02-所得税

令和 3 年分確定申告書 すぐ消える変更点

令和 3 年分確定申告書
すぐ消える変更点

令和 3 年分確定申告書 すぐ消える変更点

提出が楽になった配当所得の選択制度

上場株式の配当金は、所得税 15.315%と住民税 5%が源泉徴収済の状態で支払われますが、実際の申告は総合課税・分離課税・(特定口座の場合)申告不要と課税方式が選択できます。
また、課税所得900万円未満の場合、配当控除の控除率の関係で、所得税と住民税で申告方式を変えることによってかかる税金を減らせるというテクニックが存在します。
所得税等の確定申告時には総合課税を選択し、その後市区町村に住民税の申告書提出等の所定の手続きを行うことで、住民税側は申告不要を選択、という手続きが取れるようになっていました。さらにこの申請の二度手間を無くすため、令和 3 年分確定申告からは、申告書第 2 表の「住民税に関する事項」に「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」というチェック欄が新設され、ここにチェックを付けておけば、市区町村に手続きを取る必要がなく、住民税については申告不要を選択できるようになりました。

ただし、将来選択できなくなります

令和 4 年度税制改正大綱で「上場株式等の配当所得については個人住民税において、課税方式を所得税と一致させる」という一文があるため、この改正を適用する令和 5年分の確定申告書は、おそらく今年新設された「申告不要」のチェック欄は無くなっているものと思われます。

健康保険料等にも影響がある選択制度

この申告方式の所得税・住民税個別選択については、健康保険料や医療費の窓口負担割合についても有利な選択ができるため、社会保障制度の公平な負担という面で見ると課題があるため改正されたとする報道もあります。また、金融所得課税全体の見直しは、令和 4 年度の税制改正では見送りとなりましたが、その一環であることも事実でしょう。
今後の税制見直しでも、どの程度、どんな所得や資産を持つ人に、どのくらいの負担を求めてゆくのかという「公平性」の判断については、議論を重ねて慎重に決めていただきたいものですね。

赤信号無視と共謀罪既遂

赤信号無視と共謀罪既遂

赤信号無視と共謀罪既遂

赤信号無視で逮捕・訴追されることもある

歩行者の赤信号無視が警察官の目の前で行われても、せいぜい注意される程度で、逮捕・訴追されることなど滅多にありません。かつて、オウム事件勃発の頃にニュースになった逮捕事件があった程度です。
ただ、赤信号無視の個人を法的に責めるとしたら、行政処分ではなく、通常の犯罪として刑事訴訟法の手続きに則り、書類送検、起訴という手続きをとらなければならず、非常に厄介、国民平等待遇の問題もあり、現実としては大目に見て無視しているということなのでは、ないでしょうか。
でも、決して法律違反者であるという事実が無くなる訳ではありません。

共謀罪の構成要件・計画の準備行為

租税回避計画を前提に、共謀罪法の条文を読んでみると、「計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われ」が構成要件の内容で、「計画をした犯罪」とは「偽り不正の行為により税を免れること」です。税の抜け穴プランを思い付いて、話題にした程度の個別具体性がない段階ではまだ、計画にもならないと思われます。
過去の事例で言えば、自己株取得・みなし配当、チェック・ザ・ボックスによる株式簿価の膨張、日本国内親会社の設立とそこへの譲渡、創出欠損金は 4000 億円、それから合併又は連結、と具体化したところまでが計画の段階で、株式簿価膨張のための評価依頼先をどこにするか、日本親会社たる有限会社は設立でなく買い取りとしてその候補を探す依頼先を検討する、ということになると、準備行為開始の段階です。
結果として、そのプランを実行した場合に否認され「偽り不正の行為」と認定される可能性があるものだとしたら、この準備開始段階に至れば、共謀罪では既遂です。

赤信号無視と同じ共謀罪違反者

共謀罪違反につき税務署に通報義務はなさそうです。訴追については、警察・検察の仕事であり、情報もないことから、通常は租税の「偽り不正の行為」事件には無関心なのではないかと、思われます。
しかし、もし、節税・租税回避プラン作りに、「偽り不正行為」と認定される回路があるとしたら、租税訴訟とは別に、共謀罪既遂者として法律違反を問われる条件事実はすでにある、ということになります。
赤信号無視者と同じ状況です。

