月: 2022年2月

シフト制で働く人の 雇用管理

シフト制で働く人の
雇用管理

シフト制で働く人の 雇用管理

パート、アルバイトの方の労働時間

勤務する前の雇用契約時には労働日や勤務時間を確定的に決めず、一定期間ごとに作成される勤務割りや勤務シフトなどにおいて初めて具体的に労働日や労働時間が知らされるような勤務形態があります。
このような形態は柔軟に労働日や労働時間を設定できる点で当事者双方にメリットがありますが、事前にはいつ働くか、何時間くらい働くかおおよその情報はわかっているものの、シフト表ができて初めて知るケースも多いものです。そのため労使紛争になってしまう場合もあります。
厚生労働省でこのような形態で働く人のための雇用管理について留意すべき点をまとめました。

シフト制労働契約締結においての留意事項

労働契約の締結時にすでに始業・終業の時刻が確定している日については労働条件通知書などに「シフトによる」等と記載するだけでなく労働日ごとに始業・終業時刻を記載するようにして、労働契約の締結時にその時の一定期間のシフト表等も併せて労働者に交付しましょう。
休日についても事前に具体的な休みや曜日が確定していない場合でも、休日の設定に決めている事項は明らかにしておかなければなりません。

シフト制労働者を就労させるときの注意点

アルバイトやシフト制で働いていても年次有給休暇は発生します。所定労働日数や労働時間数に応じて法定の日数の年次有給休暇が発生します。原則は本人の請求する時季に与えなくてはなりませんがシフトで出る日だから休ませないということはできません。もちろん使用者には時季変更権もありますから話し合って調整はできます。
休む労働者側もシフト表ができる前に休む予定がわかっているなら、休む日はシフトから外してもらうなど事前に申し出することは必要でしょう。
また、シフト制労働者を会社都合で休ませる時は平均賃金 60%以上の休業手当が必要です。
しかし、昨今のコロナ禍の状況でシフト制労働者に賃金を支払えない場合であれば給付金の申請等をしてあげるなり、申請を本人に知らせてあげるのがよいでしょう。

3000 万円特別控除 と措置法重複適用

3000 万円特別控除
と措置法重複適用

3000 万円特別控除 と措置法重複適用

土地バブルとマンションバブル

昭和の土地バブルの時代には、頻繁に住宅を買い替えることにより、よりリッチな物件に住み替える、という事例が沢山ありました。所有によりアパート賃料分が留保されるだけでなく、所有により含み益が蓄積される、という効果が人の心を動かしました。
現在は、マンションバブルの傾向を示しています。首都圏では 2000 年以降、近畿圏では 2010 年以降に建築した中古マンションの譲渡価格が新築時の価格を上回る傾向にある、との民間公表データもあります。
譲渡益も、建物の減価償却があるから譲渡益が出るのではなく、その償却額を超える譲渡益が出る、という事です。

会計検査院の指摘

令和2年の税制改正で、住宅ローン控除の規定の「翌年又は翌々年中」という文言が「翌年以後3年以内」という文言に改正されました。これは、会計検査院が措置法特典の不適正な重複適用として実態報告をしたことに端を発しています。会計検査院の検査報告によると、新居を購入して住宅ローン控除を受けている人で、旧居に居住しなくなってから3年目に旧居を売却して居住用資産譲渡の 3000 万円特別控除の特例の適用を受けていた人が平成 28 年、29 年の2年間で 37 人いたとしています。そして、この 37 人の重複減税額の合計が 5011 万円であった、としています。税率で割った一人当たり平均譲渡益は 900 万円前後です。
会計検査院の検査した事例も、最近の不動産バブルを反映しています。

特例の連続適用・重複適用

今はマンション住み替えの都度、譲渡益が発生する時代になっています。そして、期間が3年超ならば、3000 万円控除の連続適用が可能です。さらに、住宅ローン控除の適用を受けていたとしても、その居住物件の譲渡による譲渡益に対する 3000 万円控除の適用も可能です。
会計検査院の指摘と紛らわしいところですが、同一物件に係る譲渡益に対する 3000万円控除の適用と住宅ローン控除の適用には、特例併用の制限はされていません。会計検査院の指摘したのは、異なる物件での住宅ローン控除と 3000 万円控除の重複適用の場合の事なので、同一物件での重複適用に対する注文ではなかったのです。

