玉田篤志

IT 化との違い、わかりますか? DXって何のこと?

IT 化との違い、わかりますか?
DXって何のこと?

IT 化との違い、わかりますか? DXって何のこと?

デラックスではございません

去年あたりからインターネットや書籍等で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を目にする機会が多くなりました。「なんかデジタル通信とかパソコンとかでアレするやつでしょ」という認識の方も多いのではないでしょうか。
そもそも広義の DX とはスウェーデンの大学教授、エリック・ストルターマン氏が2004 年に提唱した「デジタル技術が人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」という考え方を起源とする概念です。ビジネスで DX と言う場合は、大まかには「AI や IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用し、ビジネスモデルや組織体制を抜本的に改革することで、競争優位性の確立や外部環境への適応を目指す」という意味になります。
以前の「IT 化」は業務効率化やコスト削減を目的とした IT・デジタル技術の導入のことです。DX はさらに会社運営へ踏み込み、デジタル技術を手段としてビジネスモデルや組織など、より広い範囲の変革を促すものとなります。

DX 投資促進税制が誕生した背景

国は令和 3 年度税制改正で「DX 投資促進税制」を創設し、民間の DX 化の後押しを行っています。
経済産業省の報告によると、今のままでは「IT 人材の不足」と「古い基幹系システム」の2つが障害となり、2025 年から 2030年までの間に、年間で最大 12 兆円の経済損失が生じる可能性があるとしています。この損失はもとより、世界との競争力を維持するため DX が当たり前となる「ポストデジタル時代」に乗り遅れるのは致命的と考えているようです。

認定されれば税額控除 or 特別償却

DX 投資促進税制では、データ連携(共有)・レガシー回避・サイバーセキュリティ・ビジネスモデル変革・全社戦略等の要件を満たす計画が認定されれば、その計画に基づいて行う設備投資のうち、ソフトウェア・繰延資産・機械装置・器具備品について、税額控除や特別償却が受けられる制度です。
「あまりデジタルに関係のない分野だから」とこの手の話題を避けてきた方もいらっしゃるかと思いますが、この機会に一度検討してみてはいかがでしょうか。

持株富裕層の節税対策

持株富裕層の節税対策

持株富裕層の節税対策

比率 3%以上の大口個人株主

株式の配当金に対する課税は、一般的には、源泉徴収選択特定口座を利用した申告不要源泉分離課税で、20.315%での税負担(所得税・復興税・住民税)で済みますが、上場企業の持株比率 3%以上の大口個人株主については、20.42%(住民税なし)の源泉徴収をされた上で、総合課税での申告となります。課税所得が 4000 万円以上の部分は住民税を含めて 55.945%となります。一般の 20.315%の分離課税での税負担と比べてかなり高負担となります。

総合課税の場合の配慮は微少

ただし、総合課税の場合は、法人税での受取配当等の益金不算入制度と同様に二重課税緩和の趣旨から、配当控除という制度が用意されています。課税所得金額が 1000万円以下の部分に該当する配当所得には、12.8%(所得税 10%、住民税 2.8%)、1000万円超の部分に該当する配当所得には、6.4%(所得税 5%、住民税 1.4%)を控除することができます。
でも、全体から見た割合は小さいため、それほど大きな効果はありません。

3%以上大口個人株主の節税対策

それで、3%以上の大口個人株主は、個人名義ではなく資産管理会社を設立して、3%以上部分の株式を法人名義にする、という選択を多くの場合行っています。
そうすると、個人所有部分は 20.315%の分離課税での申告不要にすることができ、法人所有部分は、持株比率 1/3 超なら 100%益金不算入、持株比率 5%超~1/3 以下なら50%益金不算入、持株比率 5%以下でも20%益金不算入となるので、個人の配当控除より有利です。その上、役員報酬等の形での家族への所得分散ができ、法人税の負担も相当に圧縮可能です。

法人化後の更なる節税プラン

逆に、税負担の少ない法人に財産が集積し、資産の中の株式の割合が 50%以上だと、相続などの時に、しっかり財産課税されてしまうので、借入金等により賃貸不動産その他の資産を取得して、50%未満化策を講ずるケースも珍しくありません。
また、法人で、含み益の大きい財産を譲渡すると、法人での約 33%の課税が行なわれ、さらにそれを個人の所得となる形で移転すると、2 段階での課税となります。これを回避するために、最近は、適格会社分割による会社の複数化により、M&Aでの会社売却を準備する方法で、20.315%の分離課税化する案も考えられています。

不動産登記簿とは!

