玉田篤志

令和6年度税制改正大綱 納税環境整備編

令和6年度税制改正大綱 納税環境整備編

令和6年度税制改正大綱 納税環境整備編

インボイス制度による確定申告の環境整備

   6年度はインボイス制度導入後、初めての確定申告になりますが、円滑な申告手続きが行われるよう税務署にて2割特例の周知や納税者に対する相談体制を確保します。

税務手続きのデジタル化推進

  法人がGビズIDを入力してe-Taxより申請等を行う際の識別符号、暗証符号の入力、電子署名、電子署名に係る電子証明書の送信を不要とし、国税の納付を行う際の識別符号、暗証符号の入力を不要とするなど利便性の向上をはかります。

隠ぺい・仮装による更正の請求は重加算

  隠ぺい・仮装の事実に基づき更正請求書を提出している場合は、重加算税の適用対象となるほか、地方税においても重加算金の適用対象となります。

  偽りその他不正の行為により国税を免れた場合、延滞税の計算期間から一定の期間を控除する特例が不適用となる措置について隠ぺい・仮装の事実に基づき更正請求書を提出していた一定の場合が加わります。

  この措置は、令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税及び同日以後に申告書の提出期限が到来する地方税に適用されます。

偽り・不正行為に対する第二次納税義務

   偽りその他不正の行為により国税や地方団体の徴収金を免れ、又は還付を受けた株式会社等に徴収不足が認められたときは、その株式会社等を支配する役員等は、その免れ、又は還付を受けた額、又はその株式会社等の財産のうち、その役員等が移転を受けたもの及び移転をしたもののいずれか低い額を限度として第二次納税義務を負うこととされます。

  この措置は、令和7年1月1日以後に滞納となった国税及び同日以後に滞納となった一定の地方団体の徴収金に適用されます。

保全差押え等の解除期限の整備

  納税義務があると認められる者が不正に国税や地方団体の徴収金を免れたことの嫌疑等に基づき処分を受けた場合、税務署長が決定する金額を限度とした保全差押え、又はその保全差押金額について提供される担保に係る国税や地方団体の徴収金について納付すべき額の確定がない場合、その保全差押え又は担保を解除しなければならない期限は、保全差押金額を通知した日から1年(現行6月)を経過した日となります。

  この措置は、令和7年1月1日以後にされる保全差押金額の決定に適用されます。

令和6年度税制改正大綱 消費課税編

令和6年度税制改正大綱 消費課税編

令和6年度税制改正大綱 消費課税編

プラットフォーム課税の導入

  国外事業者からオンラインゲームや映画などの配信がデジタルプラットフォームを介して日本の消費者に適用された場合、電気通信利用役務の提供として消費税が課税され、国外事業者が申告納税義務を負います。しかし、税務署側では国外事業者の把握が困難であり、課税漏れが発生するため、国外事業者に代わり、プラットフォーム事業者が対価を収受したとみなして課税するプラットフォーム課税を導入します。

  令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供に適用されます。

事業者免税点制度の特例の見直し

  国外事業者に対する納税義務免除の特例の判定基準を見直します。特定期間の特例は給与支払額による判定を除外するほか、新設法人に対する特例は、国外事業者が基準期間を有する場合においても国内における事業開始の日に資本金の額により判定を行い、特定新規設立法人に対する特例は、国外分を含む収入金額が50億円を超える者に直接、間接に支配される法人を特定新規設立法人の範囲に加えます。

  令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

簡易課税制度等の見直し

 課税期間の初日に所得税法上または法人税法上の恒久的施設(PE)を有しない国外事業者には、簡易課税制度及び2割特例の適用は認められなくなります。

 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

金、白金の地金等は200万円で高額特定資産

 金や白金の地金等は、その課税期間の取得合計額が200万円以上の場合を高額特定資産の範囲に含め、仕入等の日の属する課税期間の初日から3年間は原則課税が強制され、簡易課税制度の適用が制限されます。

 令和6年4月1日以後に行われる課税仕入れ及び保税地域からの引取りに適用されます。

仕入税額控除の経過措置は10億円を上限

 免税事業者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る税額控除についての経過措置は、当初3年間は仕入税額相当額の80%を、その後3年間は50%を仕入税額とみなして仕入税額控除を認めるものですが、この制度の適用を一の者からの課税仕入れで年間10億円までとします。

