月: 2025年1月

令和7年度税制改正大綱 ⑤納税環境整備編

令和7年度税制改正大綱 ⑤納税環境整備編

令和7年度税制改正大綱 ⑤納税環境整備編

電子帳簿等保存制度の見直し

申告所得税、法人税、消費税の電子取引において電子データが隠ぺい仮装された事実に基づき期限後申告等があった場合、申告漏れ等に加算される重加算税は、国税通則法68条に規定される割合に加え、さらに10%が加重されます。電子データの隠ぺい仮装には電子データを直接改ざんするほか、紙段階で不正のあった請求書や相手と通謀して受領した架空請求書等をスキャナ保存する場合等も含まれます。

令和7年度税制改正では電子データの訂正、削除の事実、内容が確認できる(あるいは訂正、削除できない)など一定の機能を持ち、国税庁長官が定める基準に適合したシステム(特定電子計算機処理システム)を使用して授受・保存した電子データ(特定電磁的記録。災害等の事情で保存できない場合を含む)は10%加重の対象から除外されます。令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税に適用されます。

青色申告特別控除65万円の適用要件追加

これまで青色申告で65万円の特別控除を受ける要件は、優良な電子帳簿を備え、保存すること又はe-Taxを利用して申告書等を提出することでした。

令和7年度税制改正ではこの2要件に加え、上記の特定電子計算機処理システムを使用して電子データの授受・保存を行う場合にも65万円の青色申告特別控除を受けられるようになり、令和9年分以後の所得税に適用されます。

納税通知書等の副本をeLTAX経由で送付

固定資産税、都市計画税、自動車税種別割、軽自動車税種別割の納税通知書(課税明細書、更正決定通知書、税額変更通知書を含む)及び納付書について納税者からの申出により、eLTAXを通じて副本を送付できるようになります。法人は令和9年4月1日以後に送達するものから、個人は令和10年4月1日以後に送達するものから適用されます

スキャナ読取り要件の緩和で利便性向上

e-Taxにより申請書面や添付書面等をスキャナで読取り、イメージデータで送信する場合、現行の「赤色、緑色、青色それぞれ256階調以上」から「白色から黒色まで256階調以上」となり、データ容量が大幅に削減されます。ほかにファイル形式もPDF形式に加えJPEG形式が利用できるようになり、送信可能データ容量も拡大されます。令和10年1月1日から適用されます。

令和7年度税制改正大綱 ④消費課税編

令和7年度税制改正大綱 ④消費課税編

令和7年度税制改正大綱 ④消費課税編

外国人旅行者にリファンド方式を導入

免税店が外国人旅行者など免税購入対象者に販売する物品が出国前に転売され、不正に利益を得る取引が横行していることから、その対策として免税店での物品購入時は消費税相当額を含めた価格で販売し、購入日から90日以内に税関で国外持ち出しの確認を受けた場合に消費税相当額が返金されるリファンド方式が採用されます。

改正は外国人旅行者の利便性と免税店の事務負担の軽減にも配慮されています。免税対象物品の範囲は、消耗品について同一店舗一日当たり50万円の購入上限額、消耗品の特殊包装が廃止され、一般物品と消耗品の区分も廃止されます。また、免税販売の対象外とされる「通常生活の用に供するもの」の判断はこれまで免税店に委ねられ、税務リスクを負わせていましたが、この要件も廃止されます。金地金等、不正目的で購入されるおそれの高い物品は免税販売の対象外とされます。

免税品の購入情報は、国税庁の免税販売管理システムを通じて税関で確認できるようにします。リファンド方式への移行までシステム改修の準備期間を考慮し、令和8年11月1日以後の譲渡から適用されます。

125cc以下原付自転車の種別割は2,000円

設計最高速度が時速50kmを超える原付自転車は、令和7年11月以降、新たな排出ガス規制が適用されますが、50cc以下では技術面、事業性で規制に適合した生産・販売が困難となっていました。そこで二輪の原付自転車で総排気量50cc超125cc以下、かつ最高出力4.0kW以下を新たに原付免許で運転できる第1種に区分し、軽自動車税種別割は、2,000円となります。

リース譲渡の特例は廃止

新リース会計基準の導入に伴い、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例は廃止され、延払基準は適用できなくなります。経過措置として、令和7年4月1日前にリース譲渡に該当する資産の譲渡等を行った事業者は、令和12年3月31日以前に開始する事業年度までは延払基準により資産の譲渡等の対価の額を計算できるとするとともに、令和7年4月1日以後に開始する事業年度に延払基準の適用をやめたときは、賦払金の残金を10年均等で資産の譲渡等の対価の額とします。

