月: 2026年1月

-令和8年度税制改正- ⑤ 消費課税編

-令和8年度税制改正-⑤ 消費課税編

-令和8年度税制改正- ⑤ 消費課税編

小規模個人事業者に3割特例を新設

 適格請求書を発行する小規模事業者の納税額を売上税額の2割とする経過措置(2割特例)は令和8年9月30日で終了します。

令和8年度改正では、個人事業者の事務負担に配慮して納税額を売上税額の3割とすることができる経過措置(3割特例)を新たに設けます。令和9年、令和10年に含まれる各課税期間(免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限る)に適用します。

免税事業者等からの仕入控除は2年延長

 適格請求書発行事業者以外の者(免税事業者等)からの仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置(現行は令和8年9月30日まで80%、令和11年9月30日まで50%)は、控除額を段階的に縮減したうえで適用期間を延長します。

また、経過措置を利用した租税回避を防止するため、一の免税事業者等からの課税仕入の額の合計額の上限は、その年又は、その事業年度で税込1億円(現行10億円)に引き下げます。

経過措置の適用期間と控除割合

適用期間    仕入税額相当額の控除割合
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで : 70%
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで : 50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで : 30%

少額輸入貨物も課税対象に

 課税価格の合計額1万円以下の少額輸入貨物は、納税事務の負担軽減等のため、消費税および関税は、これまで免税とされています。しかし、近年はECサイトを利用した輸入取引が増え、国内外の事業者間で競争条件の不均衡や国外事業者の無申告等が課題となっていました。

令和8年度改正では、一の資産の対価の額が1万円(税抜)以下の少額輸入貨物についても消費税の課税対象となり、販売事業者に納税義務を課します。また、一定のプラットフォーム事業者を介するものは、そのプラットフォーム事業者が資産の譲渡等を行ったものとみなして納税義務を課します。令和10年4月1日から適用します。

-令和8年度税制改正- ④ 法人課税編

-令和8年度税制改正-④ 法人課税編

-令和8年度税制改正- ④ 法人課税編

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

 危機管理投資・成長投資による「強い経済」実現のため、国内で高付加価値化型の設備(特定生産性向上設備等)に大胆な投資を促す税制が創設されます。

国の確認を受けた日から5年経過日までに取得価額の合計額35億円以上(中小企業者等は5億円以上)およびROI(投資利益率) 15%以上の設備投資を行う法人は、投資額100%の即時償却または取得価額の7%(建物、附属設備、構築物は4%)の税額控除(法人税額の20%を上限)を選択できます。一定の要件を満たす場合には、控除限度超過額は3年間の繰越しができます。

試験研究に係る税額控除制度の創設

 研究開発税制に新たな制度が設けられます。産業技術力強化法の重点研究開発計画の認定を受けた法人が5年以内に重点産業技術(AI・先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケア、フュージョンエネルギー、宇宙)に係る試験研究を行った場合には、試験研究費の額の40%(特別重点産業技術試験研究費については50%)の税額控除(法人税額の10%を上限)を受けます。試験研究費の額が前期を上回る場合は、控除限度超過額は3年間、繰越しできます。

オープンイノベーション促進税制は拡充

 オープンイノベーション税制は、M&A型の拡充等を行ったうえで2年延長します。M&A型はスタートアップの発行済株式の50%超(上限200億円)を取得した法人が株式取得価額の25%以下の金額を所得控除できる制度です。令和8年度改正では、3年以内に出資割合50%超となる見込みの場合においても、株式取得価額の20%以下の金額を所得控除できるようになります。

賃上げ促進税制は大企業向けを廃止

 賃上げ促進税制は、賃上げが順調に進む大企業向けを適用期限を待たずに令和8年3月31日をもって廃止。中堅企業向けは、より高い賃上げを促す下記の要件を強化したうえで令和9年3月31日をもって廃止します。

① 税額控除率10%の適用要件:給与支給額の増加率4%以上(現行3%以上)

