月: 2021年11月

相続放棄の場合の生命保険金

相続放棄の場合の生命保険金

相続放棄の場合の生命保険金

被相続人に多額の債務があり、相続人としては相続放棄したいけれど、生命保険金まで放棄しなければいけないのか気になるところです。


相続放棄でも生命保険金は受け取れる


相続人は、相続放棄することにより、被相続人の財産・債務を一切承継しない選択ができます。手続きとして自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄を家庭裁判所に申し立てることが必要です。
生命保険金は、民法上の相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となるので、相続人は生命保険金を受け取ることができます。みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、相続放棄をした者は、初めから相続人とならないので、生命保険金の非課税措置を受けることはできません。それでも保険金が手許に入ることは、メリットといえるでしょう。


限定承認でも生命保険金は受け取れる


それでは、限定承認により相続人が取得する財産の範囲内で債務を弁済することとした場合はどうなるでしょうか。
限定承認の手続きは、相続放棄と同様、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることが必要です。相続人は被相続人の債務を全額承継しますが、弁済の責任は被相続人の財産の範囲に限られます。未納の国税がある場合でも被相続人の財産の限度で弁済すればよいので財産の額を超えた滞納税額に納税義務を負いません。
相続人が生命保険金を固有の財産として受け取ることができるのは相続放棄の場合と同じです。生命保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、限定承認の場合は、相続人の地位を有しているので、生命保険金の非課税措置を受けることができます。


詐害行為とみなされないように


ところで生命保険金の受取人としていた相続人も債務超過の状態となり、親族間で財産保全をはかるため、他の相続人に受取人名義を変更する場合は注意が必要です。その名義変更が債権者の権利を害する詐害行為(さがいこうい)と認められた場合、その名義変更は取り消され、生命保険金は名義変更前の相続人の取得財産として債務の弁済に充当されてしまうかもしれません。

 

 

テレワークの労働時間管理

テレワークの労働時間管理

テレワークの労働時間管理

テレワークでも労働時間の考え方は同じ

基本的には以前と同じ労働時間制度を使うようになるでしょう。1日8時間、週40時間制のスタンダードで固定的な労働時間制を敷いていたならそのままでよいし、今までフレックス制度や裁量労働制を適用していたら導入後もその制度を適用してもよいのです。ただ、通勤時間がなくなるとこれらの制度は変更される場合があるでしょう。

テレワークの勤怠管理

労働時間管理では「テレワークの勤務開始と業務終了が把握しにくい、休憩時間がとりにくい」などを懸念する場合があるかもしれません。ルール決めをしておけば勤務中か離席かわかりやすくなります。
① 始業時
業務開始時に「業務を始めます」という開始報告メール、チャットツール、電話等所定の方法で行います。
② 休憩時
休憩開始時に「休憩に入ります」という報告メールをします。
③ 休憩終了時
休憩終了時に「休憩終了します。業務に戻ります」というメールをします。
④ 業務終了時
業務終了時に「業務を終了します」という終了報告をメールでします。
近年は社員が勤怠打刻をスムーズに行えるようなクラウドのシステムもあります。

中抜け時間の取り扱い

在宅勤務で子供の送迎があったり病院などへ連れて行ったりと、私用で就業中に外出等があった場合は賃金支払いの対象外ですが、賃金カットでなく、始業終業の繰り上げ繰り下げで1日の所定労働時間は満たすことを認めている企業も多いようです。中抜けの際も連絡メールするようにルール決めは必要です。

時間外労働の取り扱い

在宅勤務では長時間労働になりやすい要素があります。夕食後に仕事を再開したり休日でも仕事をしたり、オンとオフの区別がつきにくくなりがちです。目に見える成果を上げたいと頑張って長時間になる場合もあるようです。このため一定のルール(時間外にメールの送受信を控える、アクセスの制限、残業の申請等)が必要になるでしょう。従業員の健康面と割増賃金のコストに留意しましょう。

