月: 2021年12月

青色申告 65 万円控除と 電子帳簿保存法

青色申告 65 万円控除と
電子帳簿保存法

青色申告 65 万円控除と 電子帳簿保存法

e-Tax しないが 65 万円控除は受けたい

令和 2 年分以後の所得税について、青色申告特別控除の適用要件が改正され、65 万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、それまでの要件に加えて、e-Tax による申告か、電子帳簿保存を行うことが必要になりました。
個人事業主の方の中には、「e-Tax ができない」という方がいらっしゃるかもしれません。今回は、電子帳簿保存で 65 万円控除を受ける場合の手続きを解説してみます。

改正もあるがあまり変わりなし

電子帳簿保存法については、令和4年1月 1 日から適用される改正があり、これまで電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担軽減のために、不要とされました。
ただし、この「事前承認不要」はあくまで電磁的記録による保存を開始する場合の話で、65 万円の青色申告特別控除の適用を電子帳簿保存によって受けたい場合は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書」を提出する必要があります。
また、一般的な電子帳簿保存については正規の簿記の原則に従って記録されるものであれば、最低限の要件を満たす電子帳簿についても電磁的記録による保存が OK となったのですが、65 万円の青色申告特別控除の適用を受ける場合については「優良な電子帳簿」の要件である、検索要件や帳簿間の相互関連性の確認など、より高度な措置が必要となります。

過少申告加算税 5%軽減のため?

電子帳簿保存法に適合する優良な電子帳簿を作成するのに比べ、インターネット環境とマイナンバーカードくらいの準備で e-Tax はできます。65 万円の青色申告特別控除の適用を受けるための選択としては、e-Tax を行う方が圧倒的に楽です。
青色申告特別控除の要件とは別に、今回の改正で「優良な電子帳簿」の保存要件を満たしていれば、記録された事項についての申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が受けられるので、そちらを受けようとする場合には申請を行う、くらいの気持ちで良いのかもしれません。

消費税の課税の対象 宇宙空間にある人工衛星の譲渡

消費税の課税の対象
宇宙空間にある人工衛星の譲渡

消費税の課税の対象 宇宙空間にある人工衛星の譲渡

民間宇宙ビジネスは急成長分野

米企業家のイーロン・マスク氏が設立したスペースX社は、民間企業の製造・所有する宇宙船を用いて、初の国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に成功しました。
人工衛星の打上げ費用も2億ドルはかかると言われていた時代から、近年では 6,000万ドルまで削減。ホリエモンこと堀江貴文氏も「世界一低価格で便利なロケット」の開発を目指すと、宇宙ビジネスに参入しています。動向が非常に気になる事業分野となってきましたね。

20 年前に人工衛星の消費税の取扱い?!

税理士が用いる判例データベース TAINSには、判例・条文の他、情報公開法に基づく開示請求により入手した様々な行政文書が掲載されています。これを見ると、たまに面白いものに当たることあります。
今回は、平成 12 年の国税庁の消費税課の資料で「人工衛星の輸入、打上げ、宇宙空間における譲渡」を取り上げましょう。
内容は、外国法人A社が保有する人工衛星を、日本法人B社を輸入者として日本に輸入。その人工衛星の打上げを委託された日本法人C社が日本から衛星を打上げ。その後、衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認後、A社からD社に人工衛星を譲渡したというシチュエーション。これら①輸入・②打上げ・③宇宙空間における譲渡の消費税の取扱いが記されています。

宇宙空間にある人工衛星を譲渡したら?

それぞれの取扱いは、次のように示されています。
①人工衛星の輸入取引
輸入名義人のB社の仕入税額控除となる。
②人工衛星の打上げを受託した場合
非居住者(外国法人A社)の依頼により行う人工衛星の打上げは、非居住者に対する役務の提供に該当し、輸出免税となる。
③宇宙空間にある人工衛星の譲渡
消費税法上、国内とは「この法律の施行地」をいい、宇宙空間はどの国の主権も及ばない区域である。衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認した後に行われる人工衛星の譲渡は、資産の譲渡が行われた時に資産が国外に所在するため、国内取引に該当せず、日本の消費税の対象とならない。

