玉田篤志

駐車場賃貸のインボイス

駐車場賃貸のインボイス

駐車場賃貸のインボイス

 駐車場の賃貸借契約は、通常、1年~2年間の契約期間で作成されますが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の運用が始まる令和5年10月1日をまたぐ契約も多いのではないでしょうか。

駐車場賃貸は、消費税課税が原則

 駐車場事業を経営する場合、砂利を敷く、ロープで区画割りする、アスファルト舗装するなど施設を整備して貸し付けます。施設の利用に伴って土地が使用される場合、消費税が課されます。課税事業者は、令和5年10月以降、賃貸借契約書や請求書、領収書等にインボイス(適格請求書)としての要件を備えさせて保存しなければなりません。

 

契約書を通知書で補完

 契約書、請求書等をそのままインボイスとする場合、登録番号、税率10%に対応する税込価額または税抜価額、消費税額等の明記が必要ですが、令和5年10月前に作成する契約書には、これらの項目の記載は求められていません。そもそも、駐車場賃貸では、賃料の収受に際し、通常は請求書や領収証を交付しないでしょう。

 そこで貸主のインボイス交付義務・保存義務(借主のインボイス保存義務)に対応させるため、請求書にかえて、駐車場事業者は、インボイス番号(登録番号)等を記載した通知書を別途作成して契約書を補完させて借主に交付すること、領収証にかえて、借主は銀行の支払記録と賃貸借契約書や通知書で補完する方法が国税庁のインボイス特設サイトに案内されています。

 

口座振替と口座振込

 口座振替の場合、借主は、インボイス番号の通知書で補完された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の日付が分かるもの)を併せて保存することにより、インボイス保存義務が満たされます。

 口座振込の場合は、借主は、インボイス番号の通知書で補完された契約書とともに銀行の発行する振込金受取書を併せて保存することにより、インボイス保存義務が満たされます。

事務所賃貸、税理士、社労士も取扱いは同じ

 なお、仲介会社の作成する令和5年10月以降の賃貸借契約にインボイス番号等の記載がない場合も上記の通知書で補完する対応が必要になります。また、この取扱いは、事務所賃貸はもちろん、税理士、社労士など士業が顧問先と締結する契約についても同様の対応となります。インボイス制度開始前に業務フローを確認しておきましょう。

非課税期間が無期限に 新NISA のしくみ

非課税期間が無期限に 新NISA のしくみ

非課税期間が無期限に 新NISA のしくみ

2024 年 1 月から新 NISA がはじまる 

 NISA とは、株式・投資信託等の配当・譲渡益等が非課税対象となる個人投資家のための税制優遇制度です。

 

 令和 5 年度税制改正にて、2024 年 1 月から、非課税期間が無期限となり、つみたて投資枠(旧つみたて NISA)と成長投資枠(旧一般 NISA)の併用が可能となります。また、年間非課税枠や非課税保有限度額が増加しました。

 2023 年までの旧制度では制度の併用はできず、つみたてか一般かを選ぶ必要がありましたが、2024 年からの NISA の場合は、非課税保有限度額を共有するものの、制度の併用自体はできるようになりました。

 

売却で非課税保有限度額の復活

 買い付けした金融商品を売却した場合、取得価額分の非課税保有限度額が復活します。例えば限度額いっぱいの 1,800 万円まで NISA を利用している場合、そのうちの取得価額 100 万円の商品を売却すると、100 万円分は限度額が復活します。

 ただし、限度額が復活するのは「売却した翌年」となるので注意が必要です。

 

ロールオーバーは廃止

 非課税期間が無制限となったため、非課税期間が過ぎた金融商品を、次の非課税投資枠に持ち越すロールオーバーは廃止となります。また、2023 年中までの旧 NISA 制度からのロールオーバーもできない仕組みとなっていますが、2023 年までの旧 NISA については、新 NISA 制度の非課税保有枠を圧迫しない別建てとなります。なお、旧 NISAから新 NISA への切替手続きは不要です。

 まだ NISA をはじめていない方で、新 NISAの非課税保有限度額以上の余剰資金がある場合は、今年中に NISA 口座を開設することも検討してみましょう。 

 

