年: 2022年

ロシア金融制裁における 損害リスクと税務上の取扱い

ロシア金融制裁における
損害リスクと税務上の取扱い

ロシア金融制裁における 損害リスクと税務上の取扱い

ロシアへの金融制裁=SWIFT締め出し

ロシアのウクライナ侵攻に対する金融制裁として、日本もアメリカやEUに続き、SWIFTからロシアを締め出すことを表明しました。SWIFTは貿易などの送金で使われる国際的な決済ネットワークです。
ここから締め出されると世界の経済の動きの中から締め出されることを意味します。
日本は、ロシアからは石炭をはじめ、サケ・マスなどの海産物まで、たくさんの輸入をしています。代金の支払ができなくなれば、次の輸入も止まり、輸入業者のみならず私たちの生活にも影響が出ます。

金融制裁下での送金リスク

金融制裁が始まってすぐのころ、取引先銀行からA社に海外送金の予定に関する照会がありました。A社では実際にロシアに送金する必要性があったので、銀行に対して送金依頼を掛けたらどうなるか逆に質問してみました。
銀行からは、1)現在社内規定でロシア宛の送金は厳しくチェックされることになっており、送金自体ができるか分からない、2)仮に受付銀行でOKとなった場合でも、経由銀行で資金が差し押さえられ、没収されるリスクがある。こうなった場合資金は戻って来ない、という回答がありました。
こうしたリスクが残る中でイチかバチかに賭けて送金することはできません。

経由銀行で没収された損害の税務上の扱い

没収リスクを承知の上で、送金手配をし、実際に没収された損害は、税務上どのように取り扱われるのでしょうか?
法人や個人事業主がその事業に係る送金で没収された損害は、事業上の損金や必要経費として扱われることになるものと考えられます。しかしながら、支払義務は残ったままですので、丸々損害として経営にダメージを与えます。
一方、事業に関係のない個人が生活上で購入した対価として支払うものが没収されたら何か救済措置はあるのでしょうか?
所得税法に「雑損控除」という救済制度があります。しかしながら、これは災害や盗難などで資産に損害を受けた時のものであり、送金経由銀行での没収は該当しないものと考えられます。となると、やはり、丸々大損です。
リスクがあると送金は控えられます。こうして金融制裁が効いてくるのです。

所得税と消費税の負担感

所得税と消費税の負担感

所得税と消費税の負担感

インボイス制度実施に伴い、免税事業者は課税事業者になると消費税の負担の重さに驚かされることでしょう。所得税の負担軽減に代えて消費税課税を充実させる国の税体系の見直しが着々と進められています。

税収では既に消費税が所得税を上回る

消費税導入の翌年である平成 2 年は、所得税の税収 26 兆円に対し、消費税の税収は4 兆円でした。この後、所得税は所得控除の見直し、税率の引下げやブラケット幅の拡大により累進緩和がはかられ税収は減少していきます。
一方、消費税の税収は平成 9 年、平成 26年の税率引上げを経て所得税の税収と横に並び、令和元年 10 月の引上げで消費税の税収は、ついに所得税の税収を逆転しました。

免税事業者にかかる負担

財務省の令和 4 年度税収概算では、総額65 兆円の税収見込のうち、消費税は 21 兆円。所得税は 20 兆円で、うち給与の源泉徴収が 11 兆円と大半を占め、事業所得は、わずか 0.6 兆円です。
インボイス制度の実施により、影響を大きく受けるのは事業所得者となるのではないでしょうか。事業収入から控除される必要経費には、保険料、租税公課、減価償却費、給与、事業専従者控除などが含まれますが、消費税ではこれらの経費は仕入税額控除できず、免税事業者が課税事業者となる場合、消費税の負担は大きく感じることでしょう。