 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。


令和6年度税制改正大綱 国際課税編

令和6年度税制改正大綱 国際課税編

令和6年度税制改正大綱 国際課税編

グローバル・ミニマム課税への対応

  BEPSプロジェクトは、国際的な租税回避と利益移転を防止する対応策として2つの柱を提示しました。第1の柱は、恒久的施設(PE)のない市場国にも海外からの音楽配信や書籍販売等からの収益について新たな課税権を配分するもの、第2の柱は、法人税率引下げ競争に歯止めをかけ、最低税率を15%以上とするものです。

  第2の柱は、令和5年度税制改正で所得合算ルール(IIR)が先行して法制化されており、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から施行されます。総収入金額が7億5,000万ユーロ(約1,200億円)以上の多国籍企業に適用され、軽課税国に所在する子会社の実効税率が15%を下回る場合、親会社に最低税率15%に至るまで上乗せ課税するものです。令和6年度税制改正では、制度の一部見直しが行われます。

  なお、軽課税国に所在する親会社の実効税率が15%を下回る場合、子会社に最低税率15%に至るまで上乗せ課税する軽課税所得ルール(UTPR)及び、自国の事業体が最低税率15%に満たない場合、最低税率まで課税する国内ミニマム課税(QDMTT)については、令和7年度改正以降に法制化されます。

暗号資産等取引情報の報告制度の創設

  暗号資産等を利用する国際的な脱税や租税回避を防止するため、令和4年OECDで策定されたCARF(暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の報告枠組み)に基づき、非居住者の暗号資産等取引情報を各国の税務当局間で自動的に交換するための報告制度が新たに整備されます。暗号資産等にはビットコイン等だけでなく、トークン化された金融商品、NFTも含まれます。令和8年1月1日以後、暗号資産交換業者等との間で行われる非居住者の暗号資産等取引について、当該交換業者等から所轄税務署長に取引情報等の提出が義務付けられます。

金融口座情報の報告制度の見直し

  富裕層のタックスヘイブン等を利用した課税逃れに対する国際的な批判の高まりから、平成27年度税制改正では、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避を防止するため、金融機関には非居住者の金融口座情報の提供を義務付け、各国の税務当局間で情報を自動的に交換する制度が導入されました。暗号資産等取引情報の報告制度創設にあわせ、金融口座情報においても電子マネー等を報告対象とする見直しが行われます。

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(大企業・中堅企業)

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(大企業・中堅企業)

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(大企業・中堅企業)

賃上げ促進税制(大企業、中堅企業)

 今まで対象外だった企業・社会保険の適用対象者が拡大されます。改定ポイントは
① 以前より小規模な企業(従業員数が常時100人超)も対象になる
② 勤務期間が短い(2か月超)労働者も対象になる
現行では人員規模が500人超企業が対象でしたが、規模が100人超に引き下げられ、さらに2024年10月には50人超に引き下げられます。企業規模の従業員数とは社会保険の被保険者数で判断します。
人数は月ごとに数え直近12か月のうち6か月で基準を上回ると対象事業所です。
また、短時間労働者の範囲は1年以上雇用の方が対象でしたが、2か月を超えて雇用していれば対象になります。

戦略分野国内生産促進税制の創設

 経済安全保障や環境負荷低減に資する物資の国内供給力を高める税制(戦略分野国内生産促進税制)が創設されます。産業競争力強化法に定める事業適応計画に基づいて半導体、電気自動車などを生産する設備投資を行う事業者には、販売数量に応じた金額を生産用資産の取得価額を基礎とした額の範囲内で税額控除します。計画認定後10年を対象とし、控除限度超過額は4年間(半導体は3年間)繰越しできます。

イノベーションボックス税制の創設

 国内で自ら研究開発した知的財産から生じる所得への課税を優遇する税制(イノベーションボックス税制)が創設されます。特許権、AI分野のソフトウエアに係る著作権について居住者や内国法人への譲渡、他の者への貸付けによる所得金額のうち一定額の30%相当額を損金算入、令和7年4月1日以後開始する事業年度から適用します。


