月: 2022年5月

起業時の法人銀行口座開設の ハードルと事前準備

起業時の法人銀行口座開設の
ハードルと事前準備

起業時の法人銀行口座開設の ハードルと事前準備

年々高くなる法人銀行口座開設のハードル

警察庁の発表では、令和元年の特殊詐欺の認知件数は 16,851 件(-993 件、-5.6%)、被害額は 315.8 億円(-67.0 億円、-17.5%)で、前年に引き続き認知件数、被害額ともに減少しているが、依然として高い水準の被害が発生していることから、深刻な情勢です。こうした特殊詐欺に実体のない法人銀行口座が使われることが多いことから、銀行での法人口座開設のハードル(=準備すべき書類、事業実態の実在性など)は年々高くなっています。

起業時に法人口座開設で躓かないために

口座開設ができなければ、顧客や取引先から「銀行から認められていない存在」との烙印が押され、事業は立ち行きません。
法人の設立(=会社を作ること)も暴力団対策法等で株式会社の定款認証が厳しくなってきていますが、さらに会社と事業の実在性を示さなければならないのが口座開設時です。銀行により審査基準は違いますが、次のような準備をしておくことで法人口座開設を乗り切ることができます。


(1)資本金はある程度必要
資本金は 1 円から会社設立ができますが少な過ぎると事業実態がないとみなされます。事業遂行可能な金額が必要です。
(2)事業実態のある場所が必要
繁華街の住所表示目的でバーチャルオフィスを本店にすると、実在性なしとされる可能性が高くなります。銀行から訪問調査されても対応できる場所が求められます。
(3)事業実態説明の事業計画書を準備
事業実態の実在性を示すために、締結済みの顧客との売買契約書(=複数が望ましい)などを示すことができればベターです。
まだそうした証拠を示すことができない場合には、少なくとも、銀行に実現可能性を納得してもらえるだけの事業計画書を準備しておきましょう。

法人の所有者が外国法人の場合

法人の株主が非居住者(=外国法人・国外在住者)の場合には、提出書類が増えます。親会社の上にさらに親会社がある場合などには、実質的支配者の本人確認資料(=パスポートの写し、公的機関発行の会社登記・居住者証明書など)も必要となります。
なお、2016 年 10 月に政府が対日直接投資推進目的に金融庁経由で 3 メガバンクに態勢整備を要請し窓口はできていますが、審査体制(必要書類)に優遇はありません。

税金よもやま話 免税点って何?

税金よもやま話
免税点って何?

税金よもやま話 免税点って何?

「免税店」ではなく「免税点」

免税店とはその名の通り、関税・酒税・消費税などがかからない商品が置いてあります。空港型の免税店(Duty Free Shop)と街中にある市中免税店(Tax Free Shop)の2種類があります。
同じ読みで「免税点」という言葉があります。税の中にはある一定水準以下の課税標準に対して、「水準以下の場合は課税しない」としているものがあり、この水準を「免税点」と言います。どんなものがあるのか少し見てみましょう。

固定資産税の免税点

その年の 1 月 1 日に、土地や家屋、償却資産の所有者に対してかかる税金である固定資産税には、種類に応じて免税点が設けられています。
同一名義人が所有する課税標準額の合計が、土地 30 万円未満、家屋 20 万円未満、償却資産 150 万円未満であれば課税されません。

事業所税の免税点

都市部に事業所を設けている場合で事業所面積や従業員給与総額によって課される事業所税には、床面積や従業員数によっての免税点が設けられています。
床面積によって課される資産割については床面積 1,000 平方メートル以下、従業員の給与総額によって課される従業者割につては従業員数 100 人以下の場合は課税されません。

消費税の事業者免税点

消費税については、前々事業年度(個人の場合は前々年)の課税売上高が 1,000 万円以下であれば納める義務が免除されます。
免税事業者は届けを出すことによって課税事業者になることも可能です。
ただし「前々事業年度の課税売上高 1,000万円以下」という条件は「原則」であり、前年 1~6 月、前事業年度開始日から 6 か月間の「特定期間」の課税売上高と給与支払総額が 1,000 万円超であったり、資本金が1,000 万円超(の場合の設立 1 期・2 期目)であったりすると、消費税納税は免除されません。他にも相続・合併・分割・特定の新設法人・高額特定資産の仕入れ等、諸条件で免税点が適用にならないケースが多く存在します。

