年: 2021年

小規模宅地等の課税価格の減額 「同居」はいつから?

小規模宅地等の課税価格の減額
「同居」はいつから?

小規模宅地等の課税価格の減額 「同居」はいつから?

「同居するのが一番の節税」と聞きますが

「同居をするのが一番の節税」という言葉をたまに耳にします。所得税に同居老親等(扶養控除)や同居特別障害者(障害者控除)という制度もありますが、ここでは節税効果の高い相続税の「小規模宅地等の課税価格の特例」のことを言っています。
相続税では、居住用や事業用の宅地は、被相続人らの「生活の基盤」となっており、その処分に相当の制約があることから、一定の限度面積まで、課税価格の 80%(又は50%)の減額を認めています。これを「小規模宅地等の課税価格の特例」といいます。

特定居住用宅地等の要件

被相続人の居宅の敷地となっている宅地を同居していた親族が相続等により取得した場合に、次の要件を充たすときは、「特定居住用宅地等」とし 80%減額(330 ㎡まで)を受けることができます。
(1)居住継続要件
相続開始時から相続税の申告期限まで、引続き、その居宅に居住していること
(2)保有継続要件
その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

条文に「同居はいつから」とは明記なし

この場合、同居親族が相続開始時から申告期限までには、被相続人の居宅であった家屋に住み続けばならないと規定はされていますが、同居親族が被相続人と「いつから同居しなければならない」とは、条文に明記されていません。少しの間でも、被相続人と亡くなる直前まで一緒に住んでいればよいということになります。

ご近所に聞かれても、平気なように!

だからといって、税務調査の際にチェックされないわけではありません。「同居」については、実態で判断されます。住民票だけを移している「形だけ」の場合には、同居の実態がないと判断されることがあります。
同居親族への郵便物の所在や同居親族の勤務会社での通勤手当(定期券)の申請状況、子供の学校はどこなのかなど聞かれることがあります。調査官が近所にヒアリングしたときに「おばあちゃん(被相続人)は一人暮らしだと言っていた」など言われてしまうと、同居の実態がないと疑われます。ご近所に聞かれても平気なぐらいの期間は同居していることが望ましいといえます。

M&A経営力向上計画申請

M&A経営力向上計画申請

M&A経営力向上計画申請

経営力向上計画策定の手引き

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が施行されたのに合わせて、中小企業庁は、「経営資源集約化税制の活用について」につづき、「経営力向上計画策定の手引き」を公表しました。

支援機関のサポートで計画策定

「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。
また、計画申請においては、認定登録経営革新等支援機関としての専門家のサポートを受けることが予定されていて、経営診断ツールにより計画策定ができるようにもなっています。

認定を受けられる経営力向上計画

事業分野を所管する省庁が作成した、事業分野別指針が用意されています。申請者は、その指針を踏まえて、案内されている、「経営力向上計画 申請書作成の手引き」その他を参考にしながら、記載例に従って経営力向上計画を策定します。
経営状況を書くところは、ローカルベンチマークの算出結果を記入するようになっているので、経済産業省のホームページにあるローカルベンチマーク(ロカベン)シートをダウンロードすることになります。

申請にはDDチェックシートの添付が必須

経営力向上計画申請には、事業承継等事前調査(デューデリジェンス)チェックシートを添付しなければなりません。
法務に関する事項(弁護士実施)と財務・税務に関する事項(税理士・公認会計士実施)とは絶対必要デューデリとされています。ITコーディネーターや中小企業診断士等のコンサルタントのデューデリを必要に応じて実行することもあり得ます。

申請はオンラインで

経営力向上計画申請プラットフォームで電子申請が可能になっています。令和4年4月からは、完全電子化となります。
経営力向上計画申請プラットフォームから電子申請するには、GビズIDを事前に取得しておく必要があります。
GビズIDプライムアカウントの発行には、2週間程度要するとされています。

 