② 継続雇用者の税額控除率の加算措置:給与支給額の増加率5%以上で5%加算、増加率6%以上の場合は15%加算

中小企業向けは、防衛的賃上げに取り組む企業に配慮し、現行制度を維持します。

なお、教育訓練費を増加させた場合の上乗せ措置は廃止されます

-令和8年度税制改正- ③ 資産課税編

-令和8年度税制改正-③ 資産課税編

-令和8年度税制改正- ③ 資産課税編

教育資金一括贈与の非課税制度は廃止

 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は、令和8年3月31日をもって廃止されます。

この制度は、利用件数が減少していること、高額所得者に利用が集中して経済格差の固定化につながることが問題視されていました。令和8年度改正では、ガソリン税の旧暫定税率廃止や教育無償化の財源確保の手段として廃止されることとなりました。なお、同日までに拠出された金銭は、引き続き、この制度を利用できます。

事業承継税制は計画の提出期限を延長

 1.個人事業承継計画

 個人の事業用資産にかかる相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)では、「個人事業承継計画」の提出期限が、令和10年9月30日まで延長されます。

2.特例承継計画

非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度(法人版事業承継税制)のうち特例措置は、平成30年1月1日から10年間限定で全株式に100%納税猶予を認めるものです。この措置の適用に義務付けられる「特例承継計画」の提出期限が、令和9年9月30日まで延長されます。

貸付用不動産の財産評価の適正化

 貸付用不動産の市場価格と財産評価基本通達による評価額との乖離を利用した節税策は、総則6項により時価評価を求める国税庁と通達評価額による評価を求める納税者との間で訴訟を多数引き起こし、課税上の扱いを予測困難にしていました。

令和8年度改正では、貸付用不動産に対する財産評価の取扱いが整備されます。

1.課税時期前5年内取得等の貸付用不動産

課税時期前5年以内に対価を伴う取引で取得・新築した貸付用不動産の財産評価は、課税時期の通常の取引価額に相当する金額により評価すること、課税上の弊害がない限り、貸付用不動産の取得価額をもとに時価の変動等を考慮して計算した価額の80%相当額で評価できるとされます。

2.不動産小口化商品

 相続等で取得する不動産小口化商品の財産評価は取得時期にかかわらず課税時期の通常の取引価額に相当する金額とされます

1・2いずれも令和9年1月1日以後に相続等で取得する財産の評価に適用されます。

なお、この改正は、通達に定める日の5年前から被相続人が所有する土地に新築した家屋には適用されません。

-令和8年度税制改正- ②個人所得課税編(後編)

-令和8年度税制改正-②個人所得課税編(後編)

-令和8年度税制改正- ②個人所得課税編(後編)

住宅ローン控除は5年延長

 住宅ローン減税は、令和12年12月31日まで5年延長されます。

新築等の場合、省エネ性能の高い認定住宅の借入限度額は4,500万円、ZEH水準省エネ住宅は3,500万円、控除率0.7%、控除期間13年です。既存住宅は、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅の借入限度額を3,500万円に引き上げ、控除期間を13年に拡充します。令和12年以降、新築が認められなくなる予定の省エネ基準適合住宅は借入限度額を2,000万円に縮減します。

子育て世帯・若者夫婦世帯には借入限度額の上乗せ措置があります。新築等では、認定住宅の借入限度額を5,000万円、既存住宅では、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅の借入限度額を4,500万円に引き上げます。

床面積要件は、40㎡の緩和措置(合計所得金額1,000万円超の年を除く)を既存住宅にも拡充します。

ZEH水準を満たさない省エネ基準適合住宅の新築等で令和10年1月1日以後居住のものは住宅ローン控除は適用できません。

また、災害危険区域等における新築等の住宅で令和10年1月1日以後居住のものは住宅ローン控除が利用できなくなります

NISAは18歳未満に拡充

 NISAは、つみたて投資枠の対象年齢が18歳未満、年間投資枠60万円(非課税保有限度額600万円)まで拡充されます。

非課税口座に新たに未成年者特定累積投資勘定を設定し、公募等株式投資信託の受益権に投資します。

12歳以降は、子の同意を得た場合のみ親権者等による払出しが認められ、子の教育資金等に充てることができます。18歳に達すると18歳以上のNISA口座に移行します。令和9年以後、開設するものから適用です。

暗号資産は分離課税に

 暗号資産の譲渡所得等に対する課税は、株式など有価証券取引と同じ分離課税(所得税15%、住民税5%)となります。あわせて、3年間の繰越控除制度も創設されます。金融商品取引法の改正法施行日の翌年から適用されます。

極めて高い水準の所得に対する負担適正化

 高額所得者に対する税の負担適正化のための措置が見直されます。基準所得金額から控除される特別控除額を1.65億円(現行3.3億円)に引き下げ、税率を30%(現行22.5%)に引き上げます。令和9年以後の所得税から適用されます。