短期退職給与の分別計算 令和4年から適用開始

短期退職給与の分別計算
令和4年から適用開始

短期退職給与の分別計算 令和4年から適用開始

短期退職金での報償

M&Aでの企業の規模拡大戦略が模索される中、新たに子会社になった企業に、役員や幹部社員として出向や転籍をさせる要員が必要となります。そして、一定の期間経過後に、出向元や転籍元に復帰することも普通に想定されることです。
復帰に際して、出向先や転籍先での功績顕著な場合、退職金等で報いる、という選択肢もあり得ます。そんな場合、出向・転籍先での役員又は使用人としての勤続期間が5年以下の場合は、課税関係が複雑になります。

退職所得課税の計算式

現在の退職所得課税での税額計算式は次の3つに分かれています。
①(収入-退職所得控除額)÷2×税率=
②(収入-退職所得控除額)×税率=
③(収入-退職所得控除額-150 万)×税率=


上記の②は、勤続年数5年以下の短期役員退職給与(法人役員・議会議員・公務員)に対する課税方式で、2分の1計算が適用除外です。この②は、平成 24 年改正で措置されたものです。
③は、②以外の勤続5年以下の短期退職給与で、退職所得控除後の額が 300 万円超の場合の課税方式です。300 万円超過部分についての2分の1計算を適用除外とするとの趣旨の算式です。③は、令和3年度の税制改正で制度創設され、令和4年分以後の短期退職給与について適用されます。
①は、それら以外の一般退職給与及び退職所得控除後の額が 300 万円以下の短期退職給与に対しての課税方式です。

複数該当や期間重複の場合

その年中に支払われる退職給与が、①、②、③の複数ケースに該当する場合の退職所得控除額の計算方法は、それぞれ期間の重複がなく、20 年以内の場合には、②では〈40 万円×役員勤続年数〉です。①③では、〈40 万円×総勤続年数-②の額〉です。使用人兼務役員としての勤続期間がある場合は、役員と使用人との期間の重複があることになるので、その重複期間についての②は、〈20 万円×重複年数〉となります。
なお、①②③のそれぞれで計算される退職所得控除額がそれぞれの収入金額よりも少なくマイナスとなるケースがある場合には、そのマイナス額は、他のプラスとなるケースから控除されます。

死亡した月の給与の取扱い

死亡した月の給与の取扱い

死亡した月の給与の取扱い

死亡月の給与は支給期で判定

あまり起きて欲しくないことですが、現役の会社員が亡くなった場合、給与の取扱いについては少し注意が必要です。
死亡した方の給与は、生前働いていた期間で日割りして算出しますが、「支給期」の前に亡くなっている場合は、その月以降の給与に関しては相続税の課税対象となり、所得税は課税されないため、源泉徴収は行いません。また、死亡した人の年末調整は死亡時に行いますが、源泉徴収しないということは、源泉徴収票の支払金額に含めないということですから、その点にも注意が必要です。

「支給期」は「支払日」のこと

「支給期」という言葉は聞きなれないので「給与の締め日」と思われがちですが、「給与の締め日」のことではないので注意しましょう。「支給期」とは「給与所得の収入金額の収入すべき時期」のことで、「契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等についてはその支給日、その日が定められていないものについては実際にその支給を受けた日」と定められており、要は「支給日」のことです。
また、資金繰りやその他の理由で、定められた支給期(=支給日)に給与が支払われず、遅滞した給与が支払われる前に死亡した場合は、その当月の支払い分は給与所得となりますので、給与所得の源泉徴収票に含めて記載する必要があります。

社会保険料の扱いは?