消費税課税に向き合うためには

免税事業者にとって消費税導入から 30年以上にわたり享受してきた益税の恩恵がなくなろうとしています。消費税の導入以来、所得税は累進緩和を通じて負担軽減されてきましたが、税収の減少を消費税でまかなおうとする国の政策転換は、社会保障の財源確保が不可避となる中、インボイス制度によって更に加速されます。
事業所得者は、これまで以上に収益拡大を図る経営に専念し、通常の年は簡易課税で、多額の設備投資のある年は原則課税で申告するなどタックスプランニングを行う対応が求められるのではないでしょうか。

女性活躍推進法改正 101人以上事業所も対象に

女性活躍推進法改正
101人以上事業所も対象に

女性活躍推進法改正 101人以上事業所も対象に

女性活躍推進法とは「働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会」の実現を目的として「事業主に一般事業主行動計画の策定・届出」「及び女性活躍推進に関する情報公表」を義務付けています。今まで対象となっていたのは「常時雇用する労働者が 301 人以上の事業主」でしたが、改正により令和 4 年 4 月 1 日から「101 人以上300 人以下」の事業主も対象になりました。どのような取組をするのでしょうか?

一般事業主行動計画の策定・届出の流れ

「一般事業事業主行動計画」とは企業が自社の女性活躍に関する状況把握と課題分析を行い、それに基づき行動計画を策定するものです。行動計画には、計画期間、数値目標、取組内容、取組実施時期を盛り込まなければなりません。

①自社の女性の活躍状況を、基礎項目に基づいて把握し課題を分析します。        

基礎項目の必ず把握すべき項目は下記の通りです。
ア  採用した労働者に占める女性労働者割合
イ  男女の平均継続勤務年数の差異
ウ  管理職に占める女性労働者の割合
エ  労働者の各月毎の平均残業時間数の状況
(アとイは雇用管理区分ごとの把握が必要) 現状把握のために基礎項目の他、選択項目も活用すると分析にはより有効です。把握した状況から自社の課題を分析します。

②一般事業主行動計画を策定し、社内通知と外部公表をします。
ア.計画期間 イ.1 つ以上の数値目標(301人以上事業所は 2 つ以上) ウ.取組内容 エ.実施期間 を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し労働者に周知、外部公表

③一般事業主行動計画を都道府県労働局に届出します。

④取組を実施し効果を測定します。
定期的に数値目標の達成状況や、実施状況の点検、評価をします。

「えるぼし」「プラチナえるぼし」認定

一般事業主行動計画の作成・届出を行った企業のうち取組の実施状況が優良である等の企業に認定されます。このことは女性活躍推進企業である PR になり、人材確保や企業イメージの向上につながるでしょう。

二重払いとなる外国年金に係る 年金協定と社会保険料控除

二重払いとなる外国年金に係る
年金協定と社会保険料控除

二重払いとなる外国年金に係る 年金協定と社会保険料控除

日本と〇〇国との間の社会保障(年金)協定

外国で働く場合、働いている国と本国とで社会保障制度に二重に加入する必要が出てくる場合があります。年金を受け取るために、一定期間その国の年金に加入しなければならない条件があるときは、その国で負担した年金保険料が年金受給につながらないことがあります。
上記を踏まえ、(1)二重加入の防止と(2)年金加入期間の通算を目的として、社会保障協定が締結され、2022年 2月 1日時点で、日本は 23 か国と協定を署名済で、うち 21か国は発効済みです。(注)英国や中国など一部国では(2)は適用外とされています。

年金協定適用の外国払い社会保険料の控除

年金協定が適用される場合、年金事務所に届出書を提出して認められれば、その国から日本に赴任してきた人の日本での年金払いは不要となります。ただし、免除は年金だけで、健康保険の加入義務は残ります。
ところで、本国で支払われている年金につき、日本の所得税の計算では社会保険料控除は取れるのでしょうか?
従来は、日本の所得税法での社会保険料控除の対象が、日本の社会保険制度の下で支払われたものに限定されているため、相手国での社会保険料は控除対象外でした。