免税事業者は少しだけ非課税大家さんより有利

免税事業者は少しだけ非課税大家さんより有利

免税事業者は少しだけ非課税大家さんより有利

家賃非課税となったときの行政指導


平成3年9月までは、居住用家賃についても消費税課税対象でした。課税対象から非課税対象への切り替えがスムーズに行い得るようにする、建設省住宅局長の発遣文書があります。
その文書は、課税が非課税に変わるに際し、当時の税率3%全額を減額するのではなく、賃貸住宅経営のための必要な諸経費や資材購入に係る消費税を、先の3%から控除した残額を減額する、としています。
前段階消費税分の転嫁は必要事としての行政指導なのです。ただし、これを実行した大家さんは、ほとんどいなそうです。

インボイス開始後6年間の激変緩和措置


令和5年 10 月1日から、適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が新たに始まるわけですが、インボイス番号を持たない免税事業者から受け取る請求書等は、適格請求書等ではないけれど、令和5年 10月1日から最初の3年間は取引額総額の110 分の 10 の 80%を仕入税額控除可能とし、次の3年間は当該 110 分の 10 の 50%を仕入税額控除可能、としています。
でもこの措置は、免税事業者の前段階消費税転嫁のための配慮ではなく、仕入側への配慮措置なので、この6年経過後は、何の配慮措置も残りません。

免税事業者の消費税の転嫁の可能性


相手が個人消費者なら、免税事業者が消費税の転嫁をしても何の異議も聞こえて来ないでしょう。また、希少価値のある事業者なら、免税事業者か課税事業者かを問われることなく取引されるかもしれません。
でも、BtoBでの取引弱者に該当する多くの免税事業者にとっては、非課税事業の大家さんと同じく、転嫁出来ない前段階消費税の自己負担化(損税)になりそうです。

免税事業者の価格転嫁と簡易課税


免税事業者でも、インボイス番号取得により課税事業者に変身すれば、前段階消費税の自己負担は消えます。ただし、申告と納税の煩瑣が生じます。
申告納税の煩瑣を多少なりともカバーしてくれるのは、簡易課税かもしれません。
免税事業者には、非課税事業の大家さんよりも、前段階消費税の自己負担化を回避する途が少しだけ広く開かれている、と言えそうです。

採用は労務管理の入り口

採用は労務管理の入り口

採用は労務管理の入り口

採用の技術を高めることで最適な人材確保


コロナ禍で採用を抑えていた企業も、緊急事態宣言などの規制が解除されると企業活動が活発になります。新規に雇用を考える企業が増えて人手不足がくるでしょう。
人手不足には 2 種類あり、1 つは人手の「量」もう一つは能力の「質」です。どちらも必要ですが機械化で代替できるところはあるとしても生産活動に人材は必要です。
会社に新しい人が入れば今の社員だけでできないことにも取り組んで変革し成長する企業になるのが理想ですが、人材を生かすことができるかどうか最初が肝心です。
採用は労務管理の入り口で、入り口で会社にふさわしい人材を選べば大きな労務トラブルや反抗型、無責任型、情緒不安定などの問題になる人を採らずに済むかもしれません。ここでは採用の初歩の段階で判別できる事例を見てみます。


採用時にトラブルとなりやすい問題

① 面接当日に来ない人
……これは結構あることで、それを避けるためには面接日の 1~3 日前に電話かメールで面接日時の再確認をします。これは内定後も必要なことです。
② 入社直前の辞退
……内定時に内定通知書、誓約書等を送り返信してもらうことで辞退は少なくなります。
③ 転職者の場合には前職を辞めた理由は必ず聞く
……転職理由に問題がないかを見ます。また、エリートより身の丈に合った人が結果的にはいいこともあります。
④ 自立心無し、親離れ無し
……新入社員で親御さんとの関係が強そうと感じる。
⑤ 上司をうつ病にさせる逆パワハラ社員
……できる人材を採用しても組織がうまく機能しない場合があります。パワーバランスのミスマッチが生まれます。
⑥ 給与のことを細かく聞く人は金銭問題
を抱えているケースがありえます。
⑦ 入社後すぐ退職する
……履歴書で転職回数の多い人は早期退職の確率が高く、転職志向の高さは適性検査で読み取れることがあります。
⑧ 入社後すぐに病欠
……健康診断書は内定から入社前に求めて健康の確認をしておき、休職規定も試用期間中は対象としない旨の規定も必要でしょう。

令和 3 年年末調整

令和 3 年年末調整

令和 3 年年末調整

変更点と誤りやすい点


印鑑不要になった!