 
 

-令和8年度税制改正- ①個人所得課税編(前編)

-令和8年度税制改正-①個人所得課税編(前編)

-令和8年度税制改正- ①個人所得課税編(前編)

基礎控除等を物価高に応じて引上げ

 基礎控除等を物価高に応じて引上げ

基礎控除などの所得控除には、物価上昇に応じた見直しが行われます。

基礎控除は、本則部分を62 万円、令和7年度改正で新たに設けた特例部分は合計所得金額489万円以下で42万円に引き上げ、本則部分とあわせて104万円とします。

給与所得控除は、最低保障額を74万円、基礎控除とあわせた課税最低限を178万円に引き上げます。


同一生計配偶者、扶養控除等も要件引上げ

 同一生計配偶者、扶養親族の合計所得金額要件は62万円以下(現行58万円以下)、ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の要件は62万円以下(現行58万円以下)、勤労学生の合計所得金額要件は89万円以下(現行85万円以下)に引き上げます。
 
 

通勤手当、食事補助の非課税枠は拡充

 自動車で片道65km以上の通勤手当の非課税限度額が増額されるほか、食事支給で非課税となる使用者負担額の上限を月額7,500円(現行3,500円)に引き上げます

ふるさと納税の特例控除額に上限を設定

 ふるさと納税の特例控除額は、個人住民税所得割額の20%に設定されていますが、所得に応じ際限なく増えることに歯止めをかけるため、新たに193万円の上限(給与収入1億円相当)を設定します。令和10年分以後の個人住民税に適用されます。

住民税利子割に清算制度を導入

 住民税利子割はインターネット銀行の取引拡大により、税収が納税者の住所地のある道府県に帰属しないことが問題となっていました。令和8年度以降は、個人に係る所得金額を基準に税収帰属を都道府県間で調整する清算制度を新たに導入します

「条件」がありますが可能です 遺言書の内容と異なる遺産分割

「条件」がありますが可能です 遺言書の内容と異なる遺産分割

「条件」がありますが可能です
遺言書の内容と異なる遺産分割

「相続させる」と「遺贈する」の違い  

遺言は、自分の財産を誰にどのように残したいか確実に伝えるための手段です。 
遺言書のひな型を見ると、次のような表現があります。

 ・「(人名)に(財産)を相続させる」

 ・「(人名)に(財産)を遺贈する」 

「相続させる」は、法定相続人に対してのみ用いられ、「遺贈する」は、それ以外の者に用いられる言い回しです。前者の「相続させる」旨の遺言は、「特定財産承継遺言」といい、「遺産分割方法の指定」に当たります。この遺言は、遺言書を作成した方が亡くなった時点で効力を持ち、財産は遺言どおりに承継すると最高裁で判示されています(分割協議の必要はありません)。 

遺言書の内容と異なる分割はできるのか? 

ただ、遺言書を作成した方(例えば親)が亡くなった後に子が遺言書を確認してみると、親が遺言書を作成した時と事情が変わっていたり、親の意向とは異なる分け方をした方が子らにとって合理的という場合があります。「特定財産承継遺言」の場合、効力が即時に発生してしまいますが、遺言書と異なる内容により、相続人間で遺産を分けることはできるのでしょうか。

相続人全員の合意等があればOK  

実務(判例等)においては、「特定財産承継遺言」でも、次の要件を満たす場合には、遺言の内容と異なる遺産分割ができます。

①被相続人が、遺言で遺産分割協議を禁止していないこと

②相続人全員が遺言の存在と内容を知った上で、遺言と異なる遺産分割協議をしていること 

また、相続人以外の受遺者がいる場合又は遺言執行者が指定されている場合には、受遺者や遺言執行者の同意が必要です。 

なお、国税庁のタックスアンサーでも、①相続税は、遺言の内容でなく、遺産分割協議の内容で計算し、②遺言書の内容で財産を取得した後に、相続人間で交換や贈与があったとはみなされない(贈与税等は課されない)と記されています。

遺言を承認した行為をした後ではNG  

ただし、その遺言に基づいて不動産登記を行った後に、遺言と異なる遺産分割を行う場合には、外見的には遺言を承認する形となるため、相続人間で交換・贈与が行われたとみなされます。所得税・贈与税の課税リスクが生じますので、注意が必要です。