不動産登記簿とは!

不動産登記簿とは!

不動産の仕事に携わっている人以外は、不動産登記簿は不動産を購入するとき、あるいは売却するとき以外、あまりなじみがありません。
ですが、不動産登記簿は、私たちの不動産に関する情報(どこにどんな不動産があり、それが誰のものなのか等)を一般に公開し、誰でも閲覧できようになっています。

(1)不動産登記の役割

不動産登記は、不動産の「物理的状況」に関する情報(その不動産の所在地、現況、面積、種類、構造など)と「権利関係」に関する情報(その不動産の所有者は誰で、いつ、どんな原因で所有権を取得したのか、また、誰がその権利の一部につき留保しているかなど)を登記簿に公示して「不動産取引の安全」と「円滑化」を図るために設けられた制度です。
不動産登記簿には、土地の登記簿と建物登記簿の2種類あり、土地については一筆(1区画)ごとに、建物については1個ごとに一用紙を備えることになっています。

(2)登記簿は3部構成

一つの物件に対する登記簿は、「表題部」、「権利部」に分かれ、さらに、「権利部」は「甲区」と「乙区」に分かれています。つまり、表題部、権利部「甲区」、権利部「乙区」の3部で構成されています。
表題部では、前述した不動産の「物理的状況」を開示しています。すなわち、土地であれば、「所在地」、「地目(土地の現況)」、「地積(土地の面積)」など、一方、建物であればその建物の「種類」、「構造」、「床面積」などです。
また、権利部「甲区」と権利部「乙区」では、前述した「権利に関する事項」を開示しています。このうち「甲区」には所有権に関する事項、例えば、住宅を購入したときの「所有権移転登記」、家を建てた時の「所有権保存登記」が記載されます。一方、「乙区」には所有権以外の権利に関する事項、例えば、金融機関による「抵当権設定登記」、土地利用者による「地役権設定登記」などが記載されます。

(3)登記の優先劣後

同じ区の権利間(甲区間同士の権利、乙区間同士の権利)の優先劣後は、原則として順位番号の早い方が優先します。
また、異なる区(甲区と乙区)における権利の優先劣後は、受付番号の早い方が優先します。

コロナ禍におけるメンタルヘルス

コロナ禍におけるメンタルヘルス

コロナ禍におけるメンタルヘルス

ラインによるケアと忙しい管理職

企業におけるメンタルヘルス対策の一つに、管理監督者が行う「ラインによるケア」があります。これは、働く人が自身のこころの不調に対応できないでいる時、管理監督者の「気づき」から始まります。
たとえば、部下の様子を見ていて、「元気がなさそうだな」と気づくことです。以前と比べて遅刻が増えているとか、服装に乱れがあるとか、言動などの変化からわかることもあります。この「いつもと違う」というところに、早く気付くことが大切になります。
しかし、管理監督者には、業務のマネジメントや部下の評価など求められることが非常に多くあります。プレイングマネージャーの場合は、部下のケアまでなかなか時間が取れないということもあるでしょう。
リモートワークが推奨されている環境下では、様子を見ることが難しくもあります。

ケアの工夫と、コロナ禍における実践例

ではどうしたらよいのでしょうか。3月に実施された「令和2年度職場のメンタルヘルスシンポジウム」は、ラインによるケアの実践をテーマに行われました。視聴動画がポータルサイト「こころの耳」で公開されています。(令和2年度「ラインによるケアの実践」|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp))専門家による解説では、「ラインによるケア」を効果的に行うには、「管理監督者の経験と知恵」を活かした良いサイクルをつくること、そのための研修の実施方法について、知ることができます。
企業からの実践報告では、管理監督者が実際に行っている事例や、コロナ禍での取組を聞くことができます。たとえば、リモートワークでも部下が相談しやすいように、「あらかじめ対応可能な時間や方法を伝えておく」ことで、コミュニケーションの向上を図っているといった、現場の工夫です。
コロナ禍においては、既存の知識や対策だけでは対応できないこともあります。社員の声に耳を傾け、社員の状況をよく把握すること。現場の工夫を吸い上げ、広く共有していくことが、大切なようです。