社会保険料は所得税の扱いとは異なり、翌月末日が支払い期限で、「月末時点に在籍していればその月の社会保険料がかかる」という仕組みなので、当月締め・翌月払いの給与体系の場合は、死亡のタイミングにもよりますが、死亡後の給与からも天引きする場合もありますから、注意が必要です。
なお、雇用保険料は日割り計算です。社会保険料と混同しないように気をつけましょう。

健康診断の受診は労働時間か

健康診断の受診は労働時間か

健康診断の受診は労働時間か

健康診断の種類

労働安全衛生法(第 66 条)では使用者は労働者に対し健康診断を実施する事が義務付けられています。このうち 1 年以内ごとに 1 回実施しなければならないのが定期健康診断(労働安全衛生規則第 44 条)です。
定期健康診断と雇い入れ時の健康診断(同第 43 条)等を合わせて「一般健康診断」と言います。またこれとは別に有害物質を取り扱う業務の従事者に対して実施が義務付けられている「特殊健康診断」があります。

受診時間と労働時間

健康診断の受診時間が労働時間に当たっているかどうかは、その労働者がその時間使用者の指揮命令下にあるかどうかが判断碁準となります。一般的に特殊健康診断は業務の遂行に基づいて実施されるべきもので所定労働時間内に行われるのが原則とされています。
一方で一般健康診断は使用者が労働者の一般的な健康の確保を図ることを目的として実施を義務付けたもので業務遂行との関連において行われるものでないと考えられています。この事から特殊健康診断の受診時間については業務関連性から見て使用者の指揮命令下におかれた労働時間であり、一般健康診断は必ずしも使用者の指揮命令下にある労働時間であるとは言えない事となります。一般健康診断は所定労働時間内に実施すれば賃金を支払うのが通常でしょう。
業務の都合で所定労働時間外や所定休日に受診した場合、賃金の支払い義務はありませんが考慮は必要でしょう。

健康診断の費用負担

健康診断費用について労働安全衛生法では触れていません。通常は健康診断実施義務の課されている事業者が負担するべきであるとされています。健診機関に出向く場合は交通費等は健診に要する費用とされると解釈されています。
しかし使用者が指定した医師や機関でなく労働者自ら選択した他の医師や機関の場合はその受診時間は使用者の指揮命令下にある時間ではないので、使用者はその時間の賃金だけでなく受診費用も当然負担すべきものとはならないでしょう。

令和 3 年分確定申告 簡易な方法による個別延長

令和 3 年分確定申告
簡易な方法による個別延長

令和 3 年分確定申告 簡易な方法による個別延長

今年の確定申告期限は 3 月 15 日ですが

新型コロナウイルスのオミクロン株による感染の急速な拡大に伴い、確定申告期間(2/16~3/15)にかけて、感染してしまった方や濃厚接触者認定で自宅待機を余儀なくされてしまった等で、令和 3 年分の確定申告が遅れてしまう人が増加することを想定し、国税庁は令和 4 年 4 月 15 日までの間については「簡易な方法による個別延長」を認めることとしました。
「簡易な方法」というのは文字通りで、本来ならば提出が必要な「延長申請書」を必要とせず、申告書を提出する際に余白等に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書き添えるだけで、4 月 15 日までの間であれば、申告・納付期限を延長することができます。
なお、個人の所得税・消費税の申告だけではなく、法人税や相続税といったその他の税目についても、4月15日までなら簡易な方法で延長の適用を受けることができます。

対象は今年分のみ、4 月 15 日までの措置

あくまでも今般のオミクロン株による感染の急拡大に向けての措置なので、令和 4年 1 月以降に申告等の法定期限を迎える手続が対象となっています。例えば新型コロナウイルスによる影響であっても、令和 2年分の確定申告を令和4年4月1 日に提出する場合は簡易な方法による個別延長の対象にはならず、延長申請書に申請理由等を記載の上、提出する必要があるのでご注意ください。
また、令和 3 年分の確定申告であっても、4 月 15 日を過ぎて申告する場合は同様に、延長申請書が必要となります。

申告日=納付期限になるので注意

4 月 15 日までの簡易な方法による申告期限の個別延長を申し出た場合は、原則申告書を提出した日が申告と納付の期限となりますので、3/16 日以降の申告を行う場合は、納付が可能になった時点で提出するようにしましょう。
納付が困難な場合については、納付の猶予制度も適用可能ですから、納税資金に不安がある場合は、活用を検討してもいいかもしれません。

BtoBでの免税事業者の 消費税転嫁は保護されるのか

BtoBでの免税事業者の
消費税転嫁は保護されるのか

BtoBでの免税事業者の 消費税転嫁は保護されるのか

インボイス開始当初の経過措置

令和5年 10 月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、インボイス番号を持たない免税事業者も消費税を請求出来ることが制度の前提になっています。そして、令和5年 10 月1日から最初の3年間は免税事業者の請求する消費税額(110 分の 10)の 80%を、取引相手は、仕入税額控除可能とし、次の3年間は当該(110 分の 10)の50%を仕入税額控除可能とし、その後は0%としています。