なお、法人税においてもリース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例は廃止されます(経過措置あり)。

令和7年度税制改正大綱 ③法人課税編

令和7年度税制改正大綱 ③法人課税編

令和7年度税制改正大綱 ③法人課税編

中小企業者等の軽減税率の特例は2年延長

中小企業者等の法人税率は所得金額800万円以下について15%とされています。この軽減税率の適用期限を2年延長したうえで、所得金額が年10億円を超える事業年度については、税率を17%に引き上げます

中小企業投資促進税制は2年延長

中小企業投資促進税制は、適用期限を2年延長します。

売上100億超を目指す中小企業の支援措置

中小企業経営強化税制は、中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合に特別償却または税額控除ができる制度です。 

適用期限を2年延長したうえで対象に売上高100億円超を目指し、一定の要件を満たす中小企業の設備投資を追加します。うち建物および附属設備(合計額1,000万円以上)の特別償却率と税額控除率は、供用年度の給与増加割合が2.5%以上の場合、それぞれ15%と1%、給与増加割合が5%以上の場合、それぞれ25%、2%とします。ほかにA類型は経営向上指標を見直し、B類型は投資利益率を7%以上に引き上げ、C類型のデジタル化設備、暗号資産マイニング業の設備は対象から除外し、新たに食品等事業者の設備が適用対象となります

地域未来投資促進税制を3年延長

地域未来投資促進税制は、地域経済牽引事業の促進区域内で特定事業用機械等を取得した場合に特別償却または税額控除ができる制度です。適用期限を3年延長し、機械装置及び器具備品の特別償却率を35%(現行40%)に引き下げ、規模要件を1億円以上(現行2,000万円以上)、前年度の減価償却費の25%以上に引き上げたうえで特別償却率50%、税額控除率5%とする上乗せ措置の対象設備に新たな類型を追加します

企業版ふるさと納税を3年延長

企業版ふるさと納税制度は、企業が寄附を通じてノウハウ、アイデア、人材を提供し、官民連携で地方への資金の流れを創出、人材還流を促して地域の社会課題の解決をはかる制度です。企業は寄附額全額を法人税の損金に算入して約3割の税額を軽減、4割は法人住民税の税額控除、2割は法人事業税の税額控除を受けるので自己負担は1割で地方創生を応援することができます

一方、地方再生計画の認定が取消される不適切事案が発生したため、寄附活用事業の執行上のチェック機能の強化や活用事業の透明化等を措置したうえで適用期限を3年延長します。 


令和7年度税制改正大綱 ②資産課税編

令和7年度税制改正大綱 ②資産課税編

令和7年度税制改正大綱 ②資産課税編

結婚・子育て資金の贈与非課税は2年延長

結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度(直系尊属からの贈与について結婚資金は300万円まで、子育て資金は1,000万円までを非課税)は、「こども未来戦略」の集中取組期間(令和8年度まで)にあることを勘案し、2年間の延長となりました。

法人版事業承継は役員就任要件を見直し

事業承継における非上場株式等の贈与税の納税猶予制度の特例措置は、経営承継円滑化法による特例承継計画の認定を受けた非上場会社の株式等を先代経営者から贈与により取得した後継者の贈与税の納税を猶予し、贈与者の死亡等により猶予税額の納付を免除するものです。

特例措置の適用期限は、令和9年12月31日です。これまで後継者である受贈者には贈与日まで引き続き3年以上、当該法人の役員に就任していることが要件となっていましたが、令和6年12月31日で役員に就任していない場合でも、贈与の直前に役員に就任していれば適用できるようになります。令和7年1月1日以後の贈与から適用されます

個人版事業承継は事業従事要件を見直し

事業承継における個人の事業用資産の贈与税の納税猶予制度の特例措置は、経営承継円滑化法による個人事業承継計画の認定を受けた後継者が宅地等、建物、その他減価償却資産の事業用資産を先代経営者から贈与により取得した場合、贈与税の納税を猶予し、後継者の死亡等により猶予税額の納付を免除するものです。

特例措置の適用期限は、令和10年12月31日です。これまで後継者である受贈者には贈与日まで引き続き3年以上、当該事業に従事していることが要件となっていましたが、法人版事業承継税制の改正と併せて、贈与の直前に事業に従事していれば適用できるようになります。令和7年1月1日以後の贈与から適用されます。

設備投資の固定資産税軽減は2年延長

中小企業等経営強化法に規定する先端設備等導入計画に基づき、中小事業者の生産性向上や賃上げに資する機械・装置等の設備投資について固定資産税の課税標準の特例措置を見直しのうえ2年延長します。