いまいち弱火の新制度 セルフメディケーション税制の今

いまいち弱火の新制度
セルフメディケーション税制の今

いまいち弱火の新制度 セルフメディケーション税制の今

覚えていますか、この制度

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、健康の保持増進及び疾病の予防への一定の取組を行っている方が、自分、もしくは生計を一にする親族のために特定の医療品購入費を支払った場合に、医療費控除を受けることができる制度です。
控除が受けられる金額は、購入費用から12,000 円を差し引いた金額で、控除される最高額は 88,000 円、つまり総額 10 万円までの購入費で控除が受けられる、「医療費控除のミニ版」といった制度です。

利用者は横ばいになっている

令和 3 年 6 月に国税庁が発表した資料を見てみると、令和 2 年分申告ではセルフメディケーション税制を利用した人は 2.5 万人となっていて、申告をした人が 2,249 万人とのことなので、全体の 0.1%程度の利用率となっています。ちなみに通常の医療費控除を利用した方は 722 万人となっています。併せて過去年度分の数字も出ていますが、3.0 万人、2.6 万人、2.6 万人と見事に横ばいです。
日本一般用医薬品連合会などが実施した16 万人に及ぶ調査によると、全体の 72.1%がセルフメディケーション税制を認知はしているものの、「利用したい」とする方は12.1%となっており協会も「現状のままでは利用拡大は見込みにくい」としており、「全 OTC 医療品に対象拡大」「申告手続き簡素化」「購入費用の下限撤廃」等を提案しています。

令和 4 年分以後の所得税からは微改正

令和 3 年分の所得税で適用は終了予定であったセルフメディケーション税制は、令和 3 年度税制改正で、適用期限が 5 年延長されました。さらに「対象となる医薬品をより効果的なものに重点化して、手続きの簡素化を図る」とされています。
厚生労働省では、セルフメディケーション推進に関する有識者検討会を行っており、採用すべき薬効、廃止すべき薬効等の検討を進めています。
この制度は本来「医療費の削減を目指した方策」ではあるのですが、利用者の数を見ると、上手くいっているとはいえないのが正直なところではないでしょうか。

介護保険料徴収のルール

介護保険料徴収のルール

介護保険料徴収のルール

40 歳になったら介護保険料徴収

介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みです。保険料は公費と 65 歳以上の第 1 号被保険者、40 歳から 64 歳までの医療保険に加入している第 2号被保険者からの介護保険料で支えられています。
健康保険の被保険者であり市区町村に居住している 40 歳から 64 歳までの第 2 号被保険者の方は健康保険料とともに納めます。
介護保険料は、40 歳に達したときから徴収が始まります。40 歳に達した日は 40 歳の誕生日の前日です。その日が属する月から保険料が徴収されます。社会保険料の天引きは、当月支払いの給与から控除できるのは前月分となっている(例外として月末退社の場合は 2 か月徴収可)ので、毎月の給与から徴収する介護保険料の天引きは健康保険料と同様の扱いになります。徴収の終了は 65 歳に達する月の属する月の前月分までです。

賞与を支払ったときは徴収対象になる

介護保険料は賞与からも徴収します。
例えば 40 歳に到達する前に賞与が支払われた後、同月に 40 歳に到達したときは 40歳に到達した月から徴収するので天引きしておかなくてはなりません。
反対に 65 歳になると第 1 号被保険者になるので、介護保険料は 65 歳に達した日の属する月の前月分まで給与から天引きします。65 歳に達した日の属する月分は年金からの徴収です。つまり 65 歳に達した月は給与から徴収しません。賞与に対しても同様なので 65 歳に達した月に賞与が支給されても徴収はありません。