年金協定適用の外国払い社会保険料の控除

しかしながら、唯一フランスのみ、2007年に日仏租税条約の交換公文で、フランスの社会保険料も、所定の計算方法で計算した上限までは控除できると取り決められました。残念ながら、フランス以外の国では、他にはまだ適用国がないようです。
実際の手続きとしては、租税条約での取決めを実施に移す、租税条約実施特例法により、「課税の特例の届出書」という所定の書式を用いることでフランスの社会保険料を控除できます。
なお、この控除額を計算するにあたって、「租税条約相手国の社会保障制度に係る権限のある機関のその社会保障制度に係る法令の適用を受ける旨の証明書(適用証明書)」および「その(特定社会)保険料の金額を証する書類」の提出が求められます。
控除限度額の計算に際しては、日本の年金支払額の上限金額の計算要素の一つとなるなど、結構面倒です。
年金協定適用と年金事務所への届出は社会保険労務士に、所得控除計算は税理士にご依頼されることが時間短縮でお勧めです。

ふるさと納税で減額の 特別交付税額の決定取り消し

ふるさと納税で減額の
特別交付税額の決定取り消し

ふるさと納税で減額の 特別交付税額の決定取り消し

ふるさと納税の影響で交付税減は違法?

2022 年 3 月 10 日、大阪地方裁判所は、総務省が泉佐野市に対して行った令和元年度の特別交付税の額の決定を取り消す判決を出しました。
「ふるさと納税の収入を特別交付税の減額要因とするのは違法」という判断が下されたのですが、そもそもこの「特別交付税」とは何なのでしょうか?

特別交付税とは?

地方交付税制度は、本来地方の税収入とするべきものを、団体ごとの税制不均衡を調整して、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるように、国税として国が地方に代わって徴収して、合理的な基準によって再分配する制度です。
普通交付税は、人口密度や道路面積、学校数、気象条件等様々な要素を反映し、さらに市民税や固定資産税等の基準財政収入額と照らし合わせて、計算されるものです。
対して特別交付税は、普通交付税で捕捉されなかった、災害に関する経費や、地域の交通確保、産業の振興等の特別な財政需用があることや、基準財政収入額の算定が著しく過大に算定されていたものが対象となります。文字通り「特別な事情により交付される額」ということです。ちなみに総額の割合は普通交付税が 94%、特別交付税が 6%とされています。

省令で変更はダメだと判断

特別交付税は「地方交付税法」によって定められている制度で、今回の判決はこの法ではふるさと納税の寄附によって得た金額を「基準財政収入の算定に入れない」という確認を行っています。それを省令改正によって算定に組み込むのは「地方交付税法の委任の範囲を逸脱した」違法なものだと判断しています。
総務省は過去にも泉佐野市に「施行前の実績でふるさと納税制度に参加させないのは違法」との訴えを起こされ、裁判に負けています。過去の訴えも今回の訴えも、泉佐野市に対しての総務省の短慮な対応が問題になっていると言わざるを得ません。
交付税減額については 2022 年 3 月 14 日に国が控訴を行っているので、まだ敗訴決定ではありませんが、どうにも分が悪いように思えます。

キャリアアップ助成金の変更点 ~縮小・厳格化が進む~

キャリアアップ助成金の変更点
~縮小・厳格化が進む~

キャリアアップ助成金の変更点 ~縮小・厳格化が進む~

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、非正規労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善に対する助成金です。
助成内容の縮小や条件の厳格化が、今回の改正の特徴となっています。
令和4年度予算が成立し、雇用保険法施行規則の改正はあるものの、大枠の変更はないと思われますので、現時点で予定されている変更点の概要をお知らせします。

正社員化コース・障害者正社員化コース

正社員転換または直接雇用への切り替えに対する助成金です。
令和4年4月以降、正社員化コースでは、有期→無期が対象外となり、有期→正社員(57 万円/人)と、無期→正社員(28.5 万円/人)のみとなります。つまり、単なる無期転換では助成されなくなります。
令和4年 10 月以降、両コース(正社員化・障害者正社員化)の共通改正事項として、正社員の定義に「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」の適用が追加されます。助成を受けるには、昇給があり、かつ賞与が支払われるか退職金制度が必要となります。
また、非正規雇用労働者の定義が、現行の6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者に、「賃金の額または計算方法が『正社員と異なる雇用区分の就業規則等』の適用を受けていることが追加されます。
つまり、正社員とは別の賃金規定や就業規則等の整備が必要になります。

