玉田篤志

なぜ給与支払者が源泉徴収義務者 で納税しなければならないのか?

なぜ給与支払者が源泉徴収義務者
で納税しなければならないのか?

なぜ給与支払者が源泉徴収義務者 で納税しなければならないのか?

源泉徴収は国の仕事の押し付けでないか?

所得税法では、給与の支払者が給与支払時に源泉所得税を天引きし、翌月 10 日までに国に納付しなければならないと規定されています。“これって国のやるべき仕事を給与支払者に押し付けているのでは?”と疑問に思ったことはありませんか?
源泉徴収制度は事前に税収を確保できる国にとって便利な制度です。滞納の未然防止や納税の簡易化、納税者の捕捉などにも資するものです。とはいえ、給与支払者にとっては手間も時間もかかる余計な仕事である上に、申告や納税が遅れるとペナルティ(=不納付加算税など)も大きい嫌な制度です。

手間の掛かる源泉徴収義務は憲法違反か?

給与支払者に源泉徴収義務を課すのは憲法違反だとする源泉徴収制度の合憲性が争われた事件がありました。原告側の主張は、源泉徴収制度は憲法 14 条 1 項(法の下の平等)、18 条(その意に反する苦役に服させられない)、29 条 1 項 3 項(財産権の侵害)に違反すると訴えたのです。
しかしながら、昭和 37 年 2 月 28 日の最高裁の判決で、「給与所得者に対する所得税の源泉徴収制度は、これによって国は税収を確保し、徴税手続を簡便にしてその費用と労力とを節約し得るのみならず、担税者の側においても、申告、納付等に関する煩雑な事務から免がれることができる。また徴収義務者にしても、給与の支払いをなす際所得税を天引きしその翌月 10 日までにこれを国に納付すればよいのであるから、利するところは全くなしとはいえない。」として訴えは退けられました。

現行の源泉徴収制度は三方よしの手法

最高裁の棄却理由として、①国の簡便手続での税収確保、②従業員は確定申告不要となる、③給与支払者の資金的利便の 3 つを理由としました。
そして、「されば源泉徴収制度は、給与所得者に対する所得税の徴収方法として能率的であり、合理的であって、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。」として、合憲としました。
以後に争われた源泉徴収制度の合憲性事件でも、この昭和 37 年最高裁判決が引用されて今日に至っています。

結婚・子育て資金贈与の非課税

結婚・子育て資金贈与の非課税

結婚・子育て資金贈与の非課税

制度概要

結婚子育て資金の一括贈与制度は、直系尊属である父母、祖父母から子・孫に結婚・出産・育児の費用を非課税で贈与できる租税特別措置法の制度です。20 歳以上 50 歳未満の受贈者を対象に最大で 1000 万円(結婚費用は最大 300 万円)までの贈与が非課税になります。非課税の対象となる費目については、内閣府 HP に掲載されています。
平成 31 年改正で受贈者は、前年分の合計所得金額が 1000 万円以下に制限されました。令和3年度は次の改正があり、令和5年3月 31 日まで2年間、延長されました。

贈与者死亡時、孫への贈与は2割加算に

贈与者が死亡した日までの贈与額(非課税拠出額)のうち、結婚・出産・育児に使用した金額(結婚・子育て資金支出額)を控除した未使用分(管理残額)は相続税の課税対象となっていましたが、新たに令和3年4月1日以降の孫への贈与は、配偶者および一親等の血族以外(代襲相続人である孫・孫養子を除く)への贈与に適用される、相続税額の2割加算の対象となりました。世代間の資産移転を促進する非課税贈与として創設された制度は、相続税法の取扱いがさらに適用され、利用しにくくなりました。

認可外保育施設も非課税の対象になります

非課税の対象となる育児費用の範囲に、新たに1日当たり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち、都道府県知事などから認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書を交付された施設に対する保育料の贈与も対象となりました。証明書を交付された施設のリストを HP で公開している自治体もあります。