被扶養者が 40 歳の場合どうなるのか

健康保険と同様に扶養家族が 40 歳になっても介護保険料は徴収しません(国保は各人ごとに徴収される)。
健康保険組合によっては健康保険の第 2号被保険者でない場合でも、被扶養者が 40歳以上で第 2 号被保険者である場合は健康保険料と一緒に介護保険料を徴収する組合もあります。

令和 2 事務年度の 税務調査事績

令和 2 事務年度の
税務調査事績

令和 2 事務年度の 税務調査事績

令和 2 事務年度の調査数はさらに減

国税庁は毎年 11 月ごろに事務年度についての法人税等の調査事績の概要を公表しています。事務年度とは国税庁の人事異動が7月なので、7月から翌年6月迄をいいます。今年発表された令和 2 事務年度(令和2年7 月から令和3年6 月まで)においては、コロナ禍の真っ最中ということもあり、法人税・消費税の実地調査件数は 2.5 万件となり前年対比 32.7%となりました。
令和元事務年度も、すでにコロナの影響が出始めており、コロナ禍でなかった平成30 事務年度は 9.9 万件ということですから、平時の 1/4 くらいの調査件数だった、ということになります。

1 件あたりの追徴は増加

今年の発表では、調査 1 件あたりの追徴税額については前年と比べ 249%の 780.6万円となりました。調査件数は大幅に減りましたが「コロナ禍で調査は憚られるが、確実に大きく取れるところには行っている」ということは見て取れます。調査 1 件あたりの追徴税額は平時だった平成 30 事務年度と比べても大幅に増加しています。

簡易な接触は引き続き継続

「簡易な接触」と表現される書面や電話による連絡、資料の提出依頼や来署依頼による面接等で、税務署が納税者に対して自発的な申告の見直しなどを要請する手法については、前年対比 156.5%と、引き続き件数を増やしています。申告漏れ所得金額や追徴課税の額については実地調査には遠く及びませんが、それでも過去年から確実に金額を増やしているようです。

これからはどうなる?

「すでに調査依頼がいくつかある」という税理士先生もいらっしゃるようで、若干コロナが落ち着いている今、調査件数は増えているように感じられます。
また、実地調査については「なるべく接触時間を短くするため、資料を預かって税務署内で検討します」といった措置が取られることも多くなったようです。

活躍できる人を探す人材適性診断

活躍できる人を探す人材適性診断

活躍できる人を探す人材適性診断

採用の悩みには適性検査が有効です

採用でこんな悩みはありませんか?
① 優秀な人材を採用したい
② 面接では人当たりがよさそうに見えたのに性格に難があった
③ せっかく採用したのにすぐ退職してしまった
④ 厳しくしたつもりはないがメンタル不調で休職してしまった
⑤ 欲しい人材からの応募がない
⑥ 応募は来るが決め手に欠ける
⑦ 紹介会社頼みの採用になっている
⑧ 採用費用がかさんで気が重い

適性検査を導入していますか?

皆さんの会社では採用時に適正検査を行っていますか? 適性検査は合否判断のみならず入社後の移動や共同事業のグループで活動の際の配置、適正などに使えるものです。新卒採用のみならず中途採用であっても適性検査からわかることは相当あります。性格やくせ、考え方など簡単には変わるものではないからです。特に新卒では仕事の履歴がない(アルバイトはあるかしれないが)ので、少ない材料の中で相手を見抜く必要があります。検査が本人の隠れた性格を見つけるのに役立ちます。既存社員においてもメンタル面、チームワーク、人員配置、仕事の進め方やコミュニケーション等の際に役に立ちます。

適性検査でわかることと生かし方

ベテランの人事の方でも 1 時間程度の面接では相手の人となりは完全にはわかりません。検査では面接ではわからない性格や本性を知ることも可能です。中途採用においては既存のメンバーと合うかどうかを知ることができます。既存の社員に適性検査を受けてもらうことでどういう人材が自社に合う人材なのか把握でき、欲しい人材、活躍してほしい人材をつかむことができます。次のようなことがわかります。
1. 性格や個性  2.興味・価値観  3. 社会性  4.意欲・やる気 等
内容は適性検査の種類によっても違いますし代行業者もあります。ネットにも出ていますが自社で使いこなすまでは少し練習が必要かもしれません。
ただ、検査結果を盲信することなく人の目で見る判断も重要です。

