合、申告分離課税で申告するか、申告不要とするかを選択することになりますが、先に申告不要を選択したときは、後で「取得費加算の特例」を適用した方が有利であることに気付いたとしても、既に申告不要で確定申告しているので更正の請求は難しくなります。
租税特別措置法には、やむを得ない事情がある場合に「取得費加算の特例」を認める宥恕規定があります。しかし、確定申告で申告不要を選択したことだけでは、その申告が計算の誤りや国税に関する法律の規定に従っていなかったとされず、宥恕規定の適用が認められなかった判例があります。

相続空き家の特例とは重複できない

相続で空き家を取得した後、譲渡した場合、一定の要件を満たせば 3000 万円の特別控除ができる「相続空き家の特例」を適用できますが、適用した家屋と敷地に「取得費加算の特例」は重複適用できません。
なお、相続した土地に居住用家屋と倉庫がある場合、被相続人の居住用家屋とその家屋に対応する敷地の譲渡には「相続空き家の特例」を適用し、「相続空き家の特例」が適用されない倉庫とその倉庫の敷地の譲渡には「取得費加算の特例」を適用する使い分けができます。