年末調整は、給与を受ける人それぞれについて、原則毎月の給与や賞与などの支払いの際に源泉徴収した税額と、その年の給与の総額について納めなければならない年税額とを比べて、その過不足を精算する手続です。今年は去年と比べると所得税計算本体への改正はないものの、手続的な部分での改正がありました。
「押印義務の改正」により、源泉所得税関係書類については、押印を要しないこととされました。このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使う書類についても従業員の皆さんに押印をしてもらう必要がなくなりました。地味ですが手間の省ける改正ですね。その他、源泉徴収関係書類を電磁的に提供する場合の、給与等の支払者が受けるべき税務署長の承認が不要とされたため、従来は税務署に提出が必要だった「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」が不要となりました。


令和2年改正部分に注意

今年の年末調整に目新しい変更はないものの、令和2年に改正が行われた「所得調整控除」「寡婦・ひとり親控除」「基礎控除」には注意が必要です。
所得調整控除は給与収入が 850 万円超の方が対象で「配偶者の扶養している子供でも、所得調整控除は両方の親に対して行える」点に注意しましょう。寡婦・ひとり親控除は令和 2 年から適用条件が変更されて「所得金額 500 万円以上の方は一律無効」となりました。基礎控除は「給与以外の所得も含めて、合計所得 2,400 万円超で逓減が開始」です。
新しいルールのため、細かい条件を取り違えて計算している例が散見されます。今年も注意して計算をしましょう。


電子化のメリットも考えて

計算式や控除上限等の変更、そして紙の記載フォーマットの変更と、年末調整は過去と比較すると明らかに複雑化しています。
従業員が控除額を計算して、

経営他

新登場! M&A支援機関

新登場!M&A支援期間

M&A支援機関登録制度の創設

中小企業のM&A促進戦略として中小企業庁が4月に公表した「中小M&A推進計画」では、M&A支援機関に係る登録制度の創設を唱っていました。
全国的に大規模・中規模向けのM&A支援機関が活動しているが、M&A支援機関の支援の妥当性を判断するための知見が不足している中小企業が存在する状況下での、M&A支援機関の質を確保する仕組みを創らなければならない、としていました。
制度創設日は、改正中小企業等経営強化法施行日の2021 年8月2日です。

登録可能な対象者

経産省の「登録制度の概要」によると、M&A支援機関とは、「中小M&Aを支援する機関」であり、ファイナンシャルアドバイザー業務(FA・片方代理)又はM&A仲介業務(双方代理)を行う者です。
具体的には、M&A専門業者(FA、仲介業者)、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマー、事業承継・引継ぎ支援センター等が登録してくれることを予定しているようです。

第一次公募による登録状況

公表された登録M&A支援機関数は、2021 年10 月15 日現在で2278 件です。うち、法人は1700 件、個人事業主は578 件です。また、上位5業種は、M&A仲介専門業者が544 件、FA専門業者が394 件、税理士が517 件、公認会計士が233 件、地方銀行・信金・信組が125 件です。
M&A契約に深く長く関わるM&A支援機関登録で、税理士・公認会計士が33%をも占めているということには、驚きです。

登録要件は?

①「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言し、遵守すること
②登録要件を充足している旨を自社HPで掲載すること
③登録要件を充足している旨を顧客に書面で事前説明すること
④毎年度、実績報告を提出すること
なお、登録をしたものの、特段合理的な理由なく支援実績が芳しくないなど、一定の要件に該当する場合には、登録の継続を認めず、登録取消しとなります。
また、登録されたM&A支援機関に対する苦情情報提供受付窓口を設けて、公開監視による制度充実をはかる予定になっています。

消費税

免税会社の適格請求発行事業者 登録のタイミング

免税会社の適格請求発行事業者 登録のタイミング

取引からはじき出されないための登録?

