玉田篤志

扶養義務者間での贈与非課税

扶養義務者間での贈与非課税

扶養義務者間での贈与非課税

夫婦や親子、兄弟姉妹、孫など扶養義務者間で財産を移転させる場合、一義的には贈与となります。しかし、生活費や教育費、結婚費用などの贈与で通常必要と認められる範囲のものであれば非課税となる取扱いがあるので心配し過ぎることはありません。

民法と相続税法の扶養義務者の違い

民法では、直系血族、兄弟姉妹及び家庭裁判所が認めた場合は3親等内の親族を扶養義務者と定めています。また、夫婦間には扶助義務を定めています。
扶養義務には、生活保持義務と生活扶助義務があり、前者は夫婦間及び親から独立していない子に対し、自己の生活程度と均しく生活を全面的に保持する義務、後者は、それ以外の親族に対し、自己の地位相応な生活を犠牲にすることなく、相手方の生活維持に必要な生活費を給付する義務です。
相続税法では、この民法に規定する扶養義務者に扶助義務を有する配偶者を加えて扶養義務者と定義しています。

贈与非課税の事例

次は扶養義務者間で通常必要と認められる範囲であれば非課税贈与となる事例です。
① 子供の学費、下宿先の賃料、食費を負担
親が経済力のない子供に、必要な生活費や教育費を負担することは、民法に規定する直系血族間の扶養義務の履行と言えます。
② 兄弟姉妹の生活資金を負担
経済力のない兄弟姉妹に、日常生活に必要な資金を負担することは、民法に規定する兄弟姉妹間の扶養義務の履行と言えます。
③ 妻の老人ホーム入居金を負担
夫が経済力のない妻に、介護付老人ホームの入居金を負担するのは民法に規定する夫婦間の扶助義務の履行と言えます。

過度の資産移転には課税される

生活資金や教育資金を贈与する場合でも、通常必要と認められる範囲を超えて贈与してしまい、使い切れずに預貯金となる場合、株式など資産の購入に充てられた場合は、贈与税が課されます。妻の老人ホームの入居金を負担する場合でも、高額で広い居室のときは課税される可能性が高くなります。
このように扶養義務者間の贈与は、相続税法の贈与非課税の規定で対応できますので、必ずしも直系尊属からの教育資金や結婚子育て資金の一括贈与の制度を利用する必要はありません。それでも相続対策に一括贈与の制度を活用する場合は、通常必要な範囲を超えた財産移転に注意しましょう。

 

自己の土地か他人の土地かで違う スキー場のゲレンデ整備費用

自己の土地か他人の土地かで違う
スキー場のゲレンデ整備費用

自己の土地か他人の土地かで違う スキー場のゲレンデ整備費用

北京オリンピック・スキー会場は張家口

北京オリンピック2022のスキー・スノーボード競技は、河北省にある張家口で行われました。高地で傾斜のある場所でのコース作りは大変だったでしょう。現代の冬季オリンピックは種目も増えていますので、尚更です。NHKの報道では、今回のオリンピックでは、コースの約90%は人工雪で作られ、100台以上の機械でスタッフも2交替・24時間態勢で整備したとのことです。

スキー場のゲレンデ整備費用の通達

日本の所得税や法人税では、このような整備費用について、通達があります。
積雪地帯のスキー場でリフト、ロープウェイなどの索道事業を営む事業者は、既存のゲレンデに、次のような支出をした場合には、支出日の必要経費・損金となります。

自己保有土地の整備費用は、構築物

これらの支出以外で、自己所有の土地をスキー場として整備するための土木工事(他人の土地を有料のスキー場として整備する場合を含む)に要する費用は、構築物(競技場用・運動場用のもの・スキー場の土木工事・30 年)の取得価額となります。

他人の土地の整備費用は、繰延資産

国、地方公共団体や民間の開発会社から借りた土地をスキー場として整備する場合もあるでしょう。他人から借りた土地をゲレンデとして整備するために立木の除却、地ならし、沢の埋め立て、芝付け等の工事を行った場合には、繰延資産(12 年)となります。そのスキー場でホテル、売店、レストランの経営者が、費用の一部を負担した場合についても同様です。
借地権として処理する方法も考えられますが、スキー場の場合、建物所有目的以外の土地賃貸借契約となると考えられるため、借地借家法によらず、民法の賃借権となります。実際の契約関係が「借地権がない」という結論であれば、現実的に繰延資産で費用化するというのが通達の趣旨でしょう。