70歳迄の高年齢者就業確保 努力義務施行 1 年

70歳迄の高年齢者就業確保
努力義務施行 1 年

70歳迄の高年齢者就業確保 努力義務施行 1 年

高年齢者就業確保措置とは

改正高年齢者雇用安定法(2021 年 4 月 1日施行)により、70 歳迄の就業確保措置が努力義務として制度が施行されてから 1 年余りたちましたが、実態はどのような変化があったでしょうか?
経団連が行った調査によると 70 歳迄の高年齢者就業確保措置について「対応済」と回答した企業は 21.5%だったそうです。
回答の多い順にみますと「検討する予定」38.6%、「対応を検討中」29.5%「対応済、決定済」21.5%、「検討していない、予定なし」0.4%ということです。
制度が努力義務の段階ですのでまだ検討中の企業が多いようですが、いずれ義務化されることが想定されます。

70歳迄の就業確保措置、働き方のパターン

70 歳迄の働き方は雇用と、雇用以外の方法も提示されています。
ア、70 歳迄の定年の引き上げ、定年年齢を現在の 60 歳や 65 歳から 70 歳にする。
イ、定年廃止で体力の続く限り就労
ウ、70 歳迄の継続雇用制度、同会社で有期雇用の反復雇用又は他社で雇用
エ、70 歳迄の継続的な業務委託、会社の指揮命令は受けないが労基法は対象外
オ、70 歳迄の継続的な社会貢献活動 事業主が実施する社会貢献事業、委託・出資等する団体の社会貢献事業に従事

マルチジョブホルダー制度創設

このような就業確保措置推進のために2022 年 1 月から 65 歳以上の方に雇用保険の新しい制度が実施されています。
複数の事業所で働く 65 歳以上の労働者がそのうち 2 つの事業所での勤務を合計して所定の要件を満たす場合、労働者本人がハローワークに申し出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者になります。
企業は労働者からの申し出があった場合には「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」への記入や、雇用の事実や所定労働時間などに関する証明書の準備が必要になります。
中小企業では自社に直接労働力として貢献してもらうなど大企業とは違う高年齢者の活用を行うことになるでしょう。

ご存じですか? 中小企業施策利用ガイドブック

ご存じですか?
中小企業施策利用ガイドブック

ご存じですか? 中小企業施策利用ガイドブック

中小企業向け施策利用の決定版!

中小企業庁は「中小企業施策利用ガイドブック」を公開しています。このガイドブックは、経営改善・資金繰り支援対策・震災対策など、中小企業者が国の施策を利用するための手引書として、主な施策の概要を紹介しているものです。
目次から施策を分野別に探すことができるほか、ニーズから適した施策を探すこともできるようになっています。また、各種相談窓口の連絡先も地域別に掲載されています。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/2022/index.html

目次から探す

中小企業施策を分野別に探すことができます。


経営サポート:技術力の強化、創業・ベンチャー支援、経営革新支援、新たな事業活動支援、知的財産支援、再生支援、雇用人材支援、海外展開支援、取引・官公需支援、経営安定支援、小規模企業支援
金融サポート:融資制度、保証制度など
財務サポート:税制、会計、事業承継
商業・地域サポート:商業・流通支援など
分野別サポート:建設業、農林水産業、商品、生活衛生業など
相談・情報提供:相談窓口など

インデックスから探す

自身のニーズに適した融資、補助金、相談、セミナー等を探すことができます。
技術開発・創業・効率化や革新・他事業者との連携・知的財産権活用・事業再生・IT利活用・あっせん・環境適応・小規模支援・事業承継・人材育成雇用・海外展開・防災対策・働き方改革等のニーズから探すことができます。

詳細は各問い合わせ先に

各施策の説明の最後には利用方法・問い合わせ先のURLや電話番号等が掲載されています。不明点は詳細ページにアクセスするか、担当部署に問い合わせましょう。
また、このガイドブックを冊子で欲しい場合は、中小企業庁の冊子請求フォームから注文が可能です。冊子は無料ですが、送料は着払いで自己負担となります。

コロナ補助金と設備投資 設備取得分は収入にならない

コロナ補助金と設備投資
設備取得分は収入にならない

コロナ補助金と設備投資 設備取得分は収入にならない

引っ越し先での美容院や病院探し

春の引っ越しシーズンも過ぎ、新天地で新たな出会いや探索の機会も増えているのではないでしょうか。引っ越し先での美容院、歯医者さん、かかりつけ医を新たに探すのも一苦労です。それでも、最近ではネットでいろんな情報を比較検討できますので、便利な時代です。
各種業種の店舗サイトをネット検索していると、“うちはこれだけコロナ下の衛生対策に力を入れています”的な宣伝文句が増えています。大事なポイントですね。