外形標準課税は課税逃れに歯止め

 資本金を1億円以下に減資して外形標準課税の対象外となる法人が増加する中、現行基準(資本金1億円超)は維持します。ただし、当分の間、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合は外形標準課税の対象となります。令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。



令和6年度税制改正大綱 資産課税編

令和6年度税制改正大綱 資産課税編

令和6年度税制改正大綱 資産課税編

住宅取得等資金の贈与非課税

贈与税の非課税制度は、世代を超えた格差の固定化につながることから慎重な対応が求められていますが、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置については、住宅取得促進を図る観点から、省エネ性能の適用要件を見直しの上、3年間の延長となりました。省エネ等住宅の場合は、1,000万円、その他の住宅の場合は500万円までの贈与が非課税となります。令和6年1月1日以後の贈与に適用されます。

住宅取得等資金贈与の相続時精算課税

特定贈与者からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例についても適用期限が3年延長されます。

令和6年1月1日以後の贈与については、取得財産の価額の合計額から110万円の基礎控除額を控除した後の残額について、2,500万円の特別控除額を適用し、20%の税率を乗じて贈与税額を算出します。

また、令和6年1月1日以後に、特定贈与者の相続税の申告期限までの間に贈与を受けた土地・建物が災害により一定の被害を受けた場合は、相続財産の価額に加算される土地・建物の贈与時の価額から被災価額を控除することができます。

特例承継計画の提出期限を延長

法人版事業承継税制は、円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等を贈与・相続等により取得した後継者の贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により猶予税額の納付を免除する制度です。

平成30年度に適用要件を緩和する特例措置の制度が10年間限定で設けられましたが、その際、都道府県知事に提出する特例承継計画の提出期限が2年間、延長されることとなりました。ただし、特例措置の適用期限は、当初の10年間(令和9年12月31日まで)のまま変更はありません。

個人版事業承継税制においても、個人事業承継計画の提出期限が2年間、延長されますが、適用期限(令和10年12月31日まで)は当初のまま変更ありません。

固定資産税等の負担調整措置は継続

 

令和6年度は、3年に1度の固定資産評価替えの年になります。宅地等に対する固定資産税は、課税の公平の観点から3年間の負担調整措置と条例減額制度が継続されるほか、据置年度において地価が下落した場合に基準年度の価格を修正する特例措置も継続されます。

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(中小企業)

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(中小企業)

令和6年度税制改正大綱 法人課税編(中小企業)

賃上げ促進税制の強化(中小企業者等)

中小企業の6割は欠損法人であることから、これまで賃上げしても税額控除のメリットを受けることができませんでした。

6年度改正では、新たに5年間の繰越控除制度を設け、赤字企業にも賃上げのインセティブを持たせます。教育訓練、子育てと仕事の両立支援、女性活躍の推進を行う企業には税額控除率が上乗せされ、税額控除率は最大45%(法人税額の20%が上限)となります。

                       適用要件          :    税額控除率
・雇用者給与等支給額    前年比1.5%以上増加:増加額の15%
                            前年比2.5%以上増加:増加額の30%
教育訓練費支給額        前年比5%以上増加、雇用者給与等支給額の0.05%以上:10%加算
子育て・女性活躍支援
      プラチナくるみん、プラチナえるぼし、くるみん、えるぼし(2段階目以上):5%加算

事業再編投資損失準備金制度は拡充

中堅・中小企業が成長するためには、M&Aにより人材や技術を有する中小企業を子会社化し、グループ再編を通じて経営資源を集約することが必要となります。このとき、簿外債務や偶発債務を負担するリスクに備え、株式取得額に対応する事業再編投資損失準備金を損金として積み立てる制度です。

6年度改正では、産業競争力強化法に定める特別事業再編計画の認定を受けた事業者は、最初に取得した株式等について取得価額の90%、それ以外は100%を損金算入できるようになります(現行70%)。据置期間を10年(現行5年)とし、その後5年間で均等額を取崩して益金に算入します。