医療費を補填する保険金

医療費を補填する保険金

医療費を補填する保険金

保険金が出た時に陥りやすいミス

所得税の確定申告で多い医療費控除ですが、個人で入っている生命保険から、入院給付金等が出ている場合、医療費控除の計算からその金額を差し引かなければなりません。ただし、差引計算はその補填を受けた治療等のみが対象なので、入院給付金が対象の治療費以上の額になったとしても、他の医療費から差し引く必要はありません。
例えば、
①病気で入院して、30 万円かかった
②生命保険契約により入院給付金として 50万円給付された
③入院とは別に、歯の治療により 20 万円かかった

という方の場合、医療費の計算は(30万円+20万円)-50万円=0円、という計算ではなく、30万円-50万円=0円(マイナスは計算しない)+20万円=かかった医療費は20万円ということになります。
保険制度が充実している昨今、こういった誤りが散見されます。注意しましょう。
また、かかった医療費よりもらった入院給付金等が多い場合ですが、怪我や病気になった時に受け取る入院給付金等については非課税となっていますので、この金額を所得として申告する必要はありません。ただし、被保険者が生前に受けた給付金を残して死亡した場合、残りの額は相続税の課税対象となります。

申告時に未確定の場合は見積額で

12 月に支払った入院費用を補填するための保険金の額が、翌年 3 月の確定申告の際に確定していない場合は「見積額」で申告することになります。また、見積額が後日保険金等の確定額と異なった場合は、医療費控除を訂正して申告する必要があります。

年またぎの保険金の補填は?

確定申告を行う年分とその翌年分に支払った入院費用に対して補填する保険金を、まとめて受け取った場合の医療費控除の計算は、支払った入院費用の額に応じて、各年分に按分する必要があります。
例えば、
①12 月にかかった入院費用は 50 万円
②翌年 1 月にかかった入院費用は 100 万円
③入院給付金等は 2 か月分で 60 万円

という方の場合、12 月分の保険金の補填額の計算は 60 万円×50 万円÷(50 万円+100万円)=20 万円、ということになります。

提出しないことの多い届出書

提出しないことの多い届出書

提出しないことの多い届出書

相互に確認し合うための届出書

消費税の届出書の中には、課税関係に影響のない、納税者と税務署とが相互に確認し合うためだけに提出が要求されているものがあります。
消費税課税事業者届出書(基準期間用)、消費税課税事業者届出書(特定期間用)、消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書、消費税の新設法人に該当する旨の届出書、高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書、などがそれです。

分かりきったものの提出を求める形式論か

これらの届出書による税務署との相互確認の内容は、消費税の申告書の提出義務者に該当することになった、あるいは、消費税の申告書の提出義務者に該当しないことになった、という事実についてです。
消費税申告書記載の課税売上高が 1000万円以下だったら、課税事業者選択でもない限り、翌々年は免税事業者になり、納税義務者でなくなるはずだ、そんな分かりきった届出など必要ないではないか、との意見も出そうです。

税務署には情報がないため

消費税の新設法人に該当する旨の届出書については、通達で、法人設立届で所要の事項の記載があれば、それだけでよし、としています。したがって、形式論で要求しているのではなく、事実の正確な把握には、税務署の持つ情報だけでは、必ずしも確定的な結論が得られるとは限らないので、情報を有している納税者に判断を求めている、ということ、と考えられます。
基準期間課税売上高が 1000 万円以下でも、高額特定資産の取得をしたとか、前期間の前半で 1000 万円超の課税売上があったとかで、免税事業者非該当となることもあり、これらは税務署にない情報です。

免税事業者が還付申告

消費税還付申告をした後、還付保留状態で税務調査があり、当該課税期間は課税事業者に該当しないので還付申告ができない旨の指摘を受けたものの、還付申告は受理されたまま修正申告書の提出を慫慂され、過少申告加算税が賦課された、という事例があります。
税務署サイドも、納税義務があるかの如く、消費税の納税申告書を送って来ていた、のかもしれません。当局の対応の是非はともかく、形式的な手続きながら、疎かにしていると火傷する、という事例です。