その他のコースでの変更点

賃金規定等共通化コースは、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等の整備に対する助成金です。今回、2人目以降の対象労働者に対する加算が廃止されます。また、家族手当・住宅手当・健康診断が対象外となり、対象は賞与と退職金のみ(正社員との共通化までは必須でない)となります。
短時間労働者労働時間延長コースは、延長すべき週の所定労働時間が5時間以上から3時間以上へ緩和され、助成額の増額措置が令和6年9月末まで延長されます。

いつの時代も絶えない結婚トラブル 「3枚の婚約証書」事件

いつの時代も絶えない結婚トラブル
「3枚の婚約証書」事件

いつの時代も絶えない結婚トラブル 「3枚の婚約証書」事件

昔の契約書-「起請文」(きしょうもん)

古典落語に「三枚起請」という演目があります。元は大阪落語の話。5 代目志ん生さんや 3 代目志ん朝さんの持ちネタでした。
起請(起請文)とは、約束を破らないことを神仏に誓う昔の誓書(契約書)のこと。
次のような順の構成で書かれるそうです。

熊野誓紙「熊野でカラスが三羽死ぬ」

鎌倉時代から、起請文は社寺で頒布される牛王宝印という護符の裏に書くのが通例となり、熊野三山のものが有名だったそうです。その護符が熊野の神使であるカラスに似ているので、「約束を破ると熊野でカラスが三羽死ぬ」と言われていました。
「三枚起請」は、遊廓の遊女が3人の客にそれぞれ「遊女の年季明け後に結婚する」という前書の起請文を3枚書いたことにより、客の男3人が「いったい誰と結婚するんだ!」と遊女に詰め寄る話です。

現代でいえば「婚約証書」

昔の婚姻トラブルの話ですが、現代でも、そのような起請文を書くことはできます。
「婚約証書」というものです。
婚約自体は手続を要しないものなので、法律の規定自体は存在しませんが、大正時代に「婚姻の予約」を認める判例が出たことで「法律的な約束」として認められております(不当に婚約を破棄すると慰謝料の賠償責任が生じることになります)。
「婚約証書」は、神仏には誓いませんが、公証人役場に行って公正証書にすることができます。主な記載内容は次のとおりです。

また、「婚前契約書」という形で、婚姻の届出、夫婦のあり方、家事分担、財産、その他、生活費、子どもの教育、慰謝料、離婚などを具体的に定める場合もあります。
また、民法では、夫婦間の財産上の問題に関する取り決めについて、婚前に行う「夫婦財産契約」という制度があります。

カスタマーハラスメント 対策は進んでいますか?

カスタマーハラスメント
対策は進んでいますか?

カスタマーハラスメント 対策は進んでいますか?

カスタマーハラスメントも対策が必要です

2022(令和4)年4月から、中小企業にもパワーハラスメント(以下、パワハラ)防止努力義務が課されます。
パワハラと言えば、一般には上司と部下、先輩と後輩など、社内でのハラスメントがイメージされがちです。
近年、社外の顧客や取引先から従業員に対する暴言、限度を超えたクレーム、強要などの迷惑行為により、従業員が心身に支障をきたし休職や退職につながるといった、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が、社会的な問題になっています。
従来「お客様は神様」と言われてきましたが、企業には従業員をお客様から守る対策が求められているのです。

カスタマーハラスメントのパターン

今年の2月に、厚生労働省は「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」を公表しました(同省ホームページからダウンロードできます)。
このマニュアルでは、企業が悩む顧客等からの行為を、次のように分類しています。

企業としてどんな対策が必要か?