上記の措置を講じ、令和9年3月31日まで3年間の延長となります。

交際費等は、飲食費の除外枠が1万円に

飲食費について交際費等の損金不算入となる範囲から除外される金額は、1人当たり1万円以下(現行は5千円以下)に引き上げられ、令和6年4月1日以後に支出する飲食費から適用されます。

また定額控除限度額(800万円)までを損金に算入できる特例も3年延長されます。

令和6年度税制改正大綱 個人所得課税編

令和6年度税制改正大綱 個人所得課税編

令和6年度税制改正大綱 個人所得課税編

定額減税の実施

定額減税は所得税額の特別控除として、合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合2,000万円以下)の居住者に適用されます。所得税の減税額は、本人3万円、同一生計配偶者と扶養親族1人につき3万円です。給与所得者、公的年金等の受給者は、令和6年6月以後の源泉徴収税額から控除、事業所得者は第1期分予定納税額(7月)から控除されます。

個人住民税の減税額は、本人1万円、控除対象配偶者と扶養親族1人につき1万円です。給与所得者は、特別徴収の場合、減税分控除後の金額を各月に按分して徴収、公的年金等の受給者は、令和6年10月以降の源泉徴収税額から控除、普通徴収は、第1期納付額から控除されます。

ストックオプションは魅力のある制度に

税制適格ストックオプションは、権利行使時の課税を売却時まで繰り延べ、譲渡時の株式譲渡益に課税する制度です。スタートアップ企業が資金や人材をM&Aにより機動的に取得できるよう自社で株式を管理することで証券会社等による保管を不要とし、付与対象となる社外高度人材の実務経験を上場会社の役員は1年以上(現行3年以上)とするなど要件を緩和するほか、権利行使価額の年間合計額の限度額を設立後5年以上20年未満である非上場会社と上場後5年未満の会社は3,600万円、設立後5年未満の会社は、2,400万円(現行1,200万円)に拡充します。

住宅ローン控除は子育て世代を優遇

住宅ローン控除では、19歳未満の扶養親族を有する子育て世帯、夫婦のいずれかが40歳未満の若者夫婦世帯には、これまでの借入限度額を維持します。また、合計所得金額が1,000万円以下の者に床面積要件を40㎡以上に緩和する取扱いは、令和6年12月31日まで延長されます。

令和6年入居 子育て世帯・若者夫婦世帯

住宅の区分                  借入限度額
認定住宅                        5,000万円
ZEH水準省エネ住宅   4,500万円 
省エネ基準適合住宅  4,000万円

住宅リフォーム税制も子育て世代に配慮

 上記の子育て世帯、若者夫婦世帯が、子育てに対応した住宅リフォーム工事を行い、令和6年4月1日から令和6年12月31日までの間に居住の用に供した場合は、工事費用相当額(上限250万円)の10%相当額を所得税額から控除します。

お葬式と税金

お葬式と税金

お葬式と税金

故人をしのぶ儀式と税金

  お葬式は亡くなった方へのお別れやお見送りの儀式です。お通夜や告別式の流れ、宗教宗派によって変わる作法、ご挨拶の言葉など、日常生活とは異なるマナーが多く、少々苦手という方も多いのではないでしょうか。また、残されたご遺族には相続税等、税金周りの手続きが必要になる場合もあります。お葬式と税の関係を確認してみましょう。 

相続税を計算するとき  

  相続税を計算するときは、負担した葬式費用を遺産総額から差し引けます。例えば、

 ①お葬式や葬送に際し、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
 ②ご遺体やご遺骨の回送にかかった費用
 ③お葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えばお通夜などにかかった費用など)
 ④お葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
 ⑤遭難事故等の場合のご遺体の捜索または運搬費用

 上記は相続税を計算するときに差し引けるものとなります。逆に、 

①香典返しの費用
 ②墓石や墓地の費用
 ③初七日や法事の費用

については、葬式費用ではないと判定されるため、遺産総額から差し引くことはできません。

 香典・弔慰金と税金

  香典については故人ではなく喪主やご遺族に支払われるものという扱いになっています。前述した葬儀費用とはならない「香典返し」は故人が返しているわけでもないし、故人が貰っているわけでもないので、葬儀費用とはならない、という解釈です。また、社会通念上相当と認められる香典については所得税及び贈与税は非課税となっています。