改正育児休業法のポイント 育休の個別周知・産後パパ育休

改正育児休業法のポイント
育休の個別周知・産後パパ育休

改正育児休業法のポイント 育休の個別周知・産後パパ育休

男女ともに仕事と育児の両立の趣旨

令和 4 年 4 月から改正育児・介護休業法が段階的に施行されます。少子高齢化が急速に進行する中、出産・育児等による離職を防ぎ希望に応じ男女共に仕事と育児等を両立できる社会の実現を目指しています。
① 2022 年 4 月 1 日施行の改定内容育児休業に間する研修の実施、相談窓口の設置等の雇用環境の整備や、妊娠・出産(本人又は配偶者)の休業の申し出をした労働者に個別周知・意向確認が義務付けられる等、事業主が労働者の育児休業取得に関して積極的に協力していくことが求められるようになります。具体的に見ると、

2022 年 4 月から施行

〇育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業と産後パパ育休(後述)が円滑に行われるように、事業主は以下のいずれかの措置を行う必要があります。
ア、研修の実施  、イ、相談体制の整備(相談窓口)、 ウ、自社の労働者の取得事例の収集・提供 エ、自社の労働者へ方針の周知

○妊娠・出産(本人及び配偶者)の申し出をした労働者に制度の周知と取得意向の確認

労働者への周知内容は以下の通りです。
ア、制度の内容、    イ、申し出先、 ウ、育児休業給付金、 エ、労働者の負担する休業中の社会保険料

個別周知・意向確認方法
ア、面談 イ、書面交付 ウ、FAX 又は電子
メール等のいずれかで行う

2022 年 10 月から施行

〇育児休業分割取得、産後パパ育休(出生時育児休業)制度創設
大きな改正としては、子の出生後 8 週間以内に 4 週間までの産後パパ育休が創設されます。男性の育児休業取得の促進を図るため、出生直後の大変な時期に休業することはその後の子育てに大きな意義があるとしています。申し出をして、育児休業とは別に取得することができます。また、分割不可であった育休を 2 回に分割もできます。
さらに、労使協定をすれば育児休業中にスポットで就業することも可能になります。
男性の育児休業取得促進、仕事と家庭の両立支援に取り組むことは企業のイメージアップ、社員の意識向上、生産性向上、優秀な人材確保、人材定着にもつながります。

令和 4 年度の雇用保険料率 2 段階引き上げ

令和 4 年度の雇用保険料率
2 段階引き上げ

令和 4 年度の雇用保険料率 2 段階引き上げ

2 段階で引き上げ改定される雇用保険料

新型コロナの影響が続く中、おととしの2 月からこれまでの雇用調整助成金等の支給額は 5 兆円を超えていて雇用保険の財源不足が課題となっています。厚労省の審議会で議論されてきましたが、雇用保険料改定が決まりました。それによると労使折半で賃金の 0.2%を負担している失業給付などを支払う事業の保険料率は 4 月から半年据え置き、10 月から 3 月まで 0.6%上げるとしています。一般の事業では労使で 4 月~9 月 1000 分の 9.5、10 月~3 月は 1000 分の 13.5 となります。4 月の時点では労働者の給与から控除される保険料は変更ありません。

改定の内訳と流れ

雇用保険料は労使が負担する雇用保険料や国庫負担などで賄われています。雇用保険料の中身は失業給付(労使折半)、育児休業給付(労使折半)、雇用二事業(事業主負担、助成金や教育訓練に充てる)で構成されています。 今までは積立金が一定水準を超えていたことで労働者 0.3%、事業主 0.6%と原則より低い負担で抑えられてきましたがコロナ禍で積立金が枯渇してきています。
令和 4 年度の失業負担分は 4 月には据え置かれますが 10 月には 0.6 になります。また、育児休業給付に係る保険料率は年間通し 0.4%のまま据え置かれます。
一方、事業主のみが負担する「雇用保険二事業」の料率は 4 月から 0.3%から 0.35%に上がります。その結果事業主負担は全体で 0.65%になります。

料率改定事務 変更分はいつから

今のところの予想ですが、令和 4 年度の労働保険概算確定申告時に令和 4 年度の概算額として事業主負担の二事業の引き上げ分を乗せます。また、10 月からの料率改定の分は 10 月以降の概算賃金額に引き上げられる新料率をかけて保険料の概算額を出し、前半分と後半分を足して 1 年間の概算額とします。詳しくは令和 4 年度の労働保険料の計算方法が発表されてから確認することとなります。
各労働者の給与からの雇用保険料率の徴収額が上がるのは令和 4 年 10 月分給与からです。