知らないで、年金の請求漏れ

知らないで、年金の請求漏れ

知らないで、年金の請求漏れ

気づかないもらえるはずの厚年基金

もらえるはずの年金を請求していない人が多くいることをご存じですか? 年金制度に対する知識不足、勘違いが主な原因です。
厚生年金基金は年金請求漏れが多い代表です。公的年金である厚生年金に上乗せ給付する企業年金で老齢厚生年金の一部を国に代わって支給します。年金基金は解散等で短期間加入者等の原資は企業年金連合会に移っています。未請求は 2021 年には116.6 万人いると言われています。年金の受給年齢になれば通知はしても、住所変更・氏名変更などで封書が届かないケースも 65万人いると言います。加入していても給与天引きで知らない人が多く、請求できるという意識すらありません。しかし 1 か月でも加入していれば受給でき、少額でも生涯もらえるので加入記録を見てみましょう。

国の年金請求漏れ

年金の支給開始は 65 歳が原則ですが、60歳から 64 歳を対象とした特別支給の老齢年金が受け取れる場合があります。平均的な年金月額は 10 万円前後、給与が一定水準であれば受け取れます。これを 65 歳から受け取る年金の繰り上げ受給と勘違いして、減額されると思って請求しないケースがありますが、特別支給の老齢厚生年金とは別物です。また、遅らせても増えることはなく時効にかかれば請求はできなくなります。

年金の家族手当と言われる加給年金

厚生年金に 20 年以上加入している人で生計維持関係にある配偶者がいれば配偶者が 65 歳になるまで加算、年約 39 万円です。
夫婦共働きや一方が扶養の範囲内を超えていると受け取れないと勘違いをしていますが、受給できる方が多いのです。夫が年上で妻が 65 歳になると夫の加給年金は妻の振替加算に変わります。妻が年上だと夫の加給年金はありませんが、妻に振替加算がつきます。振替加算の請求を出しましょう。

未支給年金

未支給年金は公的年金を受給している人が亡くなった場合、請求できます。亡くなった月までを支給されます。遺族年金をもらえない、同居ではない、相続人ではない等も、もらえないケースばかりではありませんので確認しましょう。請求は亡くなった日から 5 年以内。もれずに手続きをしたいですね。

 

ひいきのお店にも反面調査 「1人飲み」で重加算税

ひいきのお店にも反面調査
「1人飲み」で重加算税

ひいきのお店にも反面調査 「1人飲み」で重加算税

「1人飲み」を交際費としていたことで…

最近は、コロナ禍ということもあり、どの法人も交際費支出がすっかり減りました。
そのような雰囲気の中、令和3年1月に東京高裁が出した判決が税理士の間で話題になりました。
ある社長がクラブの利用代金を会社の交際費として会計処理をして申告したところ、税務調査を受け、この経費が「個人的な飲食費」ではないかと指摘されました。
実はこの支払は、その社長がひいきにしていたホステスの所属するお店で社長1人で飲んでいたもの。クラブ側にも反面調査も入り、事実が発覚します。会社側は、税務署と交渉して、この支出を「貸付金」として、費用を取消し、修正申告をしました。

交際費は、事業関係者に対する接待・供応

交際費は、①事業関係者に対し、②親睦を深めて、取引関係を円滑にする目的で行う、③接待・供応などの行為をした費用です。誰かを接待しないと、交際費とは認められません。ひいきのホステスと1人で遊興するのは、「個人的な飲食費」とされ、役員賞与とされます。この場合、法人税の損金とされず、源泉所得税も徴収されますので、税金のダブルパンチ。今回は、さらに消費税の控除も取り消されます。

「貸付金」という着地点はよくある話

ここで、実際の税務調査では、調査官から「社長はこの支出を会社に返すつもりですか?返さないつもりですか?」と聞かれることがよくあります。実は、これは「助け船」。貸付金(返すつもり)とすれば、損金として控除できなくても、源泉税の課税は回避できます。これに未収貸付金利息の計上もれと併せて、修正申告に応ずることは、よくある話です。

「隠蔽・仮装」と見られて重加算税賦課

その申告後、この会社に「重加算税」の納付書が届きます。接待をしていないのに交際費として会計処理したことが、「事実(個人的な飲食)を隠蔽し、(交際費に)仮装した」として最も重いペナルティが課されたのです。会社は納得できず裁判へ。「人脈を広げるという意味がある」と主張しましたが、東京高裁は、「(理由が)抽象的」「接待の相手方と業務の関連性の具体的説明がない」と控訴棄却の判断をしました。