2021 年10 月1 日から「適格請求書発行事業者の登録申請」が始まっています。2023年10 月1 日から消費税の仕入税額控除方式が、「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」となるためです。
消費税で仕入税額控除を取るためには、適格請求書(インボイス)が必要であり、適格請求書を交付することができるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。適格請求書発行事業者となるためには、消費税の課税事業者となって、発行事業者登録をしなければなりません。
免税事業者からの仕入税額控除に関して、6 年間の経過措置はありますが、経過後は、インボイスを発行できない免税業者からの商品やサービスの購入では仕入税額控除が取れないため、取引の相手先として選ばれなくなる可能性が高いです。仮に選ばれたとしても、消費税額分の値引きを要求される可能性もあります。

登録すべきかどうかは経営面から検討する

消費税先進国の欧州でもそうですが、インボイスを発行できない事業者から仕入れを続けると自社が負担する消費税額が増えるため、免税業者は敬遠されがちです。よほど優位性がある商品やサービスでない限り、取引の相手先から外されかねません。
この適格請求書発行事業者となるか否かの選択は、経理の問題よりも、むしろ、ビジネスの経営面から考えるべきものです。
登録を決めた場合、2023 年10 月1 日のインボイス制度開始と同時にインボイスの発行をするためには、2023 年3 月31 日までに申請しなければなりません。

「登録における経過措置」利用がおススメ

免税事業者が適格請求書発行事業者となるためには、先に課税事業者登録をしなければなりません。しかしながら、ここにも経過措置があり、2023 年10 月1 日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要です。何月が事業年度末月かにもよりますが、同じ事業年度内で、2023 年9 月30 日までは免税事業者、10 月1 日から課税事業者となることもできます。また、「簡易課税制度」で、納税額が少なくなるようでしたら、その適用も検討してみるべきです。

法人税

売上の相手先に関する記帳要件

売上の相手先に関する記帳要件

売上相手先の名前しか知らなくてよいか?

関与先から「売上相手先の名前しか把握できない新しい販売方法を開始したいが、何か問題はあるのだろうか?」という質問を受けたとします。これまでは法人相手の対面販売のみだったため、相手先の住所や電話番号等の連絡先を知った上での販売でした。今後は販売チャネルを広げ、自社のウェブサイト上からクレジットカード決済で非事業者個人への販売(ソフトウェアのダウンロード販売)も開始したいとのことです。この方法では、申込時に自社に届く情報は顧客の「名前」のみとなります。決済代行会社へは顧客のカード情報が提供されますが、自社へはクレジットカード決済で代金が回収されるため、請求書発行手続きを要しないことから、申込時に住所等の情報は入力不要となっています。
果たして、名前しかわからない取引で、青色申告や消費税の仕入税額控除の帳簿記載事項は問題があるのでしょうか?

法人税法が要請する記帳要件

「青色申告法人の帳簿書類」については、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならないとされています。財務省令では、「仕訳帳」、「総勘定元帳」その他必要な帳簿を備え、別表20 に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならないとされています。別表20 の(十一)では、「売上に関する事項」として、取引の年月日、売上先、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の売上総額を、記載すべき原則的事項として挙げています。ここでは売上先の住所や電話番号は記載すべき事項とされていません。
申込みの際に届く情報が「名前」であっても、取引の年月日、売上先、品名その他給付の内容、数量、単価及び金額並びに日々の売上総額を記載することには支障がないものと思われます。そのため、売上の相手先に関する記帳事項について、売上先の「氏名又は名称」だけでよく、それ以外の住所や電話番号を知らなくとも(記載しなくても)問題ないものと考えられます。