マイナポイント・GOTO・ふるさと納税等 お得に潜む一時所得

マイナポイント・GOTO・ふるさと納税等
お得に潜む一時所得

マイナポイント・GOTO・ふるさと納税等 お得に潜む一時所得

マイナポイント第2弾実施予定

マイナンバーカードの普及とキャッシュレス決済の普及促進を目的とした、マイナポイント制度は来年第2弾を実施予定です。
マイナンバーカードを取得し、キャッシュレス決済サービスとのひも付けをし、チャージまたは決済で最大 5,000 円、健康保険証の利用登録をすると 7,500 円、公金受け取り用の預貯金口座の登録をすると7,500 円の、各種ポイントが付与されます。

マイナポイント「だけ」は一時所得

国税庁は個人が商品を購入する際に決済代金に応じて企業から付与されるポイントについては「通常の商取引における値引き」と同様の行為が行われたと考えられ、所得税の課税対象にならないものと説明をしています。ただし、マイナポイントについては「商取引ではなく決済前のチャージ等を行った際に付与されるもの」で、「通常の商取引における値引き」ではないので、その経済的利益は一時所得として所得税の課税対象となる、としています。

一時所得は合算で計算される

課税される一時所得の計算は(貰った額-払った額-50 万円)×1/2=課税される一時所得の額となります。50 万円の特別控除があるため、マイナポイントの付与だけでは課税は発生せず確定申告も必要ありません。
ただし、新型コロナウイルス感染症の経済対策である「GOTO キャンペーン」の支援された額や「ふるさと納税」のお礼の品についても一時所得とみなされ、一時所得の計算の「貰った額」については、一時所得の合算で計算されるため、各種お得な仕組みを利用していたらいつの間にか大きな金額になっていた、ということも考えられます。

他にもいろいろ一時所得

他にも「住まい給付金」や「生命保険の満期払戻金」、「懸賞や福引の賞金品」、「競馬の払戻金」など、さまざまな「ちょっとしたお金」が一時所得に該当します。
近年ではふるさと納税のお礼の品の価値が 50 万円を超え、申告をしなかった方が申告漏れを税務署に指摘された、というケースも確認されています。ご留意ください。

健康保険傷病手当金通算期間変更

健康保険傷病手当金通算期間変更

健康保険傷病手当金通算期間変更

2022 年 1 月よりの健康保険の改正内容

この度、健康保険法の改正が行われます。
その中で実務に影響が大きい改正を 3 点取り上げます。

① 傷病手当金の通算化
(令和 4 年 1 月 1 日施行)

傷病手当金は私傷病により労務不能になり賃金が受けられない場合に、労務に服することができなくなった日から起算して 4日目以降に支給される健康保険の給付金です。今までの支給期間は支給開始日から 1年 6 か月を超えない範囲とされていました。
例えばがんなどで入院退院を繰り返していると一時的に就労して傷病手当金を受けていなくとも、その期間も通算され 1 年 6 か月経過すると、それ以降同じ傷病で入院しても傷病手当金は不支給になっていました。
改正で支給期間は、支給開始日以降に就労していても、実際に 1 年 6 か月の分の給付を受けるまでは傷病手当金を受給できます。

② 任意継続被保険者制度の保険料や被保
険者資格喪失(令和 4 年 1 月 1 日施行)

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職し資格を喪失した後も最長 2年間、資格喪失前の健康保険に加入することができる制度です。この資格喪失時期が「任意継続被保険者となった日から 2 年を経過したとき、保険料を納付期日までに納付しなかったとき」となっていました。任意の資格喪失ができなかったので改定され任意継続被保険者が申し出たとき、受理された日の属する月の月末で被保険者を資格喪失できることになりました。
また保険料は、イ.退職前の標準報酬月額か、ロ.保険者全被保険者の平均標準報酬月額、どちらかの低い額でしたが、今後は健保組合で定めればイを基礎とすることができます。健保組合によっては従来と変更される場合があり注意が必要です。

③ 育児休業中の保険料免除要件の見直し
(令和 4 年 10 月 1 日施行)