相続の基本 遺産分割協議の流れ

相続の基本 遺産分割協議の流れ

相続の基本 遺産分割協議の流れ

遺産分割協議の流れ

 遺産分割協議は、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。

 遺言書がある場合は、原則遺言書通りに遺産分割をしますが、遺言書にない遺産については分割協議の対象となります。

 遺産分割協議は相続人全員の参加が必須です。参加すべき相続人を調査する必要がある場合、戸籍資料などから確認します。

 遺産分割の対象になる相続財産を調査・把握する必要もあります。遺産が後から出てきた場合、遺産分割をやり直すことになる場合もありますが、分割協議書に後から出てきた遺産の取扱いを記載しておけばその通りに扱うことになります。

 遺言書の有無、相続人の確認、遺産分割の対象になる財産の把握を終えた後、遺産分割の協議を行い、合意内容を記載した遺産分割協議書に相続人全員が署名捺印し、1通ずつ所持すれば遺産分割協議は終了です。

 遺産分割には法律上の期限はありませんが、相続税の申告は「相続の開始を知った日の翌日から 10 か月以内」となっているため、それまでに遺産分割を完了しておくとスムーズです。


分割ができなかった場合の相続税申告

 10 か月以内に遺産分割が終わらない場合は、暫定的に法定相続分による相続税申告を行います。後に修正申告や更正の請求を行うことになりますが、小規模宅地等の特例や配偶者控除等の適用を受けるためには原則期限内申告をしなければいけません。期限後に優遇措置を受けるためには、暫定的な申告時に「申告期限後 3 年以内の分割見込書」を提出する必要があります。


遺産分割協議で決まらなかったら

 遺産分割協議が決裂してしまった場合、家庭裁判所で調停が行われます。裁判官が提示する調停案に相続人全員が同意すれば調停は成立します。

 遺産分割調停も不成立になった場合は、家庭裁判所が審判を行います。法定相続分を基準としますが、相続人から提出された主張や資料を総合的に考慮して、遺産分割の方法は決定されます。 


相続の基本 遺言書と遺留分

相続の基本 遺言書と遺留分

相続の基本 遺言書と遺留分

自分の財産をどうするのか書き残す

 遺言書は自分の財産を誰に、どれだけ残すのかという意思を書面にしておくものです。遺言には大きな効力があり、遺言書さえあれば、遺産は基本的に遺言書通りに分割されます。スムーズに相続ができるようになり、遺産の分け方をめぐっての相続人の争いも少なくなるので「争続にならないために」といったキャッチコピーでお勧めされることも多いようです。

3種類の遺言書

 遺言書には 3 つの種類があります。

①自筆証書遺言:自分で記述し、証人が不要、保管も自分でできるので手軽に作成でき、費用がかからないのがメリットですが形式に厳格なルールがあるため、無効になりやすいデメリットがあります。また、自筆証書遺言の保管者や発見した相続人は遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりませんので、相続人にとっては若干の負担となります。ただし、令和 2 年 7 月から運用が開始された法務局への自筆証書補完制度を利用した場合は検認の必要はなくなります。

②公正証書遺言:公証役場に依頼し、公証人が記述する遺言書です。公証役場で原本を補完してくれるので、紛失等のリスクが少なく、検認も不要です。また、公証人に自宅や病院に出向いてもらって作成ができるため、文字を書けない状態でも作成が可能です。ただし、証人が 2 人必要となり、自筆証書遺言に比べると作成費用や手間がかかります。

③秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で認証してもらえる遺言書です。遺言書があるという事実を確実にするのが目的です。遺言の内容をあまり知られたくない場合等に使うようですが、無効になりやすい、紛失や隠蔽、発見されないリスクがあり、あまり使われていません。


遺言は遺留分に気をつけて

 遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことができない遺産の一定割合のことです。

遺留分があるのは、配偶者、子(代襲相続人含む)、直系尊属(被相続人の父母、祖父母)で、兄弟姉妹は遺留分を有しません。 


スマホアプリ納税のメリット・デメリット

スマホアプリ納税のメリット・デメリット

スマホアプリ納税のメリット・デメリット

紆余曲折のスマホアプリ納税開始

 令和 4 年 12 月 1 日から「国税スマートフォン決済専用サイト」(スマホ専用)において、スマホアプリを利用した納税ができるようになりました。スマホアプリとは、いわゆる「〇〇Pay」と呼ばれる決済アプリです。現状利用可能な Pay 払いは、PayPay・d 払い・au PAY・LINE Pay・メルペイ・AmazonPay の 6 種類です。