コロナ下での補助金が設備導入のモチベに

設備は素晴らしいけど、投資金額的にためらいがあったが、今回のコロナ補助金が思い切って導入をするきっかけとなったと歯医者さんが話していた設備がありました。
口腔外バキュームと言われるもので、歯科治療で広範囲に飛散すると言われているエアロゾルの飛沫を吸引し、飛散や感染を防止するものです。
東京都や神奈川県をはじめ各自治体で100 万円を上限等などの条件(=半分程度の補助となるようです)で、コロナ対策補助金とされたことで、歯科医師会のサポートもあり、こうした設備の導入が業界内で進んだようです。この設備の有無での比較写真を見ましたが、安心安全のためにはこうした補助金と設備導入はどんどん進んでほしいものです。

補助金は原則収入として課税対象となる

コロナ下では、持続化給付金や家賃支援給付金など、様々な補助金や給付金が施されました。こうした支援金は、確定申告において収入として計上する必要があります。
しかしながら、補助金で設備を導入した場合には、所定の手続きにより、設備投資額分だけ収入金額に計上しない課税の方法があります。長い目で見ると減価償却の計算を通じて、結果的には、課税負担は平準化されるようになっていますが、補助金をもらった年度に一時に課税される事態は回避されることになります。
こうした補助金の申請も令和 3 年度分まではすでに終わっています。これからまた令和 4 年分の受付が始まるのか否かは、今後の感染状況によるものと思われます。
コロナ下でも果敢に生き延びて行けるよう、給付金や補助金などの支援情報にも敏感に気を配りたいですね。

身元保証書に極度額と有効期限の 取り決めはありますか?

身元保証書に極度額と有効期限の
取り決めはありますか?

身元保証書に極度額と有効期限の 取り決めはありますか?

民法改正で個人保証に極度額の定めが必要

2020 年 4 月1日に施行された民法の大改正が行われたことをご存じと思いますが、個人保証に極度額の定めが必要となり(改正民法第 465 条の 2)、社員から受領する身元保証書についても極度額の定めが必要となっています。
そもそも、身元保証に関する契約については、「身元保証ニ関スル法律(以下「身元保証法」)」という、わずか6条からなる古めかしい法律があり、その中では極度額について規定されていません。
しかし、改正民法第 465 条の 2 第 2 項で、「個人保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めており、2020 年 4 月 1 日以降に取り交わされた身元保証契約が対象となります。

身元保証の契約上限は5年

身元保証法第 1 条では、期限の定めのない身元保証契約の上限を 5 年としており、身元保証契約は自動更新ができないため、5年を経過すると新たに身元保証契約を取り交わす必要があります。
しかし、5 年を経過した身元保証書の取り直しが行われていることは、実務上少ないのではないでしょうか?

身元保証書を入手できない場合の対応

身元保証する側にとって、極度額がある方が無制限保証より安心ではありますが、連帯保証の形式をとることが多いため、極度額が設定されていたとしても、連帯保証がネックとなって、保証人が躊躇し、会社が身元保証書を入手できないケースも増えることが予想されます。
その場合、「身元保証書」や「身元保証契約書」ではなく、「誓約書」の形式として、被保証人たる社員が社員としての適格性を有することや、万一の場合には問題解決に向けて会社に全面的に協力することを保証人に誓約いただくなど、柔軟な対応をとることもやむを得ないかもしれません。

大企業向け賃上げ促進税制 マルチステークホルダー経営宣言とは

大企業向け賃上げ促進税制
マルチステークホルダー経営宣言とは

大企業向け賃上げ促進税制 マルチステークホルダー経営宣言とは

令和 4 年度税制改正の賃上げ促進税制

継続雇用者の給与総額を一定割合以上増加させた企業に対して、雇用者全体の給与総額の対前年度増加額の最大 30%(中小企業については最大 40%)を税額控除できる賃上げ促進税制ですが、一定規模以上の大企業に対しては「マルチステークホルダーに配慮した経営への取り組みを宣言していること」が要件になりました。
資本金 10 億円以上かつ、従業員数 1,000人以上の大企業が賃上げ促進税制を利用したい場合は自社のウェブサイトに宣言内容を公表したことを経済産業大臣に届け出なければなりません。