賃上げ方針を計画に位置付け、雇用者給与等支給額を1.5%以上引き上げる場合、最初の3年間は課税標準の2分の1が減免され、3%以上引き上げる場合、最初の5年間は課税標準の4分の3が減免されます

令和7年度税制改正大綱 ①個人所得課税編

令和7年度税制改正大綱 ①個人所得課税編

令和7年度税制改正大綱 ①個人所得課税編

基礎控除と給与所得控除は10万円引上げ

物価上昇局面の税負担調整、就業調整への対応措置として基礎控除は合計所得金額2,350万円以下の控除額を10万円引き上げて58万円に、給与所得控除は55万円の最低保障額を65万円に引き上げ、給与収入123万円まで課税されなくなります。令和7年分以後の所得税に適用されます。

大学生年代の親族の扶養控除枠を拡大

大学生アルバイトの就業調整に対応して19歳以上23歳未満の子等で合計所得金額123万円以下、控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合、給与収入150万円までは63万円を控除し、さらに給与収入が増えると段階的に控除額を削減する特定親族特別控除(仮称)が、令和7年分以後の所得税に適用されます。

扶養控除、同一生計配偶者の要件も引上げ

基礎控除の引上げに伴い、人的控除が見直されます。扶養親族、同一生計配偶者の合計所得金額の要件は58万円以下となり、現行48万円から10万円引き上げられます

個人住民税も給与所得控除の見直し、特定親族特別控除(仮称)の創設、扶養親族、同一生計配偶者の合計所得金額の要件等を改正し、令和8年分から適用されます。

 

iDeCoの拠出限度額を引上げ

iDeCoは加入年齢を70歳未満に引き上げ、拠出限度額は自営業者等は月額7.5万円(現行:月額6.8万円)、企業年金加入者は月額6.2万円から確定給付企業年金の掛金額及び企業型確定拠出年金の掛金額を控除した額(現行:月額2.0万円)、企業年金未加入者は月額6.2万円(現行:月額2.3万円)に引き上げ、全額所得控除されます。

 

子育て世帯への支援措置を1年継続・拡充

①住宅ローン控除
住宅ローン借入限度額の上乗せ措置(認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円)、および床面積要件の緩和措置(合計所得金額1,000万円以下、40㎡以上)は令和7年限り適用されます。

②住宅リフォーム税制(継続)
工事費用相当額(上限250万円)の10%相当額を所得税額から控除する措置が令和7年限り適用されます。

③生命保険料控除(拡充)
新生命保険料に係る一般生命保険料控除は、23歳未満の扶養親族のある場合、令和8年分の適用限度額を6万円(現行4万円)に引き上げます(合計適用限度額12万円)。

相続放棄の手続き の実際とその流れ

相続放棄の手続き の実際とその流れ

相続放棄の手続き の実際とその流れ

相続における3つの選択 

相続が発生すると相続人となる者は、単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する)、もしくは限定承認(プラスの財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ)、または相続放棄(遺産の相続を放棄しプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない)のいずれかを選ぶことになります。 

相続放棄を選択するのは、一般的に借金が多い場合と考えられますが、借金がなくとも相続にかかわりたくない、財産分与ゼロでハンコを押すのはしゃくだなど、他の理由であっても自分の意思で選べます。 

相続放棄の手順 

(1)家庭裁判所へ相続放棄を申述する 
相続放棄の申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にしなければならないと定められています。申述書に申述内容を記入し、被相続人の住民票除票又は戸籍附票や申述人(放棄する人)の戸籍謄本など(=申述人の被相続人との関係性により必要書類は変わってくる)を添付して家庭裁判所に書類を送ります。 

(2)家庭裁判所から「照会書」が届く 
申述後、家庭裁判所から「照会書」が届き、①誰かに強要されたり、②他人が勝手に手続きしたり、③相続放棄の意味がわからず手続きしていないかなど、その申述が本人の真意によるものかの確認がなされます。 
書類をよく読んで、真意である旨を「回答書」に自筆で記載し期限内に返送します。 

(3)「相続放棄申述受理通知書」で完了 
家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」(相続放棄が無事に認められた旨の通知)が届いて手続き完了となります
なお、他の相続人が相続手続きをする際に「相続放棄申述受理証明書」の原本が必要となります。通常は、受理通知書が届いた後に受理証明書の交付申請を行いますが、事前に受理証明書の交付申請を行えば受理通知書に同封されて受理証明書も届きます。

相続放棄のデメリット

相続放棄が完了すると後から撤回できないため、相続放棄完了後に莫大な財産が見つかったとしても、その財産を引き継ぐことはできません。また、他にも個々の事情で発生するデメリットもあり得ます。放棄に際しては、司法書士などの専門家に相談しながら手続きすることをお勧めします。