 本来でしたら令和 4 年 1 月から導入される予定でしたが、コロナ禍の影響で、決済専門サイトを運営する事業者の選定が間に合わず、延期になっていました。紆余曲折ありましたが、何とか今年の確定申告期間に間に合わせたといったところでしょうか。


スマホアプリ納付のメリット

 同様に国税の支払いができるクレジットカード納付については手数料がかかりますが、スマホアプリ納付の利用については、決済手数料がかかりません。

 e-Tax 経由で直接銀行口座から引き落としで納付する「ダイレクト納付」に比べると、必要な入力事項も簡易で、〇〇Pay を普段使いしている方にとっては支払い手続きも簡単なものになっています。また、e-Taxの受信通知や「確定申告書等作成コーナー」で出力される 2 次元コードを使って決済サイトにアクセスすると、納付区分番号・納付先税務署・税金の種類・課税期間・納付税額がすでに入力された状態になるため、さらに簡単に納付ができます。


スマホアプリ納付のデメリット

 スマホアプリ納付は 1 回の納付額上限が30 万円であるため、それ以上の納付を行うためには複数回に分けて手続きを行う必要があります。

 また、各種 Pay 払いには独自に支払い上限額が設定されていて、例えば PayPay だと過去 24 時間で最大 50 万円、過去 30 日間で200 万円が支払い上限(残高使用時)、au PAYだと 1 日あたり 50 万円の支払い上限が設定されています。この支払い上限にかかってしまうと、Pay 払い自体がしばらくできなくなってしまうことになり、納付どころか普段使いもできなくなってしまいますので注意が必要です。あまり大きな額の納付を扱うことは想定していない支払い方法なのでしょうか。 


マイナンバーカード健康保険証に寄せられた質問

マイナンバーカード健康保険証に寄せられた質問

マイナンバーカード健康保険証に寄せられた質問

マイナンバーカードと健保証の一体化

2022 年 10 月デジタル庁よりマイナンバーカードと健康保険証を一体化し、紙やプラスチックの保険証は 2025 年秋をめどに廃止する方針が打ち出されました。

デジタル庁に寄せられた意見や要望で主だった内容を「よくある質問」として公表しています。質問と回答の一部を抜粋します。利用上の不安を払拭するものです。

①マイナンバーカード取得は任意ですか?⇒国民の申請に基づくもので変更ありません。取得しなくても保険診療受診できます。

②マイナンバーカード保険証を使える医療機関が少ない。 ⇒2023 年 4 月以降すべての医療機関・薬局でマイナンバーカード保険証を使えるよう勧めています。

③保険証と一体後、カードを落としたりなくしたりしたら再発行まで使えませんか?⇒紛失などは再発行手続きに現在は受け取りまで 1~2 か月かかっているところを 10日程度で取得できるよう検討中です。

④マイナンバーカードは「人に見せない」、「大切に保管」と言っていたのに持ち歩いてもいいのですか? ⇒持ち歩いて使ってください。落とした場合でもパスワードがわからないと使用できません。IC チップは無理やり読み込みをすると壊れ悪用できないようにしています。

⑤マイナンバーを人に見られても大丈夫ですか? ⇒マイナンバーを使う場面では顔写真で本人確認することになっています。オンライン利用でも電子証明書を利用します。マイナンバーだけ、名前とマイナンバーだけでは情報は引き出せません。

⑥マイナンバーカードを落としたりして税や年金・医療などの情報流出はないのですか? ⇒マイナンバーカードの IC チップの中身は氏名、住所、生年月日、性別、顔写真、電子証明書、住民票コードで、税、年金、医療などの情報は記録されていません。

⑦マイナンバーから紐付けされた個人情報は流出しませんか? ⇒マイナンバーの利用で個人情報を見ることは各々の行政担当職員しかできないようになっています。マイナポータルサイトで行政とのやり取りが記録されるので確認できます。

以上のように国民の心配事には答えていますが、紛失、システム故障、今後個人の情報を統制監視する動き等もないとはいえず皆が必ずしも望んではいない中で不安はつきません。 