青色申告 65 万円控除と 電子帳簿保存法

青色申告 65 万円控除と
電子帳簿保存法

青色申告 65 万円控除と 電子帳簿保存法

e-Tax しないが 65 万円控除は受けたい

令和 2 年分以後の所得税について、青色申告特別控除の適用要件が改正され、65 万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、それまでの要件に加えて、e-Tax による申告か、電子帳簿保存を行うことが必要になりました。
個人事業主の方の中には、「e-Tax ができない」という方がいらっしゃるかもしれません。今回は、電子帳簿保存で 65 万円控除を受ける場合の手続きを解説してみます。

改正もあるがあまり変わりなし

電子帳簿保存法については、令和4年1月 1 日から適用される改正があり、これまで電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担軽減のために、不要とされました。
ただし、この「事前承認不要」はあくまで電磁的記録による保存を開始する場合の話で、65 万円の青色申告特別控除の適用を電子帳簿保存によって受けたい場合は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を提出する必要があります。
また、一般的な電子帳簿保存については正規の簿記の原則に従って記録されるものであれば、最低限の要件を満たす電子帳簿についても電磁的記録による保存が OK となったのですが、65 万円の青色申告特別控除の適用を受ける場合については「優良な電子帳簿」の要件である、検索要件や帳簿間の相互関連性の確認など、より高度な措置が必要となります。

過少申告加算税 5%軽減のため?

電子帳簿保存法に適合する優良な電子帳簿を作成するのに比べ、インターネット環境とマイナンバーカードくらいの準備で e-Tax はできます。65 万円の青色申告特別控除の適用を受けるための選択としては、e-Tax を行う方が圧倒的に楽です。
青色申告特別控除の要件とは別に、今回の改正で「優良な電子帳簿」の保存要件を満たしていれば、記録された事項についての申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が受けられるので、そちらを受けようとする場合には申請を行う、くらいの気持ちで良いのかもしれません。

消費税の課税の対象 宇宙空間にある人工衛星の譲渡

消費税の課税の対象
宇宙空間にある人工衛星の譲渡

消費税の課税の対象 宇宙空間にある人工衛星の譲渡

民間宇宙ビジネスは急成長分野

米企業家のイーロン・マスク氏が設立したスペースX社は、民間企業の製造・所有する宇宙船を用いて、初の国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に成功しました。
人工衛星の打上げ費用も2億ドルはかかると言われていた時代から、近年では 6,000万ドルまで削減。ホリエモンこと堀江貴文氏も「世界一低価格で便利なロケット」の開発を目指すと、宇宙ビジネスに参入しています。動向が非常に気になる事業分野となってきましたね。

20 年前に人工衛星の消費税の取扱い?!

税理士が用いる判例データベース TAINSには、判例・条文の他、情報公開法に基づく開示請求により入手した様々な行政文書が掲載されています。これを見ると、たまに面白いものに当たることあります。
今回は、平成 12 年の国税庁の消費税課の資料で「人工衛星の輸入、打上げ、宇宙空間における譲渡」を取り上げましょう。
内容は、外国法人A社が保有する人工衛星を、日本法人B社を輸入者として日本に輸入。その人工衛星の打上げを委託された日本法人C社が日本から衛星を打上げ。その後、衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認後、A社からD社に人工衛星を譲渡したというシチュエーション。これら①輸入・②打上げ・③宇宙空間における譲渡の消費税の取扱いが記されています。

宇宙空間にある人工衛星を譲渡したら?

それぞれの取扱いは、次のように示されています。
①人工衛星の輸入取引
輸入名義人のB社の仕入税額控除となる。
②人工衛星の打上げを受託した場合
非居住者(外国法人A社)の依頼により行う人工衛星の打上げは、非居住者に対する役務の提供に該当し、輸出免税となる。
③宇宙空間にある人工衛星の譲渡
消費税法上、国内とは「この法律の施行地」をいい、宇宙空間はどの国の主権も及ばない区域である。衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認した後に行われる人工衛星の譲渡は、資産の譲渡が行われた時に資産が国外に所在するため、国内取引に該当せず、日本の消費税の対象とならない。