非課税申告書は電子提出も可

この制度の適用を受けるため、取扱金融機関を経由して提出する非課税申告書は、令和3年4月1日より、電磁的方法によっても提出できるようになっています。

今年の改正税法 所得税・住民税と退職所得

今年の改正税法
所得税・住民税と退職所得

今年の改正税法 所得税・住民税と退職所得

退職所得は合計所得金額を構成するが

令和2年分の所得税の申告から、基礎控除ほか人的控除、給与所得控除、公的年金等控除、青色申告控除などの改正で、10 万円増減や段階的減額や適用除外に伴う所得計算の複雑化が顕著になりました。
合計所得金額の多寡はこの複雑化計算の要素の一つです。そして、所得税に於いては、退職所得はこの合計所得金額の構成要素ですが、住民税での通常の退職所得は、合計所得金額の構成要素ではなく、完全分離課税です。所得税と大きく異なります。

住民税では構成しないとの確認的改正

今年の住民税の税制改正では、公的年金等控除額の算定の基礎となる「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」には、個人住民税における他の所得控除等と同様に、退職所得を含まない合計所得金額を用いること、と所得税と住民税での公的年金等所得の計算の不統一が明確にされ、令和3年分の所得税申告に係る令和4年分の住民税の公的年金等所得・税額計算から適用となっています。

配偶者等の退職所得情報の共有化

また、関係するのは、納税者本人の退職所得だけでなく、配偶者や扶養親族の受ける退職所得もです。
今年の税制改正では、退職所得を受給する同一生計配偶者と扶養親族の氏名住所等を「扶養控除等申告書」に記載する事とし、その記載を基に、給与支払者は、「給与支払報告書」の摘要欄に「(退)」を付けて移記し、市町村に提出する事とされました。
ここでは、所得税の課税処理を基に住民税の課税処理が完結しています。

本人情報は何故か徹底させない

でも、「確定申告の手引き」には、「一般的に、退職所得に係る所得税等は源泉徴収により課税が済むことになりますので、申告書の提出は不要です。」と書かれています。
住民税の事を無視した記載です。
給与所得と退職所得だけの場合だと、年末調整関係申告書と退職所得受給申告書を提出するだけで手続き完了です。そして、これらの申告書は、宛名こそ税務署長や市町村長になっていますが、それらの機関に提出されることのない書類です。
また、法定調書としての「退職所得の源泉徴収票」は、市区町村にも提出されますが、作成範囲は法人の役員に限定です。
住民税の適正計算には除外すべき退職所得情報は不可欠なのに、なぜか不徹底です。

「交通税」導入への課題

「交通税」導入への課題

「交通税」導入への課題

滋賀県で導入が検討されている

2022 年 5 月末ごろ、複数のメディアが「滋賀県で交通税が検討されている」と報じていました。報道によると滋賀県の税制審議会が「地域の公共交通機関を支える税制を検討すべき」という答申をまとめ、知事が導入を検討する方針を示しているということです。交通税が導入されれば、全国初となります。

自治体で税を新しく作ることはできる

地方自治体は、地方税法に定める税目(法定税)以外に、条例によって税を新設することができます。「法定外目的税」と言われるものですが、石油価格調整税、遊漁税、産業廃棄物税、宿泊税等、地方自治体が独自に制定しているものは多くあります。
今回の滋賀県のケースで言えば、「交通税」という法定外目的税を新たに制定し、滋賀県の公共交通機関の運営財源に充てることになります。

課題が多い交通税

なぜ「交通税」が「導入されると全国初」なのでしょうか? それは課題が多いからです。日本には「受益者負担の原則」があり、利用して利益を得る人が維持費を負担すべきという考えが根強いことや、税という公的なお金を直接民間企業に充てることなどが課題となります。
また、厳しい経営状況にある公共交通機関事業者については、自治体が助成しているケースや、公有民営や第三セクターで運営されている交通機関等、税の徴収以外で現在行われている対応策が多々あります。
わざわざ税を新設しなくても良い、という意見もあるでしょう。

滋賀県がチャレンジする意義

ただ、現在行われている公共交通機関への助成はジリ貧の印象が濃く、上手くいっている例が多いとは言えない状況です。また、公共交通機関の経営難については、広域的な問題のため、市区町村単体ではなかなか解決できないものです。
滋賀県の「国の取組を待たず、また、個々の市町の区域にも限定されない、広域的な見地に立つ県として、導入へ向けた挑戦をすべきものである」という力強い言葉は、現在の日本社会を見れば、確かにその通りだと思えるものではあります。今後どのような方向になるのか、注目したいですね。