育児休業中の社会保険料免除は今までは月末の時点で育児休業をしていれば当月保険料は免除となっていました。短期間の育児休業の時では月末日に休業しているか否かで免除が変わってしまうので不公平感があり改定されました。改定後は月末を含まなくても 14 日以上休業した月、賞与は育休期間 1 か月以上の時免除とされました。

収入と扶養の関係

収入と扶養の関係

収入と扶養の関係

収入の壁とは

秋になる頃、パートやアルバイトなどで働く方は、「年収はいくらまでに抑えるのがよいか?」と扶養の範囲を意識することも多いでしょう。税制上と社会保険上の両方に扶養範囲の壁がありますが、夫が会社員で主たる生計者年収 600 万円、妻パートのケースで考えてみましょう。

税制上の壁としては年 100 万円を超える収入があると住民税の課税が始まり、103 万円を超えると所得税が発生します。
妻の所得税は配偶者特別控除で年収が150 万円までは減額されず、150 万円を超えると控除が徐々に減額されていきます。そして 201.6 万円以上で配偶者特別控除はなくなります。

社会保険の壁としては妻が社会保険上の被扶養者ならば社会保険料は収めずに夫の加入している健康保険を受けられ、年金も国民年金の 3 号被保険者で基礎年金に加入していることになります。
しかし、妻が月 8.8 万円(年収 106 万円)となると妻自身が勤め先の社会保険に加入することになります。ただし条件があり
① 従業員数 501 人以上事業所
② 雇用期間 1 年以上(見込み含む)
③ 週 20 時間以上勤務
④ 学生ではない
の条件が付いています。2022 年 10 月からは従業員数の条件が 101 人以上、2024 年からは 51 人以上になる予定です。
さらに年収が 130 万円以上になると、前の条件にかかわりなく妻自身が社会保険に加入することになります。

扶養の範囲にするかライフタイルで考える

税制上の扶養を少し外れても、社会保険の扶養を外れることと比べれば金銭的負担はずっと少ないと言えます。
社会保険は加入すれば病気の時の傷病手当金や出産する際は手当金が受けられます。
年金も長生きすることが多い女性は妻自身の年金額が増えることは心強いでしょう。
壁を超えるのは損という考えでいくか、収入を増やさなければ手取りも増えないので税金や社保料を負担しても収入を増やそうとするとするか、家族や会社とも話し合いをしての選択でしょう。

ローンを組めない芸能人の 個人事務所が保有する社宅課税

ローンを組めない芸能人の
個人事務所が保有する社宅課税

ローンを組めない芸能人の 個人事務所が保有する社宅課税

芸能人は住宅ローン審査で大苦戦

華やかで売れっ子に見えていても、現実には“ローンを組めない”など、意外に厳しい境遇にあるのが芸能人やスポーツ選手です。安定した収入があるサラリーマンとは違い、水物の人気商売の芸能人や稼動期間が短いスポーツ選手に対しては、長期の保証の担保が取れないため、金融機関側も、ローン審査では評価せず、必然的に対応が厳しくなるようです。
売れっ子で現在の年収が億超えであっても、ローンが組めないため自宅を購入できず、“そんな家賃を毎月支払うなら買った方が得”というような高級賃貸住宅に住んでいるのが多いというのはこうした背景事情が影響しているようです。

個人事務所で購入した住宅に住む際の課税

節税のため、個人事務所を作っている芸能人は少なくありません。個人事務所で、蓄積した儲けを使い、事務所名義で取得した住宅に住んだ場合はどのような課税が発生するのでしょうか。節税のための事務所なので、会社形態であり、会社の実質所有者(=役員)がそこに住む芸能人であることを前提とします。
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から 1 か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、給与として課税されません。
芸能人の豪邸の場合、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅でしょうから、計算される賃貸料相当額は、次のイとロの合計額の 12 分の1 が月額賃料として計算されます。

イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%(法定耐用年数が 30 年を超える建物の場合には 10%)。

ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

結局、一括購入しても、月々の家賃を支払わないと余計な税金が発生することになるので、賃貸住宅に住む形態となります。

大手事務所の寮や社宅の課税は?

