日: 2021年12月3日

国税のスマホ決済延期

国税のスマホ決済延期

国税のスマホ決済延期

令和 4 年 1 月 4 日に間に合わない

国税庁は令和 3 年 9 月 21 日、3 年度税制改正で発表していたスマートフォンを利用した決済サービスを、4年1月4 日からの開始としていたところ、4 年 12 月に延期することを明らかにしました。
令和 3 年 6 月に、スマホアプリ納付を実現するために必要なシステムなどを構築する事業者の調達手続きを行ったところ、新型コロナウイルス感染症の中、デジタル投資の加速に伴う ICT 人材不足等もあり、入札者が現れず、事業者の決定に至らなかったようです。

地方税は先に導入が進んでいる

地方税を見てみると、各都道府県・市区町村によって取扱いの決済アプリの種類は異なるものの、スマホ払いで普通徴収の都道府県・市区町村民税や軽自動車税、国民健康保険料等が支払えるサービスが進んでいます。利用できる決済アプリは自治体によって異なるものの、PayPay、LINE Pay、PayB、楽天銀行アプリ、銀行Pay(ゆうちょPay)、au PAY、FamiPayなど、多岐にわたります。導入の数を見てみると、市井でのシェアの高いPayPayとLINE Payの採用が多いようです。
地方税でのスマホ決済の普及は令和元年10 月に「地方税共通納税システム」が導入され、電子申告に加えて電子納税が可能になり、自治体の事務負担が軽減されたことも背景にあるようです。

IT人材の不足は深刻?

経済産業省の調査によると、令和 12 年には IT 人材の不足数が最大で 79 万人になるという試算が出ています。これは IT 業界の急成長、スマートフォンの台頭をはじめとした IT 技術の急速な変化、少子高齢化による人材不足等が原因とされています。エンジニア不足への対策として、企業では採用年齢の引き上げや待遇改善を打ち出し、政府対応としては 2 年度から小学校でのプログラミング教育が必修化されましたが、現状国税のスマホ決済システムの構築に至れなかった事実があり、IT人材の不足は深刻なのかもしれません。
国税庁は税務行政のデジタルトランスフォーメーションを掲げていますが、解決すべき課題は外的環境にも多く存在しています。

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

低率金融所得課税の見直し

バフェット・ルール

新聞にかつて、アメリカの投資家バフェット氏が、彼自身の連邦所得税は 693 万8744 ドルで税率 17.4%、「私のオフィスに勤める 20 人の社員の平均(36%)よりも低い」、こんな富裕層優遇税制は是正されるべきと述べたとの記事がありました。
これを承けた、年収 100 万ドル超の富裕層に増税する、バフェット・ルール課税案が米議会に提出されましたが、未だに日の目を見ていません。

バフェット氏の所得の内訳

アメリカの投資所得分離課税率 15%、総合課税最高税率 37%とすると、
①A×15%+B×37%=$6,938,744
②(A+B)×17.4%=$6,938,744
A=$35,527,529(89%)
B=$ 4,350,310(11%)
となり、バフェット氏の所得の 89%が投資家所得で、$100 円として 35 億円余であったことになります。

日本では 100 億円で 15.9%

投資家所得への低率の比例課税が、担税力に反比例する金持ち優遇税制となっている現象は、日本が世界一過激です。
税制調査会資料によると、日本の申告所得者の統計データでは、100 億円のところでは、15.9 億円(15.9%)が平均的税負担とされています。
①A×15.315%+B×45.945%=15.9 億円
②(A+B)×15.9%=15.9 億円
A=9,809,010,774(98.09%)
B= 190,989,226( 1.91%)
実効税率 15.9%は課税所得 900 万円未満のレベルでの税負担です。
その上、何億円の所得があっても、源泉分離課税の株式関連所得は申告不要に出来るので、申告所得税の統計資料には、全体像は示されていません。

岸田文雄首相の提案

岸田文雄首相は、自民党総裁選でバフェット・ルール的な「金融所得課税の見直し」を公約に掲げ、その後の衆院選を前に当面撤回などとしましたが、選挙後は、党税調・政府税調に見直し議論の要請をしました。
地球温暖化やTAXヘイブン対策、GAFA税逃れ問題と同じく、担税力に逆進的な不公平税制も、先進各国共通の解決すべき喫緊の課題です。比例税率を改める、あるべき税制の形を世界に示すべきです。