経過措置は値上げを前提としている

取引相手の仕入側としては、110 分の 8 又は 5 が仕入税額で、税抜き購入価格は 110分の 102 又は 105 となり、6年経過後は 110となります。従って、購入価格の値上げが起きたことになります。
BtoBでの取引弱者に該当する多くの免税事業者は、少なくとも、値上げとなる部分の取引価格の減額を要求されるはずです。

公取委の独禁法の適用方針

公正取引委員会は、「インボイス対応Q&A」を発表し、取引上優越した地位の立場で、免税事業者である仕入先に対して、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法で禁止している下請代金の減額や買い叩きとして問題となるとしています。
そう言いながら、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、交渉において、仕入税額控除が制限される分について、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではない、としています。

公取委の態度は実効性を無にする

公正取引委員会のスタンスは、仕入側の控除消費税額の制限による損失分の値下げは問題なしではあるが、免税事業者自身が負担している仕入消費税分にまで食い込むようなことになってはならない、との、幅のあるものです。免税事業者が、消費税の損税化(不転嫁による自己負担化)という事態に陥ることは、独禁法上としても見過ごせない問題なのでしょう。
しかし、消費税の請求額をゼロとして、免税事業者に於いて発生している前段階消費税を取引価格へ上乗せする(値上げ)というような話し合いは、現実性が乏しく、公取委の見解表明は実効性を伴わないアリバイ作りのように感じられます。

暦に従って計算する だけではない償却計算

暦に従って計算する
だけではない償却計算

暦に従って計算する だけではない償却計算

2ヶ月の次は4ヶ月

かつて、大学教授の方が、税務専門誌の質疑応答事例の中で、7月 31 日使用開始した減価償却資産の月数計算について、決算期末が9月 30 日だったら事業供用月数は2ヶ月となり、また、決算期末が 10 月 31日だったら、事業供用月数は4ヶ月となる、と回答していた記事がありました。

理由は民法の定めによる計算

償却限度額を計算する場合の「月数」とは、カレンダーの枚数を意味するものではなく、暦に従って計算するのであり、「暦に従って計算する」とは、民法第 143 条による計算であり、「応当する日の前日に満了」、応当日がない時は「その月の末日に満了」との規定に従うから、とのことでした。
7月31日から9月30日までの間に含まれる「30日」は、8月30日と9月30日の2回なので、その月数は2となる、ということ、即ち、「7月31日から8月30日まで」の1ヶ月と「8月31日から9月30日まで」の1ヶ月との合計2ヶ月、ということです。

税の実務においては

しかし、当局の監修を受けていると思われる減価償却の税務ソフトでも、7月 31 日使用開始で決算期末が9月 30 日の期間計算を2ヶ月と1日という計算で3ヶ月の償却計算をしています。先の大学教授の解釈にも一理あるかと思いますが、実務では、カレンダーの枚数による計算が主流のように思われます。

民法の規定の適用を徹底するなら

「暦に従って計算する」との民法規定を根拠に置くのだとすると、「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない」という民法第 140 条の規定も無視するわけにはいきません。
7月 31 日使用開始で決算期末が 10 月 31日の期間計算では、初日不算入とすると8月1日から 10 月 31 日となり、3ヶ月ちょうどで、大学教授のいう4ヶ月にはなりません。期間の満了日は民法遵守で、初日については民法無視というのも、不合理です。

慣習法的実務解釈が定着か

国税通則法にも期間の計算の定めがあり、期間の初日不算入、期間の定めは暦に従う、応当日前日の満了と、民法と同じ規定になっていますが、減価償却の償却月数計算では、民法の規定に拠るのではなく、初日算入で、カレンダーの枚数に拠るという、税法の世界独自の解釈ルールがありそうです。

 

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除と譲渡特例

住宅ローン控除の適用を受けて新住居を取得した人が、旧住居を住まなくなってから3年目に譲渡して 3000 万円特別控除の適用を受けようとする場合、住宅ローン控除が過去に遡って適用されなくなりますので、注意が必要です。