令和5年度税制改正大綱 納税環境整備編

令和5年度税制改正大綱 納税環境整備編

令和5年度税制改正大綱 納税環境整備編

 納税環境整備では、主に電子帳簿保存制度の要件緩和と無申告に対する加算税についての改正が行われます。

優良な電子帳簿の範囲明確化

 電子帳簿は、訂正・削除履歴要件、相互関連性要件や検索要件など優良な電子帳簿の要件を満たして記帳、保存する場合、過少申告加算税の5%軽減措置や青色申告特別控除を65万円とする優遇措置を受けられます。この優良な電子帳簿の範囲として、仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳などの帳簿が明示されます。

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用されます。

 

電子データの保存要件を緩和

(1)検索要件を不要とする対象者の拡大

電子データについて、検索要件の全てが不要とされる保存義務者の範囲は、判定期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の売上高が5,000万円以下(現行は1,000万円以下)で税務職員の質問検査権に基づく取引記録のダウンロードにより出力書面を提示できるものに緩和されます。

(2)相当な理由あれば保存要件適用を猶予

請求書、領収書などを電子データで授受する場合、これまで2年間の宥恕措置のもと令和5年12月31日まで出力書面による保存が認められていました。しかし、令和6年1月1日以降についても、宥恕措置はなくなるものの、相当の理由があり、かつ、質問検査権に基づく取引記録のダウンロードや出力書面の提示等の求めに応じることができる場合は、保存要件にかかわらず、電子データを保存できることとされます。

上記の改正は、地方税についても同様の措置として、令和6年1月1日以後に行う電子取引の記録について適用されます。

 

無申告には加算税が重くなります

高額の所得を得ていながら無申告、あるいは連年での無申告などへの措置として、無申告加算税の割合が300万円を超える部分は30%(現行15%、50万円を超える部分は20%)に引き上げられます。

また、期限後申告等に係る年度の前年度、前々年度において無申告加算税又は重加算税を課されたことのある場合や賦課決定すべきと認められる場合には、さらに10%を加重する措置が適用されます。地方税の不申告加算金についても同様の取扱いです。

令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税、地方税に適用されます。

 

令和5年度税制改正大綱 国際課税編

令和5年度税制改正大綱 国際課税編

令和5年度税制改正大綱 国際課税編

国際課税ではBEPSプロジェクトの合意により、市場国への新たな課税権の配分(第1の柱)とグローバル・ミニマム課税(第2の柱)に即した制度改正が順次、行われます。このうち、令和5年度税制改正では、グローバル・ミニマム課税が先行します。

 

グローバル・ミニマム課税への対応

 軽課税国に子会社を持つ日本の親会社で、年間総収入金額が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上の多国籍企業が対象となり、子会社の軽課税国の実効税率が15%を下回る場合、最低税率15%に至るまで、その差額が親会社に課税されます(所得合算ルール)。なお、有形固定資産と支払給与の一定割合は、所得合算ルールの計算対象から除外されます。

所得合算ルールの法制化のため、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)及び特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)が創設されます。その際、法人税額と地方法人税額の比率が907対93となるよう制度が構築されるとともに、事務手続きを簡素化する措置が導入されます。

令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度(連結財務諸表の作成期間)から適用されます。

 

外国子会社合算税制は適用免除要件を緩和

外国子会社合算税制は、外国子会社を利用した租税回避防止のため、一定の要件を満たす外国子会社が留保した所得相当額を日本の親会社の所得とみなして合算課税する制度です。

外国子会社のうち、ペーパーカンパニーやキャッシュボックスなど日本の税源を侵食するものは、特定外国関係会社として区分され、外国子会社合算課税の対象となりますが、グローバル・ミニマム課税の導入による追加的な事務負担を軽減するため、適用が免除される租税負担割合が27%以上(現行は、30%以上)に引下げされます。

令和6年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

※「キャッシュボックス」とは、総資産額に対する剰余金の配当、受取利子など受動的所得の金額の合計額の割合が30%を超える外国関係会社をいいます。

 

非居住者カジノ所得の非課税制度の創設

 令和3年度税制改正で令和4年度以降の検討事項とされていたカジノ所得に対する税制について、非居住者の令和9年から令和13年までのカジノ所得には、所得税を課さない措置が創設されます。

 

