日: 2021年12月23日

気をつけたい相続発生時の税務 不動産の遺産分割が未了の場合

気をつけたい相続発生時の税務
不動産の遺産分割が未了の場合

気をつけたい相続発生時の税務 不動産の遺産分割が未了の場合

固都税は「相続人代表者指定届出」を提出

亡くなられた方が有していた不動産の所有権は、遺産分割協議が成立するまでの間は定まりません。法務局の登記簿上は亡くなられた方の氏名のままで、相続の権利がある方全員が所有者という状態(共有)になります。その期間の不動産に対する固定資産税・都市計画税の納税については、市役所に「相続人代表者指定届出」を提出することで、市役所との対応窓口となる相続人の代表者を定めることとなります。遺産分割協議が成立し、相続登記が済めば、新たな所有者の方に納付書が送付されます。

未分割遺産の不動産所得(所得税)

未分割の不動産が賃貸物件の場合には、遺産分割協議が調うまでの間も、賃貸収益が生ずることとなります。この間に生ずる賃貸収益については、その物件が共有状態であることから、共同相続人の法定相続分に応じて申告することになります。なお、遺産分割協議が調い、分割が確定した場合であっても、その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではありませんので、分割協議で確定した所有状況に基づく更正の請求等を行うことはできません。

消費税の「基準期間における課税売上高」

相続開始年の消費税についても、この法定相続分に応じたテナント収入・駐車場収入が課税売上高となります。なお、遺産分割協議が調った後に、新たな所有者の方が、この共有期間を「基準期間における課税売上高」として納税義務を判定する場合でも、この法定相続分に応じた「基準期間における課税売上高」で判定を行います。

相続税の申告期限までに分割できない場合

この未分割の状態が、相続税の申告期限(亡くなられた日から 10 カ月以内)まで続いている場合でも、税務署は待ってはくれません。この場合、各相続人の財産を法定相続分に応じて取得したものとして計算を行い申告することになりますが、共有状態のままでは、「小規模宅地等の課税価格の特例」の適用を受けることができません。ただし、相続税の申告期限から 3 年以内に分割された場合には、特例の適用を受けることができる措置が設けられていますので、「申告期限後 3 年以内の分割見込書」を申告書に添付して提出することになります。

電子申告での訂正申告と 書類添付の追加手続き

電子申告での訂正申告と
書類添付の追加手続き

電子申告での訂正申告と 書類添付の追加手続き

期限内重複申告への当局の対応

法律上には規定がありませんが、提出期限内に内容を変更した申告書の複数回提出は認められています。これを訂正申告といい、通達では、最後に提出された訂正申告書をもって正式な申告書とする、としています。当局は、訂正申告を、申告書の事実上の差替え行為だと解釈しているようです。
訂正申告では、申告書の上部に「訂正申告」とのメモを記載するとか、提出済みの申告書の収受印のあるページのコピーを添付するとかの配慮も要請されています。

電子申告では

訂正申告は e-Tax の電子申告の場合にも、認められています。期限内に、異なる申告内容の「再送信」によって訂正申告をします。再送信での訂正申告である旨の申し出は不要です。訂正申告の際は、異なる内容の帳票のみでなく、全ての帳票を再送信します。再送信は、自主申告納税者、代理送信税理士、他の代理送信税理士の誰でも可能です。回数に制限はなく、最後に提出したものが正規の申告書として扱われます。

「追加送信」での申告訂正

確定申告書の提出とは別の添付書類の追加提出とか、税額や繰越欠損金に影響のない別表や明細書の追加・差替えのための提出とかも、電子申告 e-Tax に於いて、「追加送信」として認められています。追加送信は、一度送信した申告等データに対してPDFイメージデータや別表及び付表等を追加して送信する機能です。「申告書等送信票(兼送付書)」への入力をして送信します。
追加送信方式で送信できる回数は、1つの申告等送信データにつき、現在のところ 10回とされています。

追加送信では制限が生まれる

税理士代理送信での電子申告に係る追加送信は、当該税理士及び委任した納税者の何れも可能ですが、他の税理士は送信不可です。電子証明書を有する納税者が自主申告送信した場合には、代理送信可能な税理士も、追加送信不可です。追加送信は、メッセージボックスに格納された「受信通知」の「追加送信」ボタンから送信する為です。

eLTax 地方税電子申告での相違

再送信・追加送信機能の意味は、eLTax 地方税電子申告でも、同じですが、追加送信は、eLTax では 999 回まで可能となっています。なお、追加送信への取扱いは提出先の地方自治体の判断により異なる場合があります。