租税特別措置の趣旨は、住宅取得の促進

「公平・中立・簡素」は税制の基本原則ですが、国は、特定の政策目的の実現のため、特別措置でこの原則を少し緩めて特定の人の税負担の軽減をはかります。住宅ローン控除は、借入金の金利負担を税額控除で補填するもの、居住用不動産の譲渡所得の3000 万円特別控除は、住宅を売却する人は、代わりに居住用不動産を取得する必要があることから譲渡所得に係る税負担を減らして、住宅取得を後押しするものです。他にも買換特例、交換特例などがありますが、これらの譲渡特例の適用に際し、制度の重複適用は想定されていません。

会計検査院の指摘で重複適用が発覚

ところで、令和2年度改正前の税制では、居住した年、及びその前後2年間の重複適用までは禁止されていましたが、旧住居を住まなくなってから3年目に譲渡した場合、住宅ローン控除と 3000 万円特別控除の重複適用が起きてしまうことを会計検査院が指摘しました。このため、令和2年4月1日以降の旧住居の3年目の譲渡にも、重複適用はできないこととなりました。

重複の場合は、3000 万円特別控除を優先

重複適用の場合は、3000 万円特別控除が優先されます。3000 万円特別控除の適用を受けようとする人が、住宅ローン控除を先行して受けていた場合、過去に遡って住宅ローン控除が適用できなくなり、修正申告(または期限後申告)が必要となります。
これにより居住用不動産を買換えしようとする人は、住宅ローン控除と譲渡所得の3000 万円特別控除のどちらを選択するか、事前に有利判定が必要となります。

控除率1%の見直しも忘れずに

なお、このときの会計検査院報告では、他にも、住宅ローン控除適用者の借入金利が1%を下回ることが多いことから、ローンで住宅を取得した人の税負担が金利負担以上に減額される逆ざや現象が報告されていました。そこで令和4年度税制改正では、令和4年以降に居住の用に供したものから借入残高に対する控除率は、1%から 0.7%に引き下げられることになります。

在宅勤務にかかる費用負担 -事務簡略化のために

在宅勤務にかかる費用負担
-事務簡略化のために

在宅勤務にかかる費用負担 -事務簡略化のために

在宅勤務手当の支給

落ち着きかけたコロナ第 5 波も、オミクロン株の急拡大により、在宅勤務となる会社も増えています。企業が自宅で仕事をする際の電話代や電気代として、従業員に在宅勤務手当を支給した場合、従業員の給与として課税する必要があるでしょうか?
在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については 、従業員に対する給与として課税する必要はありません。
一方、企業が従業員に在宅勤務手当=従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を企業に返還する必要がないもの(例えば、企業が従業員に対して毎月 5,000 円を渡切りで支給するもの)を支給した場合は、従業員への給与として課税する必要があります。

実費相当額を精算する方法は計算が面倒

企業が、独自により精緻な方法で、業務のために使用した通信費や電気料金の金額を算出することができれば、実費精算として給与課税の対象外となります。しかしながら、実際は、国税庁が提供している簡易な計算方法で計算することとなります。
簡易な計算方法と言いながら、実際の請求書に基づき、業務用の通話明細を区分けしたり、基本料金をその月の日数の在宅勤務日数分で按分したり、さらに機器本体やオプション費用が混じらないように除外したりと、かなり面倒な計算が毎月必要です。
電気料金の計算は、自宅の床面積に占める業務のために使用した部屋の床面積で按分するとしても、毎月実際の請求書を会社に提示し計算・精算するので面倒です。

負担軽減のためにグロスアップで給与課税

こうした精算に係る従業員と会社の事務作業と時間は、結構な負担となるはずです。
給与課税とならない目的の逆転の発想で、事務負担軽減のために、渡切り手当を、税金等を考慮して手取額が減らないグロスアップ計算で算定することも一つの考えです。
毎月5,000円の渡切り支給を、所得税率と住民税率および雇用保険料率の合計(例えば所得税率20%の人の場合30.72%)で割り返して、5,000円÷(1-30.72%)=7,217円となります。7,217円から税金等相当2,217円を差し引いて、実質5,000円です。追加となる税金等相当2,217円と事務負担とを比較し、どちらの方法がより負担が少ないか決めることも良いかもしれません。