ライフスタイルと年金

ライフスタイルと年金

ライフスタイルと年金

人生の様々な出来事と年金の関わり

就職、結婚、定年……人生にはいろいろな出来事がありますが、良いことばかりでなく思わぬアクシデントに遭遇することもあります。年金は人生の転機と大きく関わっています。山あり谷ありの人生のモデルケースのライフステージを見てみましょう。

スタートは 20 歳国民年金の加入から

1.  20 歳になると国民年金加入のお知らせが届きます。日本に住む 20 歳以上 60 歳未満の方は全員加入が原則とされています。第 1 号被保険者となります。


2.  就職して厚生年金保険に入る。高卒18歳で厚生年金保険適用事業所に就職すれば、加入します。大卒 22 歳以上で就職したときも同様です。第 2 号被保険者となります。


3.  海外留学や海外派遣
国民年金の加入者が海外留学中は任意加入となり、加入すれば保険料の納入が必要となります。企業から海外派遣などで勤務する場合は一時派遣であれば日本の年金制度のみ加入、長期は社会保障協定で決められている基準に従い相手国の年金に加入します。

結婚し妊娠、出産、育児休業、退職したとき

妊娠・出産・育児休業期間は保険料免除制度があります。妻が退職し専業主婦となった場合は第 3 号被保険者となり夫の勤務する会社を通して手続きします。再就職しても年収 130 万円未満であれば保険料はかかりません。

夫が退職、自営業となる

夫婦とも第 1 号被保険者(60 歳未満)。市区町村役場で手続きをする。

夫が不慮の事故で急逝、子が交通事故

母子に遺族厚生年金、遺族基礎年金が受給できます(遺族基礎年金は子は 18 歳の年度末まで)。
子は 20 歳で国民年金に加入。万が一の交通事故などで後遺症が残ったときは障害基礎年金が受けられます。

妻再就職で厚生年金再加入

老齢年金を受給できる年齢になったら年金の請求手続きをします。働いているうちは給与に応じて年金額が減額されます。老齢年金と遺族年金の選択も必要です。65 歳にはもう一度、老齢年金の請求書が来るので提出します。

加工賃を対価とする役務の提供? クリーニング店の簡易課税

加工賃を対価とする役務の提供?
クリーニング店の簡易課税

加工賃を対価とする役務の提供? クリーニング店の簡易課税

濱田マリさんのご実家はクリーニング店

3人のヒロイン(上白石萌音さん・深津絵里さん・川栄李奈さん)が親・子・孫の三世代を演じることで話題となっているNHKの朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。ドラマでは、「るい」(演:深津さん)が住み込みで働く「竹村クリーニング店」の奥様を濱田マリさんが演じています。
実は、濱田さんのご実家もクリーニング店。ご本人は「役作りがいらなかった」とインビューに答えられています。お店を手伝いながら、いろいろなお客様を観察されていたようで、神戸のお嬢様学校に通う娘さんの制服を持ってくるお父さんを見て、「幸せな家庭やなぁ」と思ったそうです。

クリーニング店の簡易課税は第何種?

ところで、国税庁HPの質疑応答事例を見ると、クリーニング店の消費税・簡易課税の事業区分が取り上げられています。

クリーニング店は、顧客の洋服などに加工等(洗濯・アイロン)を施して、料金をもらっているのだから、消費税で言うところの「加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供」を行う事業として第四種事業(その他の事業。みなし仕入率 60%)と考えてもよいかというものです。

加工賃を対価とする役務の提供とは?

この第四種事業とされる加工賃を対価とする役務の提供とは、「他の者の原料若しくは材料又は製品等に加工を施して、その対価を受領する役務の提供」をいいます。
これは、日本産業分類の大分類が「製造業等」とされる事業者が下請けで原材料の支給を受けて加工のみをする場合に、第三種事業(みなし仕入率 70%)としてしまうと控除率が高すぎるということから、第四種事業として取扱うというものです。
しかし、クリーニング店や自動車修理店のような業種は、加工賃をもらうとしても、日本標準産業分類上、「サービス業」となっていますので、これに当たらず、第五種事業(みなし仕入率 50%)となります。