 

3000 万円特別控除 と措置法重複適用

3000 万円特別控除
と措置法重複適用

3000 万円特別控除 と措置法重複適用

土地バブルとマンションバブル

昭和の土地バブルの時代には、頻繁に住宅を買い替えることにより、よりリッチな物件に住み替える、という事例が沢山ありました。所有によりアパート賃料分が留保されるだけでなく、所有により含み益が蓄積される、という効果が人の心を動かしました。
現在は、マンションバブルの傾向を示しています。首都圏では 2000 年以降、近畿圏では 2010 年以降に建築した中古マンションの譲渡価格が新築時の価格を上回る傾向にある、との民間公表データもあります。
譲渡益も、建物の減価償却があるから譲渡益が出るのではなく、その償却額を超える譲渡益が出る、という事です。

会計検査院の指摘

令和2年の税制改正で、住宅ローン控除の規定の「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正されました。これは、会計検査院が措置法特典の不適正な重複適用として実態報告をしたことに端を発しています。会計検査院の検査報告によると、新居を購入して住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に旧居を売却して居住用資産譲渡の 3000 万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成 28 年、29 年の2年間で 37 人いたとしています。そして、この 37 人の重複減税額の合計が 5011 万円であった、としています。税率で割った一人当たり平均譲渡益は 900 万円前後です。
会計検査院の検査した事例も、最近の不動産バブルを反映しています。

特例の連続適用・重複適用

今はマンション住み替えの都度、譲渡益が発生する時代になっています。そして、期間が3年超ならば、3000 万円控除の連続適用が可能です。さらに、住宅ローン控除の適用を受けていたとしても、その居住物件の譲渡による譲渡益に対する 3000 万円控除の適用も可能です。
会計検査院の指摘と紛らわしいところですが、同一物件に係る譲渡益に対する 3000万円控除の適用と住宅ローン控除の適用には、特例併用の制限はされていません。会計検査院の指摘したのは、異なる物件での住宅ローン控除と 3000 万円控除の重複適用の場合の事なので、同一物件での重複適用に対する注文ではなかったのです。

短期退職給与の分別計算 令和4年から適用開始

短期退職給与の分別計算
令和4年から適用開始

短期退職給与の分別計算 令和4年から適用開始

短期退職金での報償

M&Aでの企業の規模拡大戦略が模索される中、新たに子会社になった企業に、役員や幹部社員として出向や転籍をさせる要員が必要となります。そして、一定の期間経過後に、出向元や転籍元に復帰することも普通に想定されることです。
復帰に際して、出向先や転籍先での功績顕著な場合、退職金等で報いる、という選択肢もあり得ます。そんな場合、出向・転籍先での役員又は使用人としての勤続期間が5年以下の場合は、課税関係が複雑になります。

退職所得課税の計算式

現在の退職所得課税での税額計算式は次の3つに分かれています。
①(収入-退職所得控除額)÷2×税率=
②(収入-退職所得控除額)×税率=
③(収入-退職所得控除額-150 万)×税率=


上記の②は、勤続年数5年以下の短期役員退職給与(法人役員・議会議員・公務員)に対する課税方式で、2分の1計算が適用除外です。この②は、平成 24 年改正で措置されたものです。
③は、②以外の勤続5年以下の短期退職給与で、退職所得控除後の額が 300 万円超の場合の課税方式です。300 万円超過部分についての2分の1計算を適用除外とするとの趣旨の算式です。③は、令和3年度の税制改正で制度創設され、令和4年分以後の短期退職給与について適用されます。
①は、それら以外の一般退職給与及び退職所得控除後の額が 300 万円以下の短期退職給与に対しての課税方式です。

複数該当や期間重複の場合

その年中に支払われる退職給与が、①、②、③の複数ケースに該当する場合の退職所得控除額の計算方法は、それぞれ期間の重複がなく、20 年以内の場合には、②では〈40 万円×役員勤続年数〉です。①③では、〈40 万円×総勤続年数-②の額〉です。使用人兼務役員としての勤続期間がある場合は、役員と使用人との期間の重複があることになるので、その重複期間についての②は、〈20 万円×重複年数〉となります。
なお、①②③のそれぞれで計算される退職所得控除額がそれぞれの収入金額よりも少なくマイナスとなるケースがある場合には、そのマイナス額は、他のプラスとなるケースから控除されます。