令和5年度税制改正大綱 個人所得課税編

令和5年度税制改正大綱 個人所得課税編

令和5年度税制改正大綱 個人所得課税編

個人所得課税では、「資産所得倍増プラン」をもとに、NISA制度やスタートアップ支援制度を中心に見直しが行われます。

NISAは投資枠の拡充と制度を恒久化

新たなNISA制度では、投資枠が「つみたて投資枠」として、年120万円(これまで年40万円)、「成長投資枠」として年240万円(これまで年120万円)、併用を可能にして、合計で年360万円、累計1,800万円(うち成長投資枠の累計は1,200万円)まで大幅に拡充されます。非課税となる保有期間は、無期限とし、制度の恒久化が図られます。令和6年1月から適用されます。

 

スタートアップへの再投資に非課税措置

スタートアップへの資金供給を強化するため、保有株式の譲渡益を元手にして、創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップに再投資を行った場合、20億円を上限に株式譲渡益に課税しない制度が創設されます。

また、ストックオプション税制の権利行使期間の上限を15年(現行10年)に延長し、スタートアップの事業を後押しします。

 

高所得者の税負担を適正化

税負担の公平化の観点から、極めて高い水準の所得者に対して、基準所得金額から3.3億円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、基準所得税額を超過する場合には、その超過した差額について追加的に申告納税を求めます。令和7年分以降の所得税から適用されます。

相続空き家の特例は適用要件を改正

相続空き家の特例は、建物譲渡の翌年2月15日までに耐震基準に適合させるか、取壊し等を行えば適用できるようになります。また、建物、敷地の相続人が3人以上の場合、特別控除額は2,000万円とされます。令和6年1月1日からの譲渡に適用されます。

 

特定非常災害損失の繰越控除期間を5年に

特定非常災害により生じた損失について、雑損失や純損失の繰越期間を例外的に5年(現行3年)に延長します。

 
 

令和5年度税制改正大綱 資産課税編

令和5年度税制改正大綱 資産課税編

令和5年度税制改正大綱 資産課税編

資産移転時期の選択に中立的な税制の構築

 被相続人の高齢化に伴い、個人金融資産などの資産が高齢者に偏在するなかで、若年層への資産移転を図るとともに、相続や贈与に伴う税負担の違いが資産移転の時期の選択にできるだけ影響しないようにするため、資産課税の見直しが図られます。

 

相続時精算課税贈与は利用しやすく改正

 相続時精算課税制度では、特別控除額2,500万円とは別に、課税価格から暦年で110万円の基礎控除を受けられるようになります。また、相続財産の価額に加算される相続時精算課税贈与額は、基礎控除後の残額となります。これは、暦年贈与課税と同様に、少額贈与については課税せず、事務負担の軽減をはかるものとなっています。

また、贈与を受けた土地・建物が災害により被害を受けて資産価値が下落した場合、相続税の課税価格に加算される財産の価額は、被害を受けた部分の金額を控除した額となります。いずれも、令和6年1月1日以後の贈与から適用されます。

 

暦年課税贈与の加算期間は、7年に延長

 暦年課税贈与は、相続開始前7年間(現行は、3年間)に受けたものが、相続税の課税価格に加算されるようになります。この場合、延長された4年間の贈与は、贈与を受けた財産の合計額から100万円を控除できます。令和6年1月1日以後の贈与から適用となります。

 

教育資金、結婚・子育て資金贈与は延長へ

 

 教育資金の一括贈与に係る非課税制度、結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度は、富裕層に大きな節税メリットがあり、資産格差を固定化させる一方、近年は利用件数が低迷していました。政府税調ではこれらの制度の廃止または縮小の意見も多く出されていましたが、税制改正大綱では、節税的な利用につながらないよう、一部改正の上、教育資金贈与の非課税制度は、適用期限を3年延長、結婚・子育て資金贈与の非課税制度は、2年延長となりました。

 

マンション評価は適正化を検討

 

 この他、閣議決定前に公表された自民党・公明党の税制改正大綱(R4.12.16)では、マンションの財産評価について、マンションの市場価格と財産評価基本通達に基づく相続税評価額との間に大きな乖離が見られることから、納税者の予見可能性を確保するべく、相続税法の時価評価のもと、適正化を検討する方針が示されています。