  会社から出る弔慰金については、実質上退職手当金等に該当する部分については相続税の対象です。また、それ以外の部分については明確な取り決めがあり、

 ①業務上の死亡の場合:給与3年分
 ②業務上の死亡でない場合:給与半年分

 を超える弔慰金については、相続税の対象となります。 


年末調整の基本

年末調整の基本

年末調整の基本

年間の所得税額を再計算する作業 

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続きです。過不足が起こる原因としては、 ①生命保険料控除や地震保険料控除等の控除が発生する②扶養控除・配偶者控除の額が変わる、等があります。

毎月の給与や賞与などから源泉徴収される税額については、あくまで1年間の見込みの所得により決まるため、「年末調整で出す予定の生命保険料控除」等は加味しないようになっています。また、扶養・配偶者控除の額が変わるケースについては、「大学生の子供がアルバイトに勤しみすぎて、扶養範囲以上の給与を得てしまった」とか「配偶者の収入が産休・育休に入ったため減った」等が考えられます。  


年末調整できない所得控除 

医療費控除や寄附金控除等については、年末調整ができない所得控除です。これらの所得控除については1月1日から12月31日までの間で計算するので、年末調整以後にも発生する可能性があるため、年末調整で取り扱えません。基本的には従業員個人が翌年確定申告するものとなります。  

住宅ローン控除の初年度も年末調整NG  

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)については、2年目以降は年末調整可能です。ただし初年度については、そもそもの「住宅ローン控除を受けられるか否かの審査」が必要となっており、確定申告で控除の申告と併せて、床面積や入居日、居住用かどうか等の審査を行っています。よって年末調整を行うことができません。  

「令和6年」からの変更点 

住宅ローン控除の2年目以降は年末調整可能で、現在は「借入金残高証明書」の添付が必要ですが、令和6年からは添付が不要となります。金融機関から税務署に直接残高証明書が送られるようになるためです。  

来年以降は人事・労務担当者も、年末調整のチェック作業が少し楽になるかもしれませんね。 


ふるさと納税の オンラインワンストップ特例申請

ふるさと納税の オンラインワンストップ特例申請

ふるさと納税の オンラインワンストップ特例申請

オンラインで特例申請  

個人のその年の所得・控除によって決まる控除上限金額以内の寄附であれば、自己負担が2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。確定申告をする必要がなく、1年で5自治体以内への寄附であれば利用できるワンストップ特例申請制度は、確定申告をハードルに感じている給与所得のみの方、あるいは年金所得のみの方に親しまれ、ふるさと納税の利用数拡大に寄与してきました。最近はマイナンバーカードとその情報が読み取れるスマートフォン又はカードリーダーがあれば、オンラインで申請できるようになっています。  


デジタル庁主導の公的個人認証サービス

オンラインワンストップ特例申請に使用される「公的個人認証サービス」とは、マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用して、オンラインで利用者本人の認証等を公的に行うためのサービスです。この公的個人認証サービスについては、行政機関だけでなく、民間事業者の各種サービスにも導入可能です。個人認証について、マイナンバーは利用しません。  

民間事業者が公的個人認証サービスを導入する場合は、公的個人認証法に基づき、主務大臣認定を受けて自社が認定事業者になるか、もしくは認定事業者に署名検証業務を委託する形で利用するかの2つの方法があります。  


特例申請は2つの方法を活用している  

ふるさと納税のワンストップ特例申請ができる「自治体マイページ」は、サイトへの登録情報と自治体より提供される寄附情報を紐づけ、ワンストップ特例申請の本人確認を公的個人認証サービスで行い、オンラインでワンストップ特例申請ができるサービスを提供しています。なお「自治体マイページ」を運営するのは民間事業者です。  

また、ふるさと納税の申し込みができるポータルサイトについては、署名検証業務を委託する形で、オンラインワンストップ特例申請ができるサイトが増えています。  

郵送する手間もなく、Webサイトで特例申請が受領されているかも分かるため、今までの紙での申請に比べると、手間の少ない方法になっています。