死亡した月の給与の取扱い

死亡した月の給与の取扱い

死亡した月の給与の取扱い

死亡月の給与は支給期で判定

あまり起きて欲しくないことですが、現役の会社員が亡くなった場合、給与の取扱いについては少し注意が必要です。
死亡した方の給与は、生前働いていた期間で日割りして算出しますが、「支給期」の前に亡くなっている場合は、その月以降の給与に関しては相続税の課税対象となり、所得税は課税されないため、源泉徴収は行いません。また、死亡した人の年末調整は死亡時に行いますが、源泉徴収しないということは、源泉徴収票の支払金額に含めないということですから、その点にも注意が必要です。

「支給期」は「支払日」のこと

「支給期」という言葉は聞きなれないので「給与の締め日」と思われがちですが、「給与の締め日」のことではないので注意しましょう。「支給期」とは「給与所得の収入金額の収入すべき時期」のことで、「契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等についてはその支給日、その日が定められていないものについては実際にその支給を受けた日」と定められており、要は「支給日」のことです。
また、資金繰りやその他の理由で、定められた支給期(=支給日)に給与が支払われず、遅滞した給与が支払われる前に死亡した場合は、その当月の支払い分は給与所得となりますので、給与所得の源泉徴収票に含めて記載する必要があります。

社会保険料の扱いは?

社会保険料は所得税の扱いとは異なり、翌月末日が支払い期限で、「月末時点に在籍していればその月の社会保険料がかかる」という仕組みなので、当月締め・翌月払いの給与体系の場合は、死亡のタイミングにもよりますが、死亡後の給与からも天引きする場合もありますから、注意が必要です。
なお、雇用保険料は日割り計算です。社会保険料と混同しないように気をつけましょう。

暦に従って計算する だけではない償却計算

暦に従って計算する
だけではない償却計算

暦に従って計算する だけではない償却計算

2ヶ月の次は4ヶ月

かつて、大学教授の方が、税務専門誌の質疑応答事例の中で、7月 31 日使用開始した減価償却資産の月数計算について、決算期末が9月 30 日だったら事業供用月数は2ヶ月となり、また、決算期末が 10 月 31日だったら、事業供用月数は4ヶ月となる、と回答していた記事がありました。

理由は民法の定めによる計算

償却限度額を計算する場合の「月数」とは、カレンダーの枚数を意味するものではなく、暦に従って計算するのであり、「暦に従って計算する」とは、民法第 143 条による計算であり、「応当する日の前日に満了」、応当日がない時は「その月の末日に満了」との規定に従うから、とのことでした。
7月31日から9月30日までの間に含まれる「30日」は、8月30日と9月30日の2回なので、その月数は2となる、ということ、即ち、「7月31日から8月30日まで」の1ヶ月と「8月31日から9月30日まで」の1ヶ月との合計2ヶ月、ということです。

税の実務においては

しかし、当局の監修を受けていると思われる減価償却の税務ソフトでも、7月 31 日使用開始で決算期末が9月 30 日の期間計算を2ヶ月と1日という計算で3ヶ月の償却計算をしています。先の大学教授の解釈にも一理あるかと思いますが、実務では、カレンダーの枚数による計算が主流のように思われます。

民法の規定の適用を徹底するなら

「暦に従って計算する」との民法規定を根拠に置くのだとすると、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」という民法第 140 条の規定も無視するわけにはいきません。
7月 31 日使用開始で決算期末が 10 月 31日の期間計算では、初日不算入とすると8月1日から 10 月 31 日となり、3ヶ月ちょうどで、大学教授のいう4ヶ月にはなりません。期間の満了日は民法遵守で、初日については民法無視というのも、不合理です。

慣習法的実務解釈が定着か

国税通則法にも期間の計算の定めがあり、期間の初日不算入、期間の定めは暦に従う、応当日前日の満了と、民法と同じ規定になっていますが、減価償却の償却月数計算では、民法の規定に拠るのではなく、初日算入で、カレンダーの枚数に拠るという、税法の世界独自の解釈ルールがありそうです。

 