今年の改正税法 インボイス事業者即時登録

今年の改正税法
インボイス事業者即時登録

今年の改正税法 インボイス事業者即時登録

今年の消費税法の改正とされた条文

今年の税制改正は、「所得税法等の一部を改正する法律」という全 20 条の一括法(所謂束ね法)でなされています。この中での消費税法の改正は、第7条で消費税本法の改正、第 20 条で平成 28 年の改正税法の消費税部分(第5条)の中の未施行条文とそれに関連する附則条文の改正をしています。
平成 28 年の消費税改正はインボイス制度の導入立法です。その時の附則の規定としては、令和5年 10 月1日から、インボイス制度が開始されるので、当初からインボイス(適格請求書)発行事業者になるためには令和5年3月 31 日までに登録申請をすること、それ以後においては、特に、免税事業者がインボイス発行事業者になるには、新規に課税期間となる初日以前1月前の日までに、登録申請書を提出すること、としていました。

今年の改正で6年間の延長と即時登録に

今年の税制改正で、免税事業者が、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に行うインボイス発行事業者になる為の登録では、任意のタイミングでよいこととし、その登録で即時にインボイス発行事業者の資格を得られることと改正されました。
この登録には、課税事業者選択届出書の提出は不要です。

2年縛りと3年縛りの制限

今年の改正の結果、任意での即時登録者には、登録日の属する課税期間の翌課税期間と翌々課税期間においては消費税の免税事業者に戻る選択が出来なくなりました。
なお、令和5年 10 月1日を含む課税期間での登録者には、改正前のまま、この2年縛りの制限はありません。
また、調整対象固定資産(100 万円以上)を取得した場合の3年縛りの制限は、即時登録した元免税事業者にはありません。理由は、3年縛りの規定が、「課税事業者選択届」を提出した者を対象とするからです。
同じ3年縛りでも、高額特定資産(1000万円以上)の取得の場合には、「選択届」提出者との限定がないので、制限ありです。

税法本法の規定なのに

措置法的な、令和 5.10.1~令和 11.9.30というインボイス登録時限規定は、消費税法本法本文上の規定としては不自然です。
その通り、これは本文規定ではなく、附則の規定、それも平成 28 年改正税法の中の附則第 44 条についての本年改正規定です。

残業代が変わる! 来年 4 月から

残業代が変わる!
来年 4 月から

残業代が変わる! 来年 4 月から

割増率が変わることをご存じですか?

現行では法定労働時間(1 日 8 時間、1 週40 時間)を超える時間外労働(法定時間外労働)に対して事業主は 25%以上の率で計算した割増賃金を支払うこととなっています。
2023 年 4 月から中小企業も月 60 時間を超える時間外労働は割増率が引き上げられます。すでに大企業は 2010 年 4 月から適用されていた割増率ですが、長らく猶予期間が適用されていた中小企業においても、いよいよ 2023 年 4 月からは月 60 時間超えの残業の割増率が現在の 25%以上から 50%以上に引き上げられます。
例えば時給 1200 円の方が残業すると時給は 1500 円ですが、その方が 60 時間以上の残業をすると時給 1800 円となります。60時間を超える時間外労働を深夜(22 時から5 時)に行う時は 75%割増しになります。
恒常的に残業が 60 時間を超えている事業所は考えなくてはならないでしょう。
さらに、2022 年 4 月からの残業代未払いに対して遡及支払いが 2 年から 3 年に延びていますので、残業が多い事業所は対策を考える必要があるでしょう。

今から対策をたてる

①月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康確保のため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の代替休暇を付与することができます。
②労働時間の適正な現状把握をする。
勤怠管理システムの導入などで勤怠管理をする。長時間労働を是正管理する。
③リモートワークで管理者が現場にいない時は自己申告になりますが、自己申告とパソコンの使用時間が違っているか、上司管理職は労働時間の上限を設けず、法定労働時間の上限を超えているようであれば、習慣的に行っていないか注意をする必要があります。
④割増率の引き上げに併せて就業規則の変更が必要な時があります。
勤怠管理システム導入や就業規則改定費等に「働き方改革推進支援助成金」や「業務改善助成金」等、環境整備に必要な費用の一部が助成される制度があります。