厚生労働省は、企業が取るべき対策として、「カスハラの判断基準を明確にした上で、企業の考え方、対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要」としています。
つまり、顧客の要求に妥当性があるか、要求の手段等が社会通念上相当かなどの基準を決めて、現場との共有が求められます。

令和4年度の雇用保険料率は 年度途中で段階的に引き上げ

令和4年度の雇用保険料率は
年度途中で段階的に引き上げ

令和4年度の雇用保険料率は 年度途中で段階的に引き上げ

雇用保険財政の現状

2022(令和4)年3月 23 日、令和4年度予算が国会で成立しました。
雇用保険財政は、コロナ禍での雇用調整助成金の支出が累計5兆円を超え、雇用保険の積立金が不足したため、国庫からの支出(借入)で補っている状況です。
雇用保険の積立金は 2015(平成 27)年度には過去最高の 6.4 兆円もありましたが、2022(令和4)年度末の残高は 0.05 兆円(500 億円)と推計され、雇用安定事業費(雇用調整助成金が主)への貸出累計 3.1兆円と合わせると、実質3兆円超のマイナスとなっています。

令和4年度の雇用保険料率

雇用保険財政の悪化により、令和4年度以降の雇用保険料率は引き上げが避けられないと言われていました。
しかし、コロナ禍で企業業績は依然厳しく、異例ですが、激変緩和措置として年度途中で段階的に引き上げられることになりました。
今回の改定による雇用保険料率の新旧比較は、次のとおりです。

給与計算や年度更新の際に注意が必要

第1段階の年度前半の上げ幅は、事業主の 0.5/1000 だけですが、第2段階の年度後半の上げ幅は、事業主・従業員ともに年度前半に比べて、各 2/1000 となります。
年度内に複数の保険料率が適用される上、上げ幅も異なりますので、給与計算や次回の労働保険料の年度更新の際には、注意が必要となります。

民法の改正による 電子領収書の提供請求権

民法の改正による
電子領収書の提供請求権

民法の改正による 電子領収書の提供請求権

書面主義を卒業

昨年9月1日施行の民法改正があり、商品等の買い手は売り手に対し、書面での領収書に代えて電子領収書の交付を請求できることになりました。書面主義だった民法が変わったのです。
条文としては、弁済者に電子領収書の交付請求権があり、弁済受領者には、不相当な負担でない限り、それに応ずる義務があると、しています。弁済者には、領収書の提供方式が書面と電子のいずれに依るのかの選択権が与えられたわけです。

保存・閲覧の可能状態

電子領収書の発行とは、弁済者が電子領収書を保存、あるいは閲覧し得る状態にすることです。閲覧する電子領収書は、撮影等による画像保存が可能でなければなりません。アプリ上で画面表示された領収書の内容を撮影画像として保存されたものも、弁済がなされたことの証拠として一定の価値を有する、と案内されています。

「不相当な負担」の意味

また、「不相当な負担」の意味は、次のような場合のことです。
①請求時点において弁済受領者側に電子領収書提供情報システム等が整備されていない
②請求時点においてシステム障害等による電子領収書発行困難事情がある
③弁済者の要求が弁済受領者側の対応困難な方式での電子領収書である
なお、電子領収書の発行システム等の体制整備がされているにもかかわらず、前例がないことを理由にしたり、たまたま対応した従業員に操作能力がなかった、というような場合については、「不相当な負担」には当たりません。

インボイスとの兼ね合い

また、令和5年 10 月より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されますが、「民法上の受取証書」と「区分記載適格請求書(インボイス)」では、必要とされる記載事項が異なります。ただし、「民法上の受取証書」と、それ以前に発行されている請求書や納品書を含めて、インボイスが必要としている事項、①請求書発行者の氏名又は名称、②取引年月日、③取引内容、④税率ごとに区分して合計した税込対価の額、⑤請求書受領者の氏名又は名称、が記載されていれば、これを保存することにより消費税の仕入税額控除の適用を受けることができます。