一方、大手事務所が所属する若いタレントを自社が保有する住宅や他社から賃貸した住宅に住まわせているケースでは、賃貸料相当額の計算が変わってきます。
この場合は、使用人として所定の賃貸料相当額を受け取っていれば、給与として課税されません。また。食事の提供等がある場合には、それなりの費用の徴収をしなければ給与課税の問題となります。

ふるさと納税と 住宅ローン控除

ふるさと納税と
住宅ローン控除

ふるさと納税と 住宅ローン控除

住宅ローン控除とふるさと納税の誤解

個人の所得・控除によって決まる控除上限金額までの寄附なら、自己負担が 2,000円で返礼品が貰えるふるさと納税制度。「お礼の品で地方の特産品が貰えてお得なのは知ってるけど、ウチは住宅ローン控除がたくさんあるからふるさと納税できないのではないか」と躊躇している方が居るかもしれませんが、実は住宅ローン控除がたくさんあっても、ふるさと納税がお得に楽しめるケースが圧倒的に多いのです。

控除上限額は住宅ローンでは変わらない

ふるさと納税の控除上限金額は、大まかにいうと「所得に対する住民税の額」の大小によって決まります。住宅ローン控除は所得税を引き切ってしまった場合、特例として残っている住宅ローン控除の額で、定められている限度額までは住民税を引いてくれますが、その住民税を引く計算は「税額控除額」という扱いとなっていて、ふるさと納税の控除上限金額を計算する上での「所得に対する住民税の額」には影響しないような作りになっています。
よって、住宅ローン控除がいくらであっても、ふるさと納税の控除上限金額に変化はありません。ただし、「所得税を引き切っていて、住民税を定められている限界値まで引いている」場合で、ふるさと納税を確定申告した場合、「税金を引けない部分が出てしまう」ことで、上限以内の寄附でも自己負担が 2,000 円以上かかるケースがあります。

自己負担は 2,000 円では済まないが得?

「自己負担が 2,000 円以上かかる」とはいえ、税が減らないのは所得税部分のみとなるため、自己負担が増える額は少ないのです。住民税側の控除は行われるため、寄附によって貰えるお礼の品の価値を考えると、控除上限金額までの寄附であればお得感がある場合が多くなります。
また、住民税を限界まで引いていたとしても、確定申告をしない方で 5 か所以内の自治体への寄附であれば利用できる「ワンストップ特例制度」を使えば、住宅ローン控除で自己負担が 2,000 円で済まない問題は無視できます。
不安な方はワンストップ特例制度を積極的に利用するとよいでしょう。

税金よもやま話 埋蔵金を見つけたら?

税金よもやま話
埋蔵金を見つけたら?

税金よもやま話 埋蔵金を見つけたら?

夢とロマンに溢れた埋蔵金にもかかる税

以前はよくテレビでやっていた埋蔵金発掘番組ですが、最近は見かけませんね。はやりが終わってしまったのでしょうか。
「埋蔵金なんてないよ」と思われている方も多いかもしれませんが、昭和、平成と実際に小判がざくざくと出てきた例もあります。ちなみに埋蔵金を見つけた場合、残念ながら税金がかかります。

埋蔵金獲得まで 6 か月待ちます

まず埋蔵金、もしくは埋蔵物を見つけた、あるいは掘り当てた場合、警察に届けます。
これを怠ると「遺失物等横領」になってしまいます。ちなみに、自分の土地を掘ったりした場合でも「知らないものがでてきた」という場合は遺失物になりますから注意しましょう。
警察は遺失者、つまり「落とした人」を調べるのですが、6 か月間公告して、遺失者が見つからなかった場合は発見した人が埋蔵金や埋蔵物の所有権を取得することになります。土地の所有者と発見者が異なる場合は、2人で等しい割合で所有権を折半することになります。
もし落とし主が現れた場合は、報奨金として物件の価格の 5~20%を「お礼」として貰えます。

「文化財」の場合、モノは貰えない

掘り当てたものが文化財保護法を適用する「文化財」の場合は、所有権を取得することはできませんが、そのものの価値に相当する報奨金を貰うことができます。また、発見者と土地の所有者が異なる場合は、遺失物同様、報奨金は折半されます。
過去にテレビが追い求めていた「徳川埋蔵金」がもし見つかったら、おそらく歴史的価値があるため、文化財になるのではないでしょうか。