令和 4 年 1 月 1 日から施行 電子帳簿保存法の補足説明

令和 4 年 1 月 1 日から施行
電子帳簿保存法の補足説明

令和 4 年 1 月 1 日から施行 電子帳簿保存法の補足説明

電子帳簿保存法の改正

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和 3 年度の税制改正において「電子帳簿保存法」の改正が行われ、令和 4 年 1 月 1 日から施行されます。
改正内容は、電子帳簿等保存に関する事前承認の廃止や、タイムスタンプ等を利用した優良な電子帳簿については過少申告加算税の軽減措置、最低限の要件を満たす電子帳簿についても電磁的記録として認める、スキャナ保存についても要件の緩和等、以前の状態からかなり使いやすくなった印象です。

問題は電子取引に関する改正事項

この電子帳簿保存法改正で、一番頭を悩ますのは「電子取引に関する改正」です。多くの方が「えっ!?」と思うのは「電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました」という一文です。
今まで領収書をメール等で受けとって、それを紙で出して保存していたという会社も多いとは思いますが、それが原則禁止となってしまいます。

罰則はあるのか?

国税庁は「電子帳簿保存法一問一答」という文書で「保存要件を満たさないため、全て書面等で出力して保存しているのだが、青色申告の承認取り消しや、経費として認めないということはあるのか?」という問いに対して「青色申告の承認の取り消し対象となり得る」と回答しました。
この回答については問合せがとても多かったのか、後に「お問合わせの多いご質問」として補足説明を出しており「書面保存等していた場合でも、それ以外の特段の事由がないにもかかわらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではない」と、表現をとても柔らかなものへ変更しています。つまりは、電磁的な保存をしていなくても、それだけでは青色の取り消しや経費の否認はないということです。

上場株式の譲渡所得課税

上場株式の譲渡所得課税

上場株式の譲渡所得課税

令和3年も終盤となりました。上場株式を売却した人の確定申告や損益通算について押さえておきましょう。

まずは源泉徴収済みかを確認!

株式で売却益のある人には、原則として確定申告が必要になりますが、証券会社に源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収口座)を開設している人は、既に譲渡所得に課税済みとなっていますので、申告の必要はありません。一方、源泉徴収なしの特定口座(簡易口座)や一般口座の人には源泉徴収されていませんので確定申告が必要になります。証券会社から送付される特定口座年間取引報告書等で源泉徴収の有無を確認し、申告漏れとならないように注意しましょう。

税率は 20.315%

上場株式の譲渡所得に対する税率は、20.315%(所得税 15.315%、住民税 5%)です。譲渡所得は、株式の売却金額から取得費と証券会社の委託手数料を控除した残額です。これに上記の税率を乗じて所得税額と住民税額(株式等譲渡所得割額)を計算します。取得費は株式の購入価額ですが、同じ銘柄を複数回にわたり購入した場合は、総平均法に準ずる方法(移動平均法)により取得費を計算します。

申告分離課税で損益通算

上場株式の譲渡損失は源泉徴収のあるなしにかかわらず、申告分離課税による確定申告をすれば他の上場株式の譲渡所得および配当所得等と損益通算して、税額の還付を受けることができます。同じ源泉徴収口座内である場合は、証券会社が損益通算するので申告手続きは不要です。また、配当所得等を源泉徴収口座に取り込み、譲渡損失との損益通算もできます。

控除しきれない金額は繰越控除

その年分で損益通算してもなお控除しきれない譲渡損失は、翌年以後3年間にわたり繰り越して各年分の譲渡所得や配当所得等の金額から控除できます。この取扱いを受けるには、毎年連続して申告分離課税による確定申告が必要です。過去3年以内に譲渡損失の繰越控除の適用を受けた人は、その年に株式売却がなくても確定申告が必要となるので注意しましょう。
また、所得税を申告分離課税とし、住民税は申告不要とする選択もできます。令和3年分の確定申告からは、配当所得等、譲渡所得の全部を条件に確定申告書に記載するだけで住民税を申告不要にできます。

