02-所得税

ローンを組めない芸能人の 個人事務所が保有する社宅課税

ローンを組めない芸能人の
個人事務所が保有する社宅課税

ローンを組めない芸能人の 個人事務所が保有する社宅課税

芸能人は住宅ローン審査で大苦戦

華やかで売れっ子に見えていても、現実には“ローンを組めない”など、意外に厳しい境遇にあるのが芸能人やスポーツ選手です。安定した収入があるサラリーマンとは違い、水物の人気商売の芸能人や稼動期間が短いスポーツ選手に対しては、長期の保証の担保が取れないため、金融機関側も、ローン審査では評価せず、必然的に対応が厳しくなるようです。
売れっ子で現在の年収が億超えであっても、ローンが組めないため自宅を購入できず、“そんな家賃を毎月支払うなら買った方が得”というような高級賃貸住宅に住んでいるのが多いというのはこうした背景事情が影響しているようです。

個人事務所で購入した住宅に住む際の課税

節税のため、個人事務所を作っている芸能人は少なくありません。個人事務所で、蓄積した儲けを使い、事務所名義で取得した住宅に住んだ場合はどのような課税が発生するのでしょうか。節税のための事務所なので、会社形態であり、会社の実質所有者(=役員)がそこに住む芸能人であることを前提とします。
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から 1 か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、給与として課税されません。
芸能人の豪邸の場合、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅でしょうから、計算される賃貸料相当額は、次のイとロの合計額の 12 分の1 が月額賃料として計算されます。

イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%(法定耐用年数が 30 年を超える建物の場合には 10%)。

ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

結局、一括購入しても、月々の家賃を支払わないと余計な税金が発生することになるので、賃貸住宅に住む形態となります。

大手事務所の寮や社宅の課税は?

一方、大手事務所が所属する若いタレントを自社が保有する住宅や他社から賃貸した住宅に住まわせているケースでは、賃貸料相当額の計算が変わってきます。
この場合は、使用人として所定の賃貸料相当額を受け取っていれば、給与として課税されません。また。食事の提供等がある場合には、それなりの費用の徴収をしなければ給与課税の問題となります。

税金よもやま話 埋蔵金を見つけたら?

税金よもやま話
埋蔵金を見つけたら?

税金よもやま話 埋蔵金を見つけたら?

夢とロマンに溢れた埋蔵金にもかかる税

以前はよくテレビでやっていた埋蔵金発掘番組ですが、最近は見かけませんね。はやりが終わってしまったのでしょうか。
「埋蔵金なんてないよ」と思われている方も多いかもしれませんが、昭和、平成と実際に小判がざくざくと出てきた例もあります。ちなみに埋蔵金を見つけた場合、残念ながら税金がかかります。

埋蔵金獲得まで 6 か月待ちます

まず埋蔵金、もしくは埋蔵物を見つけた、あるいは掘り当てた場合、警察に届けます。
これを怠ると「遺失物等横領」になってしまいます。ちなみに、自分の土地を掘ったりした場合でも「知らないものがでてきた」という場合は遺失物になりますから注意しましょう。
警察は遺失者、つまり「落とした人」を調べるのですが、6 か月間公告して、遺失者が見つからなかった場合は発見した人が埋蔵金や埋蔵物の所有権を取得することになります。土地の所有者と発見者が異なる場合は、2人で等しい割合で所有権を折半することになります。
もし落とし主が現れた場合は、報奨金として物件の価格の 5~20%を「お礼」として貰えます。

「文化財」の場合、モノは貰えない

掘り当てたものが文化財保護法を適用する「文化財」の場合は、所有権を取得することはできませんが、そのものの価値に相当する報奨金を貰うことができます。また、発見者と土地の所有者が異なる場合は、遺失物同様、報奨金は折半されます。
過去にテレビが追い求めていた「徳川埋蔵金」がもし見つかったら、おそらく歴史的価値があるため、文化財になるのではないでしょうか。

取得や報奨金受け取り後に税金の出番

遺失物や埋蔵物の発見により、新たに所有権を取得する資産や、発見者等が受ける報奨金については、一時所得として課税されます。一時所得の計算は(収入-必要経費-特別控除最高 50 万円)×1/2=所得金額です。

上場株式の譲渡所得課税

上場株式の譲渡所得課税

上場株式の譲渡所得課税

令和3年も終盤となりました。上場株式を売却した人の確定申告や損益通算について押さえておきましょう。

まずは源泉徴収済みかを確認!