消費税法が要請する記帳要件

消費税法でも、同様な帳簿要件があります。ここでも売上先の住所や電話番号は記載すべき事項とされておらず、取引の年月日や内容がわかれば問題ないものと考えられます。

所得税

死亡退職の場合の給与計算

死亡退職の場合の給与計算

社員の死亡退職の際の給与計算

在職社員の死亡退職に係る給与計算は、通常退職の手続きと、少し違ってきます。
死亡後に支給期が到来する給与の振込は、本人口座が凍結されるので、遺族の口座となります。また、社会保険の脱退や埋葬料の請求等で遺族に手続きを依頼する場面も生じます。会社側も慌てず粛々と手続きを進めて下さい。
給与課税は、死亡前に支給されたものが対象となり、「給与所得の源泉徴収票」の「支払金額」欄には、死亡前に支払が確定している給与の合計額を記載します。年末調整は死亡時の扶養等の現況で行います。死亡後に支給期の到来する給与については、相続財産となり、所得税の課税対象となりません。
給与から控除している住民税の特別徴収は、死亡後に支給する給与から一括控除して会社が納付するのか、後日遺族が普通納付するのか、遺族に意向を確認します。それを受け、会社が「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。

課税関係の精算は遺族が行う

会社側で年末調整が行われますが、医療費控除等がある場合は、相続人が被相続人の確定申告(いわゆる「準確定申告」)を行うことで、所得税関係の精算ができます。
遺産が相続税の基礎控除額を超えていれば、相続税の申告も必要です。死亡後に支給期が到来して相続人口座に振り込まれた金額も相続財産ですので、申告漏れのないよう留意が必要です。

社会保険ほかの手続き

社会保険と雇用保険で資格喪失手続きを行います。死亡日=退職日となり、資格喪失日は死亡日の翌日となります。社会保険料の給与からの天引きがひと月遅れで、資格喪失前の社会保険料の納付義務が発生していた場合には、最後の給与から控除します。健康保険証は返却してもらいます。
なお、遺族からの申請で、埋葬料・傷病手当金・高額療養費を受け取ることができる場合もあります。これらの申請には、種々の適用要件がありますので、会社もしくは会社の顧問社会保険労務士から遺族側に説明をし、会社が手続きを誘導して、申請漏れで受け取ることができなくならないよう迅速に対応を進めていくことが大切です。

その他税務

悪質な脱税犯に対する追徴税額

悪質な脱税犯に対する追徴税額

脱税に対する罰金

脱税した儲けは、税務調査できっちりと押さえられ、本来納めるべきだった税額に加え、一種の行政罰である加算税が課せられ、さらに納付遅延に対し延滞利息に相当する延滞税もしっかりと上乗せされます。
脱税に関する報道では、末尾に、納税者のコメントとして、「国税局からの指摘を真摯に受け止め、既に修正申告を行い、納付も済ませている……」とありますが、本来納めるべきだった脱税額に加え、いったいどれくらいの罰金が追加で持っていかれるのでしょうか?

脱税の悪質さで罰金の度合いが違ってくる

税務調査により追徴税額が発生したといっても、すべてが悪質な脱税というわけではなく、何も隠してはいなかったけれども所得認識の時期のずれで追徴税額が発生したというケースもあります。本稿では、意図的に儲けを隠したいわゆる“脱税”の場合に、どんな罰金が掛かってくるのかについて考えます。また、一口に脱税といっても、実際の儲けより少ない金額で申告して誤魔化している場合(=過少申告加算税)や、全く申告せず=無申告で儲けを隠している場合(=無申告加算税)等、その悪質さの程度も変わってきます。
そして、その脱税のしかたについても、「二重帳簿の作成、売上除外、架空仕入・経費の計上、棚卸資産の一部除外等」の事実の隠蔽や、「取引の他人名義の使用、虚偽答弁等」の事実の仮装があった場合には、より悪質なものとして、さらに重い罰則(=重加算税)に代えられます。

脱税の罰金はどれくらいになるのか?

いったいいくらの追徴となるのでしょうか。話を単純にするため、本来の税金を地方税まで含めて税率30%とします。
(1)所得を少なく申告した場合
本来の税金30%+重加算税30%×(35%+過去5 年内重加算税あり10%)→43.5%。
(2)無申告の場合
本来の税金30%+重加算税30%×(40%+過去5 年内重加算税あり10%)→45%。
悪質な脱税では本来納めるべきであった税金の最大1.5 倍にもなってしまいます。
また、延滞税が年7.3%で課せられます。さらに、給与等の源泉税が悪質な不納付の場合、35%+10%の重加算税も発生します。