70 歳までの継続雇用 マルチジョブホルダー制度

70 歳までの継続雇用
マルチジョブホルダー制度

70 歳までの継続雇用 マルチジョブホルダー制度

65 歳からは 65 歳までと違った点に考慮

高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月から70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となっています。ただ、従来の65歳までの継続雇用制度では定年後の業務内容は定年時(60歳)と同じとするケースが多いようですが、65歳以降は身体機能や健康状態の個人差も大きくなってゆく年代です。就業機会は単に70歳まで伸ばせばよいというわけにはいかないでしょう。
継続雇用を、後進の育成など企業が期待する業務を担当してもらう、専門性を生かし業務を継続する等、定年後の職務、処遇の変化に合わせ単に年齢で区切るのではなく各個人に合わせた継続雇用の制度が求められます。

2022 年 1 月からマルチジョブホルダー制度

従来の雇用保険制度は、主たる事業者での労働条件が週所定労働時間 20 時間以上かつ 31 日以上の雇用見込み等適用条件がありました。これに対し「雇用保険マルチジョブホルダー制度」は複数の事業所で勤務する 65 歳以上の労働者が、そのうち 2つの事業所での勤務を合計して以下の適用対象者の要件を満たす場合に本人からハローワークに申し出を行うことで、申し出を行った日から特例的に雇用保険のマルチ高年齢被保険者となることができる制度です。

適用条件は

1. 複数の事業所に雇用される 65 歳以上の労働者であること
2. 2 つの事業所(1 つの事業所における 1週間の所定労働時間が 5 時間以上 20 時間未満)の労働時間を合計して 1 週間の労働時間が 20 時間以上であること
3. 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31 日以上であること
これによりマルチ高齢者被保険者が失業した場合は一定の要件の下、高年齢求職者給付金(加入期間に応じて基本手当の 30 日分か 50 日分)の一時金が受給できます。
希望する本人自身が手続きをします。会社では本人からの依頼があれば雇用の事実や所定労働時間などの証明を出す必要がありますし、保険料も納付します。65 歳以上の短時間勤務で働いている人がいる場合は、複数の会社で働いているか確認しこの制度を知らせてあげるとよいでしょう。

国税のスマホ決済延期

国税のスマホ決済延期

国税のスマホ決済延期

令和 4 年 1 月 4 日に間に合わない

国税庁は令和 3 年 9 月 21 日、3 年度税制改正で発表していたスマートフォンを利用した決済サービスを、4年1月4 日からの開始としていたところ、4 年 12 月に延期することを明らかにしました。
令和 3 年 6 月に、スマホアプリ納付を実現するために必要なシステムなどを構築する事業者の調達手続きを行ったところ、新型コロナウイルス感染症の中、デジタル投資の加速に伴う ICT 人材不足等もあり、入札者が現れず、事業者の決定に至らなかったようです。

地方税は先に導入が進んでいる

地方税を見てみると、各都道府県・市区町村によって取扱いの決済アプリの種類は異なるものの、スマホ払いで普通徴収の都道府県・市区町村民税や軽自動車税、国民健康保険料等が支払えるサービスが進んでいます。利用できる決済アプリは自治体によって異なるものの、PayPay、LINE Pay、PayB、楽天銀行アプリ、銀行Pay(ゆうちょPay)、au PAY、FamiPayなど、多岐にわたります。導入の数を見てみると、市井でのシェアの高いPayPayとLINE Payの採用が多いようです。
地方税でのスマホ決済の普及は令和元年10 月に「地方税共通納税システム」が導入され、電子申告に加えて電子納税が可能になり、自治体の事務負担が軽減されたことも背景にあるようです。

IT人材の不足は深刻?