相続税額の取得費加算の特例

相続税額の取得費加算の特例

相続税額の取得費加算の特例

相続で土地、建物、株式などの財産を取得した後、これらを譲渡した場合、譲渡所得に所得税が課されます。この場合、相続財産の譲渡に係る「取得費加算の特例」を利用することにより譲渡した資産に対応する相続税額を取得費に加算し、譲渡所得を減らすことができます。

相続人の譲渡所得税の負担を軽減する制度

この制度は、相続により財産を取得した者が、納税資金の捻出などのため、相続財産を売却しようとする場合、被相続人の取得時から蓄積されたキャピタルゲインに課税されることから、納税者の所得税負担に配慮した調整措置として設定されています。

適用要件は3つ

この制度を利用する要件は次の3つです。
① 相続または遺贈により財産を取得した者であること。
② その財産を取得した者に相続税が課税されていること。
③ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後、3年を経過する日までに譲渡していること。

上場株式の譲渡で申告不要の選択に注意!

上場株式を譲渡した場合、申告分離課税で申告するか、申告不要とするかを選択することになりますが、先に申告不要を選択したときは、後で「取得費加算の特例」を適用した方が有利であることに気付いたとしても、既に申告不要で確定申告しているので更正の請求は難しくなります。
租税特別措置法には、やむを得ない事情がある場合に「取得費加算の特例」を認める宥恕規定があります。しかし、確定申告で申告不要を選択したことだけでは、その申告が計算の誤りや国税に関する法律の規定に従っていなかったとされず、宥恕規定の適用が認められなかった判例があります。

相続空き家の特例とは重複できない

相続で空き家を取得した後、譲渡した場合、一定の要件を満たせば 3000 万円の特別控除ができる「相続空き家の特例」を適用できますが、適用した家屋と敷地に「取得費加算の特例」は重複適用できません。
なお、相続した土地に居住用家屋と倉庫がある場合、被相続人の居住用家屋とその家屋に対応する敷地の譲渡には「相続空き家の特例」を適用し、「相続空き家の特例」が適用されない倉庫とその倉庫の敷地の譲渡には「取得費加算の特例」を適用する使い分けができます。

その外国会社への請求書、消費税 が請求漏れとなっていませんか?

その外国会社への請求書、消費税
が請求漏れとなっていませんか?

その外国会社への請求書、消費税 が請求漏れとなっていませんか?

輸出品だから全部免税というわけではない

事業主が国内で商品の販売をしたり役務の提供をしたりすると、原則として消費税がかかります。しかし、これらが輸出取引に当たる場合には消費税が免除されます。
消費税などの間接税は、消費される国で課税されるよう国境税調整により税を課さないことが国際慣行となっているためです。
輸出免税は事業者にもよく知られていて、輸出=消費税なしとの認識が多いと思われます。しかしながら、輸出免税を受けるためには、資産の譲渡等が輸出取引となることについて、その輸出取引等の区分に応じて一定の証明が必要です。
なお、最終的に輸出されるものであっても、①輸出する物品の製造のための下請加工や②輸出取引を行う事業者に対して行う国内での資産の譲渡等は輸出取引ではないので、輸出免税とはなりません。
また、輸出の取引条件によっては、買主が外国企業であっても国内譲渡とされ、輸出免税とならない場合(Ex-Works:EXW=工場渡しの場合)もあります。要注意です。

外国と直接取引だから全部免税でもない

非居住者に対して行われる役務の提供は、①国内資産の運送保管、②国内での宿泊や飲食、③その他国内において直接便益を享受するものを除き、輸出免税の対象になります。
役務提供などの場合には、その契約書などで一定の事項が記載されたものが、輸出取引等の証明として必要です。
役務提供を受ける者が日本国内に支店又は出張所等を有していれば、そこと取引があったものとして輸出免税から外れます。
しかしながら、外国の本店等とのみの直接取引であれば免税となりますが、国内支店又は出張所等の業務と関連するものでないことが条件とされます。条件確認が複雑です。

消費税請求漏れを追加請求で回復できない

相手が外国の会社(=非居住者)だから消費税の課税はないと思い込んで消費税を付加しない取引を行い、後日税務調査などで消費税の課税漏れを指摘されたような場合には、その課税漏れ分は自社の負担となってしまいます。よっぽど販売側の力関係が強い場合でない限り、税金を追加でもらうことはできません。取引時に慎重に課税の有無の検討が必要です。注意しましょう。