株式で売却益のある人には、原則として確定申告が必要になりますが、証券会社に源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)を開設している人は、既に譲渡所得に課税済みとなっていますので、申告の必要はありません。一方、源泉徴収なしの特定口座(簡易口座)や一般口座の人には源泉徴収されていませんので確定申告が必要になります。証券会社から送付される特定口座年間取引報告書等で源泉徴収の有無を確認し、申告漏れとならないように注意しましょう。

税率は 20.315%

上場株式の譲渡所得に対する税率は、20.315%(所得税 15.315%、住民税 5%)です。譲渡所得は、株式の売却金額から取得費と証券会社の委託手数料を控除した残額です。これに上記の税率を乗じて所得税額と住民税額(株式等譲渡所得割額)を計算します。取得費は株式の購入価額ですが、同じ銘柄を複数回にわたり購入した場合は、総平均法に準ずる方法(移動平均法)により取得費を計算します。

申告分離課税で損益通算

上場株式の譲渡損失は源泉徴収のあるなしにかかわらず、申告分離課税による確定申告をすれば他の上場株式の譲渡所得および配当所得等と損益通算して、税額の還付を受けることができます。同じ源泉徴収口座内である場合は、証券会社が損益通算するので申告手続きは不要です。また、配当所得等を源泉徴収口座に取り込み、譲渡損失との損益通算もできます。

控除しきれない金額は繰越控除

その年分で損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失は、翌年以後3年間にわたり繰り越して各年分の譲渡所得や配当所得等の金額から控除できます。この取扱いを受けるには、毎年連続して申告分離課税による確定申告が必要です。過去3年以内に譲渡損失の繰越控除の適用を受けた人は、その年に株式売却がなくても確定申告が必要となるので注意しましょう。
また、所得税を申告分離課税とし、住民税は申告不要とする選択もできます。令和3年分の確定申告からは、配当所得等、譲渡所得の全部を条件に確定申告書に記載するだけで住民税を申告不要にできます。

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

バフェット・ルール

新聞にかつて、アメリカの投資家バフェット氏が、彼自身の連邦所得税は 693 万8744 ドルで税率 17.4%、「私のオフィスに勤める 20 人の社員の平均(36%)よりも低い」、こんな富裕層優遇税制は是正されるべきと述べたとの記事がありました。
これを承けた、年収 100 万ドル超の富裕層に増税する、バフェット・ルール課税案が米議会に提出されましたが、未だに日の目を見ていません。

バフェット氏の所得の内訳

アメリカの投資所得分離課税率 15%、総合課税最高税率 37%とすると、
①A×15%+B×37%=$6,938,744
②(A+B)×17.4%=$6,938,744
A=$35,527,529(89%)
B=$ 4,350,310(11%)
となり、バフェット氏の所得の 89%が投資家所得で、$100 円として 35 億円余であったことになります。

日本では 100 億円で 15.9%

投資家所得への低率の比例課税が、担税力に反比例する金持ち優遇税制となっている現象は、日本が世界一過激です。
税制調査会資料によると、日本の申告所得者の統計データでは、100 億円のところでは、15.9 億円(15.9%)が平均的税負担とされています。
①A×15.315%+B×45.945%=15.9 億円
②(A+B)×15.9%=15.9 億円
A=9,809,010,774(98.09%)
B= 190,989,226( 1.91%)
実効税率 15.9%は課税所得 900 万円未満のレベルでの税負担です。
その上、何億円の所得があっても、源泉分離課税の株式関連所得は申告不要に出来るので、申告所得税の統計資料には、全体像は示されていません。

岸田文雄首相の提案

岸田文雄首相は、自民党総裁選でバフェット・ルール的な「金融所得課税の見直し」を公約に掲げ、その後の衆院選を前に当面撤回などとしましたが、選挙後は、党税調・政府税調に見直し議論の要請をしました。
地球温暖化やTAXヘイブン対策、GAFA税逃れ問題と同じく、担税力に逆進的な不公平税制も、先進各国共通の解決すべき喫緊の課題です。比例税率を改める、あるべき税制の形を世界に示すべきです。

金融所得課税は分配に有効か?

金融所得課税は分配に有効か?

岸田首相は政権公約で「成長と分配の好循環」のため、「金融所得課税の見直し」を選択肢の一つとし、『1億円の壁』の打破を打ち出しましたが、首相就任後、早々に先送りしました。はたして金融所得課税は、分配政策として有効なのでしょうか?

富裕層が優遇される 1 億円の壁とは?