経済産業省の調査によると、令和 12 年には IT 人材の不足数が最大で 79 万人になるという試算が出ています。これは IT 業界の急成長、スマートフォンの台頭をはじめとした IT 技術の急速な変化、少子高齢化による人材不足等が原因とされています。エンジニア不足への対策として、企業では採用年齢の引き上げや待遇改善を打ち出し、政府対応としては 2 年度から小学校でのプログラミング教育が必修化されましたが、現状国税のスマホ決済システムの構築に至れなかった事実があり、IT人材の不足は深刻なのかもしれません。
国税庁は税務行政のデジタルトランスフォーメーションを掲げていますが、解決すべき課題は外的環境にも多く存在しています。

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

バフェット・ルール

新聞にかつて、アメリカの投資家バフェット氏が、彼自身の連邦所得税は 693 万8744 ドルで税率 17.4%、「私のオフィスに勤める 20 人の社員の平均(36%)よりも低い」、こんな富裕層優遇税制は是正されるべきと述べたとの記事がありました。
これを承けた、年収 100 万ドル超の富裕層に増税する、バフェット・ルール課税案が米議会に提出されましたが、未だに日の目を見ていません。

バフェット氏の所得の内訳

アメリカの投資所得分離課税率 15%、総合課税最高税率 37%とすると、
①A×15%+B×37%=$6,938,744
②(A+B)×17.4%=$6,938,744
A=$35,527,529(89%)
B=$ 4,350,310(11%)
となり、バフェット氏の所得の 89%が投資家所得で、$100 円として 35 億円余であったことになります。

日本では 100 億円で 15.9%

投資家所得への低率の比例課税が、担税力に反比例する金持ち優遇税制となっている現象は、日本が世界一過激です。
税制調査会資料によると、日本の申告所得者の統計データでは、100 億円のところでは、15.9 億円(15.9%)が平均的税負担とされています。
①A×15.315%+B×45.945%=15.9 億円
②(A+B)×15.9%=15.9 億円
A=9,809,010,774(98.09%)
B= 190,989,226( 1.91%)
実効税率 15.9%は課税所得 900 万円未満のレベルでの税負担です。
その上、何億円の所得があっても、源泉分離課税の株式関連所得は申告不要に出来るので、申告所得税の統計資料には、全体像は示されていません。

岸田文雄首相の提案

岸田文雄首相は、自民党総裁選でバフェット・ルール的な「金融所得課税の見直し」を公約に掲げ、その後の衆院選を前に当面撤回などとしましたが、選挙後は、党税調・政府税調に見直し議論の要請をしました。
地球温暖化やTAXヘイブン対策、GAFA税逃れ問題と同じく、担税力に逆進的な不公平税制も、先進各国共通の解決すべき喫緊の課題です。比例税率を改める、あるべき税制の形を世界に示すべきです。

M&A投資損失準備金税制適用手続

M&A投資損失準備金税制適用手続

M&A投資損失準備金税制適用手続

中小企業事業再編投資損失準備金制度

令和3年度税制改正で創設された「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」の適用が出来るのは、認定経営力向上計画に従って購入取得したM&A株式の取得価額の 70%以下額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てをし、積立金額の計算明細書を添付した申告書を提出することが出来る場合です。

適用手続をし得る中小企業

この税制の適用を受けるための前提となっている、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の申請をし、認定を受けることが出来るのは、特定事業者等(常時使用する従業員数が 2000 人以下の法人または個人)に該当する事業者のみです。
M&A株式の売主側についても、特定事業者に該当する必要があります。
他方、税制の適用を受けるためには、申告者が租税特別措置法上の中小企業者等(資本金又は出資金の額が1億円以下の法人)に該当する必要があります。

計画申請・認定・確認の手続の流れ

① M&Aの交渉相手が定まったタイミング(基本合意後等)で、経営力向上計画を策定し、主務大臣の認定を受けます。認定申請時には、「事業承継等事前調査チェックシート」を作成し、添付します。認定の標準処理期間は 30 日とされています。
② 認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、主務大臣に対して事業承継等を実施したこと及び事業承継等事前調査を実施したことについて報告し、経営力向上計画実施確認書の交付を受けます。
③ 税務申告に際しては、①の申請書と認定書の写し、②の確認書の写しを添付しなければなりません。

準備金積み立て手続

準備金積み立ては、損金経理の方法で、若しくは、決算確定手続での剰余金の処分による方法で行なわなければなりません。
この積立金は、法令の規定に拠るものなので、必ずしも株主総会の決議を経る必要はありません。

事後手続

経営力向上計画では、3~5年の計画実施期間を設定することになっており、毎年の事後状況報告を行うことになっています。
これを怠ると認可取消し・積立準備金の全額取崩しとなってしまいます。