がん免疫治療の医療費控除

がん免疫治療の医療費控除

がん免疫治療の医療費控除

がん免疫療法は、人間の持つ免疫の力を利用してがんを攻撃するがん治療法ですが治療法の中には効果がまだ認められず、保険が適用されない自由診療となるものもあります。高額な医療費を支払った場合、医療費控除は受けられるのでしょうか。

診療、治療のため通常必要な医療費

所得税法では、医療費控除の対象として「医師による診療または治療」、「治療または療養に必要な医薬品の購入」の対価のうち「通常必要と認められるもの」、「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」と規定しています。
判例では、眼の屈折異常を矯正する目的で眼鏡等を装用した際、医師の検査費用と眼鏡等の購入費用の医療費控除該当性が争われた裁判で「医療費控除制度は、治癒可能な心身の機能の低下を回復させるために必要となる医療上の経済的支出に対する課税上の調整措置である」と治癒を前提とした医療であることが判示されています。
がん免疫治療の場合、自身で選択した治療法が治療の効果が証明されていない自由診療であるとしても、そこに一定の効果が期待され、医師の診断にもとづき治療が行われているのであれば、「治癒可能な心身の機能低下の回復」を目的とする医療行為に該当し、医療費控除が適用されるのではないでしょうか。ちなみに丸山ワクチンの購入費用は、主治医の判断の下、主治医により治療が行われることから、医師等による診療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象となる旨の判示があります。

疾病予防と健康増進の医薬品は除外される

所得税通達では、薬機法に規定する医薬品が医療費控除の対象とされますが、医薬品に該当しても疾病予防と健康増進のみに使用されるサプリメントは医療費控除の対象とされません。
判例では、健康補助食品である漢方薬が医薬品でないこと、また医薬品に該当する漢方薬に治療・療養の必要性を認めず医療費控除が適用されなかったものがあります。

治療法の選択には慎重な検討を!

医療費控除が適用されるとしても自由診療で免疫療法を受ける場合は、治療効果、安全性、費用の負担をよく検討した上で慎重な対応が求められます。担当医とよく話し合いましょう。また国立がん研究センターや地域拠点病院の相談窓口で免疫療法の情報を取得し、相談することもできます。

源泉所得税のクレジット カード納付のススメ

源泉所得税のクレジット
カード納付のススメ

源泉所得税のクレジット カード納付のススメ

1 日でも遅れると 10%の不納付加算税

給与などから源泉徴収した所得税等は、原則として、支払った月の翌月 10 日までに国に納めなければなりません。
源泉所得税の納付を一日でも遅れると、原則 10%(税務署指摘前の自主的納付は5%)の不納付加算税という罰金が科されます。年率 10%の延滞利息でなく、一日でも納付すべき税金の 10%が課されるのです。
“国に代わって給与支払者が従業員の給与から天引きして納付しているのに罰金とはけしからん”という気持ちはわかりますが、税法で規定されているので従わなければなりません。

資金繰りの関係で手元資金がいまない場合

たとえば、「翌月 15 日には顧客からの売掛金の入金があるが 10 日までは手元資金がない」といった場合どうすればよいでしょうか?
「ホンの 5 日位だから 5%の不納付加算税なら構わない…」のでしょうか?
過去に不納付の事績があると他で罰則の軽減が適用されなくもなりますので、決して納期限に遅れてはいけません。
こんな時に便利なのが、クレジットカードによる税金納付です。国税(源泉所得税他の国の税金)をクレジットカードで納付することができるようになったのは、2017年 1 月 4 日(水)からです。
クレジットカード払いでは、金融機関や税務署窓口での納付や e-Tax でのインターネットバンキング納税とは違い、納付税額に応じて所定の決済手数料がかかりますが、10%の不納付加算税と比較すると、これを使わない手はありません。

納期の特例利用者は特にご注意を

毎月の源泉所得税等の納期は翌月 10 日ですが、給与の支給人員が常時 10 人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます。
一見便利に見える納期の特例制度ですが、半年分まとめるとなるとそれなりの金額となり、資金繰りに与える影響もそれだけ大きくなりかねません。納期限である 7 月 10日や翌年 1 月 20 日に十分な資金繰りの手当てがあれば別ですが、不安がある場合は、早めに、クレジットカード納付も検討してみることをお勧めします。