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除の適用を受けて新住居を取得した人が、旧住居を住まなくなってから3年目に譲渡して 3000 万円特別控除の適用を受けようとする場合、住宅ローン控除が過去に遡って適用されなくなりますので、注意が必要です。

租税特別措置の趣旨は、住宅取得の促進

「公平・中立・簡素」は税制の基本原則ですが、国は、特定の政策目的の実現のため、特別措置でこの原則を少し緩めて特定の人の税負担の軽減をはかります。住宅ローン控除は、借入金の金利負担を税額控除で補填するもの、居住用不動産の譲渡所得の3000 万円特別控除は、住宅を売却する人は、代わりに居住用不動産を取得する必要があることから譲渡所得に係る税負担を減らして、住宅取得を後押しするものです。他にも買換特例、交換特例などがありますが、これらの譲渡特例の適用に際し、制度の重複適用は想定されていません。

会計検査院の指摘で重複適用が発覚

ところで、令和2年度改正前の税制では、居住した年、及びその前後2年間の重複適用までは禁止されていましたが、旧住居を住まなくなってから3年目に譲渡した場合、住宅ローン控除と 3000 万円特別控除の重複適用が起きてしまうことを会計検査院が指摘しました。このため、令和2年4月1日以降の旧住居の3年目の譲渡にも、重複適用はできないこととなりました。

重複の場合は、3000 万円特別控除を優先

重複適用の場合は、3000 万円特別控除が優先されます。3000 万円特別控除の適用を受けようとする人が、住宅ローン控除を先行して受けていた場合、過去に遡って住宅ローン控除が適用できなくなり、修正申告(または期限後申告)が必要となります。
これにより居住用不動産を買換えしようとする人は、住宅ローン控除と譲渡所得の3000 万円特別控除のどちらを選択するか、事前に有利判定が必要となります。

控除率1%の見直しも忘れずに

なお、このときの会計検査院報告では、他にも、住宅ローン控除適用者の借入金利が1%を下回ることが多いことから、ローンで住宅を取得した人の税負担が金利負担以上に減額される逆ざや現象が報告されていました。そこで令和4年度税制改正では、令和4年以降に居住の用に供したものから借入残高に対する控除率は、1%から 0.7%に引き下げられることになります。

在宅勤務にかかる費用負担 -事務簡略化のために

在宅勤務にかかる費用負担
-事務簡略化のために

在宅勤務にかかる費用負担 -事務簡略化のために

在宅勤務手当の支給

落ち着きかけたコロナ第 5 波も、オミクロン株の急拡大により、在宅勤務となる会社も増えています。企業が自宅で仕事をする際の電話代や電気代として、従業員に在宅勤務手当を支給した場合、従業員の給与として課税する必要があるでしょうか?
在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については 、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
一方、企業が従業員に在宅勤務手当=従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月 5,000 円を渡切りで支給するもの)を支給した場合は、従業員への給与として課税する必要があります。

実費相当額を精算する方法は計算が面倒

企業が、独自により精緻な方法で、業務のために使用した通信費や電気料金の金額を算出することができれば、実費精算として給与課税の対象外となります。しかしながら、実際は、国税庁が提供している簡易な計算方法で計算することとなります。
簡易な計算方法と言いながら、実際の請求書に基づき、業務用の通話明細を区分けしたり、基本料金をその月の日数の在宅勤務日数分で按分したり、さらに機器本体やオプション費用が混じらないように除外したりと、かなり面倒な計算が毎月必要です。
電気料金の計算は、自宅の床面積に占める業務のために使用した部屋の床面積で按分するとしても、毎月実際の請求書を会社に提示し計算・精算するので面倒です。

負担軽減のためにグロスアップで給与課税

こうした精算に係る従業員と会社の事務作業と時間は、結構な負担となるはずです。
給与課税とならない目的の逆転の発想で、事務負担軽減のために、渡切り手当を、税金等を考慮して手取額が減らないグロスアップ計算で算定することも一つの考えです。
毎月5,000円の渡切り支給を、所得税率と住民税率および雇用保険料率の合計(例えば所得税率20%の人の場合30.72%)で割り返して、5,000円÷(1-30.72%)=7,217円となります。7,217円から税金等相当2,217円を差し引いて、実質5,000円です。追加となる税金等相当2,217円と事務負担とを比較し、どちらの方法がより負担が少ないか決めることも良いかもしれません。