マルチステークホルダー経営宣言とは

「マルチステークホルダー(・プロセス)」とは、従業員や取引先、消費者や関係会社等、企業活動をするうえで影響を受ける利害関係者である「ステークホルダー」が持続可能な発展を目指して協働して課題解決にあたる合意形成などの意思疎通を図ることを言います。
マルチステークホルダー経営宣言を要件にしたということは、「取引先等への配慮もしながらこの賃上げ促進税制を利用してください」、言い換えれば「意思決定の社会的正当性の確保もしてください」ということなのでしょう。

日本に古くからあった CSR 的概念

近年、CSR(企業の社会的責任)や SDGs(持続可能な開発目標)や、今回取り上げたマルチステークホルダー経営宣言等、企業経営が社会的責任についてどういった影響をもたらし、どのように反映させてゆくのかを明文化する動きが強くなっています。
旧来、日本には近江商人の経営哲学である「三方よし」、「売り手によし、買い手によし、世間によしであればよい商売といえる」という概念があります。これを詳細に詰めてゆくのがマルチステークホルダー等の、最近流行の明文化と考えても差し支えないでしょう。
商いと社会には切っても切れない縁があり、どんな規模や業種の企業でも、ステークホルダーと協働している面があるはずです。自社の企業活動を、ステークホルダーへの影響等の視点から見てみると、何か発見があるかもしれません。

どのくらいの規模? 中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模?
中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模? 中小企業・小規模企業の定義

どのくらいの規模の会社のことをいう?

ニュース等でよく聞く「中小企業」「小規模企業」「中堅企業」「零細企業」という企業規模を表す言葉ですが、実は「中堅企業」と「零細企業」は法で定められていない、あくまでもイメージの言葉です。
「中小企業」と「小規模企業」の定義については、中小企業の経営革新や創業、経営基盤の強化等を行うべく制定された中小企業基本法によって定められています。

ただし、制度によって「中小企業である」として扱われる範囲が異なる場合もあります。また大企業の子会社等で「みなし大企業」として扱われて補助金等が受けられない企業や、旅館業やソフトウエア業等、原則の定義とはことなる枠組みで指定されているケースもあります。「中堅企業」という言葉は、「中小企業でも上の方、中小企業を超える場合もあり」といった規模感を指すことが多いようです。

ただしこちらも例外があり、宿泊業や娯楽業の従業員数 6~20 人の事業者は「小規模企業」の対象になる場合があります。
「零細企業」という言葉は、特に小規模企業の中でもわずかな資本・設備で経営している企業を指すことがほとんどです。

「中小法人」という定義もある

今までの説明は中小企業基本法における「企業規模」の定義でしたが、法人税法における「中小法人」の定義は業種を問わず「資本金 1 億円以下」になります。こちらにも例外があり、3 年間の平均所得が 15 億円超である場合や、みなし大企業は除外される等があります。

 

法人税が損金とならない理由

法人税が損金とならない理由

法人税が損金とならない理由

法人税は、会社の収入から国に支払われる費用なのに、損金とならないのは何故でしょうか?

租税公課は損金が原則

会計上、租税公課は費用となります。そして法人税の扱いも一般に公正妥当な会計処理基準のもと、販売費・一般管理費は、原則、債務の確定した事業年度において損金の額に算入することとされています。

別段の定めで損金不算入

租税公課は原則、損金ですが、法人税法は別段の定めを置いて法人税を損金不算入とする取扱いとしています。その理由として、法人税は法人の所得から支払われることが予定されていること、および法人税を損金に算入してしまうと損金算入後の所得で法人税が計算される循環的な所得変動が弊害となることが言われています。
申告納税方式による租税公課は、申告書を提出した事業年度に損金算入となるので、法人税を損金算入とした場合には、翌事業年度の損金となります。「所得=益金-損金」ですので毎年同じ税引前利益を計上しても損金とした法人税の推移によって所得も変動します。たとえば、設立1期目の税引前利益 100 に対する法人税 23.2 は、翌期(2期)の損金となり、翌期の税引後利益(所得)76.8 の 23.2%である法人税 17.8 は、翌々期(3期)の法人税に...というように税引前利益は同じ 100 でも所得は毎年変動してしまいます。

事業税は損金に算入されるのに…

一方、事業税については法人税と同様、所得金額をもとに計算されますが損金算入とされています。法人税の扱いと真逆になる理由として、事業税は地方行政サービスの利用コストの負担として法人の事業活動に担税力を求めて課税されるのに対して、法人税は法人の所得に担税力を求めて課税されることがあげられます。それに加えて、国は法人の所得から税収を正確に積算し、予算をしっかり確保したいので損金不算入というのが、やはり本音かもしれません。