今年の改正税法 完全子法人株式配当の源泉税

今年の改正税法
完全子法人株式配当の源泉税

今年の改正税法 完全子法人株式配当の源泉税

会計検査院は税制改正を促す為に検査

会計検査院の指摘があったので、税制改正をしました、という事例が増えています。
会計検査院は、平成 29 年度から令和元年度に完全子法人株式等又は関連法人株式等を保有している 1667 社を検査対象法人とし、そのうち、完全子法人株式等又は関連法人株式等に係る受取配当等に対する源泉所得税相当額について所得税額控除を適用したことにより還付金が生じた法人が 1262社あり、それらに支払われた還付金が約8898 億 6092 万円となっており、うち還付加算金が生じていた法人は延べ 888 法人で、その額は 3 億 6563 万円、さらに、うち 423社は、源泉徴収した全額が課税対象外の配当金に係るものだった、と記していました。

制度の趣旨に沿ってない逸脱規定

また、完全子法人株式等に係る配当に源泉徴収をしていたことから、企業側に一時的な資金負担をさせた上で、税務署側に於いて源泉所得税の徴収の事務、還付の事務が生じ、その上、還付加算金の事務と実の国庫負担が生じており、これらは、税の効率的かつ確実な徴収の制度趣旨に沿ったものとは言えず、むしろ逸脱ではないかとのニュアンスの指摘をしました。

国税は素直に対処するが問題アリと

会計検査院の指摘は、令和2年 11 月 10日に内閣に送付された「令和元年度決算検査報告」においてなされており、財務省は、令和4年度の税制改正でこれに応じ、完全子法人株式等と3分の1超所有の株式等とに係る配当について所得税課税対象外とし、その支払いをする法人の源泉徴収事務も不要としました。
ただし、令和4年度の改正だけでは、税収減少になるので次の税制改正で対応策を打出す、としています。

税収減対策にどう対処するのか

確かに、この件の令和4年度の改正は、所得税法での改正のみで、法人税法での改正はなされていません。特に、M&Aで、新たに子会社になった場合などでは、源泉所得税額控除の月割計算により不完全還付になる場合がありますので、その分は確かに税収減に繋がります。
財務省には、税収減対策の秘策がありそうです。それは従来制度の原理的変更を伴う大がかりなものなのかもしれません。

今年の改正税法 相続登記義務化と登録免許税

今年の改正税法
相続登記義務化と登録免許税

今年の改正税法 相続登記義務化と登録免許税

不動産登記法の改正で相続登記義務化

令和6年4月1日以降になると、不動産登記法の改正(令和3年4月 28 日公布)により、相続や遺贈により不動産を取得した相続人にとって、相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられることになりました。相続登記の義務化は、施行日前に相続の開始があったものについても、遡って適用されます。義務違反は 10 万円以下の過料の対象です。

「相続人申告登記」の新設

3年以内に遺産分割が成立しない場合には、相続人が、登記官に対して、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、自らが相続人である旨を、相続登記の申請義務履行期間内(3年以内)に各人が申し出ることで、相続登記の申請義務は履行したものとみなされ、申し出を受けた登記官は職権登記を行います。これを「相続人申告登記」と言い、この場合の登録免許税は、職権登記の非課税の規定の適用と措置されます。
ただし、この相続人申告登記では、持分割合の記載はなく、仮の報告を記載したものとの扱いなので、所有権主張の根拠にはなりません。また、遺産分割成立から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた所有権移転登記の申請をすることも義務とされました。

今年の登録免許税法の改正

なお、次の非課税措置も見直されています。
①相続により土地の所有権を取得した個人が相続登記をする前に死亡したときの当該死亡者を当該土地の所有権の登記名義人とするためにする登記の登録免許税(これは適用期限延長の見直し)
②不動産の価額が 100 万円以下の土地であるときの相続による所有権移転登記又は表題部所有者の相続人が受ける所有権保存登記についての登録免許税(この見直しは令和4年4月1日以後の登記から適用)

所有者不明土地関連はこれから

なお、来年以降に施行とされている所有者不明土地関連の民法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法の改正・創設に伴う新たな税制が、来年以降、目白押しで現れて来ると思われます。