取得や報奨金受け取り後に税金の出番

遺失物や埋蔵物の発見により、新たに所有権を取得する資産や、発見者等が受ける報奨金については、一時所得として課税されます。一時所得の計算は(収入-必要経費-特別控除最高 50 万円)×1/2=所得金額です。

相続登記が義務化されます

相続登記が義務化されます

相続登記が義務化されます

相続登記は3年以内に

令和3年4月に成立した改正不動産登記法では、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務付けられました。これまで登記未了であった全ての不動産にも適用され、正当な理由のない申請漏れは、10 万円以下の過料の対象となります。新制度は成立後3年以内、令和6年までに施行される予定です。経過措置により施行日前の相続・遺贈の場合、令和6年までの施行から3年間が登記申請義務の履行期間となります。

新たに相続人申告登記制度がスタート

相続人の申請義務を簡易に履行できる「相続人申告登記制度」が新設されました。
相続登記されないまま長期化すると所有者不明土地を生み、行政に支障をきたす原因にもなります。このため、相続人申告登記では遺産分割未了であっても登記名義人について相続が開始したこと、相続人の氏名・住所を登記に付記することで登記義務を履行できることとしました。遺産分割未了のため、持分の登記はありません。後日、遺産分割協議が整ったときは遺産分割成立日から3年以内に、協議の結果を踏まえた登記申請が義務付けられます。

とりあえず法定相続分での登記に注意!

もちろん、遺産分割未了の状態であっても従前どおり相続開始後3年以内に、とりあえず法定相続分で暫定的な登記を行い、遺産分割協議が調った後に登記し直すことも可能です。
しかし、法定相続分で登記をしても遺産分割協議前であれば不動産の利用、売却等には共有者の間で何らかの同意が必要となります。相続人が死亡すると権利者は更に増えて、遺産分割は難航必至です。

相続人申告登記も遺産分割は先送りのまま

相続人申告登記を行って遺産分割協議を続行する場合も、民法上は、法定相続分で共有されたままですので、不動産の利用、売却等に際し、共有者の間で同意が必要となることに変わりなく、相続人申告登記も遺産分割の先送りに過ぎません。

それぞれの事情を斟酌した遺産分割協議を

相続した不動産は相続人の居住用とするか、賃貸用とするか、売却をいつするかなど有効利用をはかり、そのうえでそれぞれの相続人の事情を斟酌した速やかな遺産分割協議ができるかがポイントになるのではないでしょうか。

70%損金算入の税制

70%損金算入の税制

70%損金算入の税制

施行されたのか、未だなのか

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が令和3年8月2日に施行されました。
この施行は、改正産業競争力強化法等一括法の施行日からとされていたためか、財務省や国税庁での案内はなく、この施行を広報したのは、中小企業庁でした。
なお、一括改正法の施行は、法公布日(6月 16 日)、公布後1ヶ月以内、3ヶ月以内、1年以内、と分かれていたので、経営資源集約化税制の施行と関連のあるものの施行の判別が分かりにくい状態でした。

中小企業庁が主導しての推進

中小企業庁は、8月2日に、「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」を公表しました。
先の施行日を待っていたような対応で、中小企業庁の主導の下での「経営力向上計画」認定申請等の様々な手続きを経る必要があります、という案内をし始めました。

中小企業事業再編投資損失準備金制度

この税制は、令和6年3月 31 日までに株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額 10 億円以下に限る)に、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の 70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入される、というものです。
ただし、この準備金は、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入します。

税制によるリスク対策支援措置

この制度創設の趣旨については、税制改正大綱は、「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」とし、財務省の税制改正パンフレットは、「M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とし、「税制改正の解説」も、中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

準備金の臨時取崩しでの益金算入

準備金の任意取崩し、経営力向上計画の認定取消し、本税制対象子会社の解散・合併消滅、その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)、その株式の譲渡、青色申告の取消し、等々の場合には、準備金の全部又は一部の取崩しをし、益金算入することになります。