賃貸不動産の一時的空室

賃貸不動産の一時的空室

賃貸不動産の一時的空室

相続で賃貸不動産を取得したとき、財産評価で一時的に空室となっている住戸にも評価減を認める取扱いを受けるには、賃貸業務の継続性に加え、空室期間を長期化させないことが必要となります。

賃貸不動産の財産評価

相続や遺贈で財産を取得する場合、財産は時価で評価します。相続財産の時価は、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、通常成立すると認められる価額とされています。
貸家および貸家の敷地の用に供されている貸家建付地は、賃借人が建物を使用することで支配権を有しているため、貸主の側も利用に受忍義務が生じることから評価額が減額されます。反対に賃貸されていない貸室部分は賃借人の権利が存在しないので評価は減額されず、自用地評価となります。

相続財産の一時的空室の扱い

一方、一時的な空室であることが認められれば、例外的に賃貸されているものとして評価の減額が認められる場合もあります。
税務署は、質疑応答事例で相続した時点で空室があった場合、その空室について相続の前後で賃貸が継続され、新たな賃借人の募集が退去後、速やかに行われ、空室期間中、他の用途に供さず、空室期間が課税時期の前後で例えば1か月程度などの要件をみたせば、事実関係を総合判断して例外的に、空室部分も賃貸されているものとして評価減を認めるとしています。
しかし、現実は、空室はすぐに埋まらず、課税実務では、「例えば 1 か月程度の要件を充たしていない」として自用地評価とされてしまうことが多いのではないでしょうか。

不動産所得における一時的空室との違い

ところで、不動産所得では、空室期間が 1か月を超えたとしても、賃貸業務を継続中であれば貸付の用に供されているものとして減価償却費などを経費として算入します。
これは不動産所得が1年間の総収入金額から必要経費の額を控除するフローの金額としてとらえられるのに対し、財産評価は、相続開始時のストックの評価額としてとらえることとの違いによるものと思われます。

空室を早期に埋める実態をつくる

空室を1か月で埋めるのは立地、賃料などでよほど優位な物件でない限り困難ですが、間断のない募集活動により空室期間の短縮をはかり、空室が一時的であることを事実関係から説明できるようにしましょう。

税金よもやま話 さよなら申告書 A

税金よもやま話
さよなら申告書 A

税金よもやま話 さよなら申告書 A

確定申告書Aがなくなる

今年も確定申告の時期がやってきます。
国税庁 Web サイトの確定申告特集ページでは、最新の確定申告書様式のダウンロードや、作成コーナーのマニュアルの閲覧等ができますが、その中の「確定申告書A様式」には大きく「令和 5 年 1 月から申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます」と記載されています。

簡易のAとオールマイティのB

そもそも確定申告書A様式は、所得の種類が給与・雑・配当・一時所得のみで、予定納税額が無い方のみが利用できるいわゆる「簡易版」の申告書です。確定申告書B様式はすべての所得に対応したものになっているわけですから、今まで確定申告書A様式を利用していた方でもB様式にて申告が可能です。
ちなみに確定申告書がA・Bの様式になったのは平成 14 年(平成 13 年分申告)から。それまでの申告書様式が 6 種類だったものを、A・Bの様式プラス別表という形に変更しました。内容こそ少しずつ変わったものの、20 年間もこの様式を維持して運用し続けられたのは、初期の様式デザインが優れていたのだと思います。

紙の申告書提出を少なくしたい

最初にご紹介した確定申告特集ページで閲覧できる「確定申告の手引き」を見てみると、最初のページから「ホームページから申告書が作成・送信できます」と大きく書いてあります。また少しでもページに空きスペースがあれば、すかさず国税庁チャットボットのふたばさんが「作成コーナーを使えば簡単便利に申告できます」とアピールしまくる徹底ぶりです。
国税庁は「税務署に来なくても全ての手続きができるように」を目指しており、紙の確定申告書提出を少なくしたいという意図が見て取れます。
ただ、日本社会では高齢者を中心に、未だデジタルディバイド(インターネットやPCを使える人と使えない人の間に生じる格差)があり、紙の申告書からの脱却にはまだ時間がかかりそうです。