所得が 1 億円を超えると、所得税の負担率が下がります。これは、富裕層で株式や債券など金融商品に投資を振り向ける金額が大きくなり、分離課税 20.315%(所得税15.315%、住民税 5%)の結果、総合課税の累進課税の効果が薄まることによると考えられています。
そこで、所得税の分配機能を高めるため、金融所得課税の税率をあげることにより、富裕層の負担を増やして分配の原資にあてるべきと考えたわけです。

むしろ中間層の課税強化につながる

証券系シンクタンクの 2018 年の調査レポートは、所得1億円を超える納税者は全体の 0.04%に過ぎず、金融所得の税率を引き上げても増税による税収は少なく、むしろ金融商品に投資する中堅以下の所得者層の増税効果の方が大きいと分析しました。
また、税率の引上げは創業意欲を減退させ、投資家がより低い税率の海外に逃避するおそれも指摘されています。これでは従来の「貯蓄から投資へ」の政府方針に反する結果にもなりかねません。

「新しい資本主義実現本部」の立ち上げ

政府は 10 月に「新しい資本主義実現本部」を立ち上げ、成長政策とあわせて賃上げや非正規雇用、看護・介護・保育、子育て支援などの分野で分配政策の検討を開始しました。税制では「新しい資本主義の時代における今後の税制のあり方」を政府税制調査会で検討することが盛り込まれています。

分配政策の社会的意義

産業革命以降、成長と分配はいつも経済政策の主要課題でしたが、この 40 年間、新自由主義は世界中で所得格差と分断を広げました。これに対し、分配の公正と貧困の解消の立場で自然環境、社会的インフラ、教育や医療などの社会的共通資本を、豊かな社会をつくる装置として機能させることを提唱した経済学者もいます。成長と分配はこれからも経済の根源的な課題であるといえます。累進課税や資産課税に所得再分配機能をもたせてきた税制も新たにどのような分配政策を考えられるかが問われます。

 

令和 3 年年末調整

令和 3 年年末調整

令和 3 年年末調整

変更点と誤りやすい点


印鑑不要になった!

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。今年は去年と比べると所得税計算本体への改正はないものの、手続的な部分での改正がありました。
「押印義務の改正」により、源泉所得税関係書類については、押印を要しないこととされました。このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使う書類についても従業員の皆さんに押印をしてもらう必要がなくなりました。地味ですが手間の省ける改正ですね。その他、源泉徴収関係書類を電磁的に提供する場合の、給与等の支払者が受けるべき税務署長の承認が不要とされたため、従来は税務署に提出が必要だった「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」が不要となりました。


令和2年改正部分に注意

今年の年末調整に目新しい変更はないものの、令和2年に改正が行われた「所得調整控除」「寡婦・ひとり親控除」「基礎控除」には注意が必要です。
所得調整控除は給与収入が 850 万円超の方が対象で「配偶者の扶養している子供でも、所得調整控除は両方の親に対して行える」点に注意しましょう。寡婦・ひとり親控除は令和 2 年から適用条件が変更されて「所得金額 500 万円以上の方は一律無効」となりました。基礎控除は「給与以外の所得も含めて、合計所得 2,400 万円超で逓減が開始」です。
新しいルールのため、細かい条件を取り違えて計算している例が散見されます。今年も注意して計算をしましょう。


電子化のメリットも考えて

計算式や控除上限等の変更、そして紙の記載フォーマットの変更と、年末調整は過去と比較すると明らかに複雑化しています。
従業員が控除額を計算して、

所得税

死亡退職の場合の給与計算

死亡退職の場合の給与計算

社員の死亡退職の際の給与計算

在職社員の死亡退職に係る給与計算は、通常退職の手続きと、少し違ってきます。
死亡後に支給期が到来する給与の振込は、本人口座が凍結されるので、遺族の口座となります。また、社会保険の脱退や埋葬料の請求等で遺族に手続きを依頼する場面も生じます。会社側も慌てず粛々と手続きを進めて下さい。
給与課税は、死亡前に支給されたものが対象となり、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄には、死亡前に支払が確定している給与の合計額を記載します。年末調整は死亡時の扶養等の現況で行います。死亡後に支給期の到来する給与については、相続財産となり、所得税の課税対象となりません。
給与から控除している住民税の特別徴収は、死亡後に支給する給与から一括控除して会社が納付するのか、後日遺族が普通納付するのか、遺族に意向を確認します。それを受け、会社が「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。

課税関係の精算は遺族が行う

会社側で年末調整が行われますが、医療費控除等がある場合は、相続人が被相続人の確定申告(いわゆる「準確定申告」)を行うことで、所得税関係の精算ができます。
遺産が相続税の基礎控除額を超えていれば、相続税の申告も必要です。死亡後に支給期が到来して相続人口座に振り込まれた金額も相続財産ですので、申告漏れのないよう留意が必要です。

社会保険ほかの手続き

社会保険と雇用保険で資格喪失手続きを行います。死亡日=退職日となり、資格喪失日は死亡日の翌日となります。社会保険料の給与からの天引きがひと月遅れで、資格喪失前の社会保険料の納付義務が発生していた場合には、最後の給与から控除します。健康保険証は返却してもらいます。
なお、遺族からの申請で、埋葬料・傷病手当金・高額療養費を受け取ることができる場合もあります。これらの申請には、種々の適用要件がありますので、会社もしくは会社の顧問社会保険労務士から遺族側に説明をし、会社が手続きを誘導して、申請漏れで受け取ることができなくならないよう迅速に対応を進めていくことが大切です。