年: 2022年

賃借人の孤独死

賃借人の孤独死

賃借人の孤独死

一人暮らしの高齢者に賃貸した場合、オーナーは、賃借人の孤独死と向き合うことを余儀なくされますが、これからは地域コミュニティと連携し、高齢者をターゲットにした賃貸を新たなビジネスモデルとして考えると良いかもしれません。

賃借人の孤独死リスクとは

賃貸オーナーは、賃借人の孤独死が判明すると、警察へ通報した後、残存物の処理、原状回復・リフォーム工事などの費用がかかるばかりか、賃借人の募集期間中は収入がなくなるなど、大きな負担となります。
さらに、次の募集では告知事項として孤独死の事実を明らかにすることが求められ、賃料を下げざるを得ないリスクも生じます。

高齢者賃貸にはメリットも多い

その反面、高齢者には貸し渋るオーナーが多いため、高齢者の賃借ニーズは高く、一度契約すると長期にわたり居住してくれるので、オーナーとしては退去に伴う空室リスクや工事の費用や募集コストを減らして、安定的な家賃収入を確保することが見込めます。実は、孤独死は高齢者より、むしろ50~60代に多いというデータもあります。

必要経費には、継続的な賃貸がポイント

不動産所得における必要経費の要件は、賃貸収入を得るため、業務に必要な費用であること、または業務に関連した費用であることです。
賃貸契約解除から、原状回復・リフォーム工事、募集活動を経て、新たな賃借人の入居までが間断なく行われ、再び賃貸が始まるのであれば、賃貸業としての継続性が担保されます。この場合、不動産所得の計算上、原状回復・リフォーム工事の費用は、業務に直接要した費用として、また、減価償却費や固定資産税は、業務に関して生じた費用として、必要経費になります。

コミュニティと連携した賃貸モデルを!

大事なことは、入居者の孤独死への対応をしっかりしておくことです。契約時には賃借人に損害保険を付保する、介護サービスを利用する、地方自治体や民間の見守りサービスを活用するなどです。コミュニティで高齢の入居者を途切れなく見守り、親族からの定期的な連絡を加えることで、リスクを極力減らし、結果として、安定的な賃貸収入の確保にもつながることでしょう。
一人暮らしの高齢者が増える中、孤独死リスクと向き合う高齢者への賃貸が、時代の要請に適うのかもしれません。

力士とプロ野球選手では違います プロスポーツ選手の所得区分

力士とプロ野球選手では違います
プロスポーツ選手の所得区分

力士とプロ野球選手では違います プロスポーツ選手の所得区分

プロ野球選手は「個人事業者」

プロスポーツ選手は皆「個人事業者である」という印象が強いと思います。
プロ野球選手の場合は、昔の通達(現在は廃止)で、選手は球団の指定する試合に出場することを約し、出場契約料・試合契約料を受けるもので、選手の技能や人気の高低により出場料が変わってくるとなると、一般芸能人の出演契約と変わらないものとして事業所得とされてきたことから、現在でも同様の取扱いが行われています。

相撲力士の場合は「給与所得者」?

他のプロスポーツ選手の所得区分は、所属団体との従属性が強いか、弱いかにより取扱いが変わってくるケースがあります。
たとえば、相撲力士の場合には、日本相撲協会に対する従属性が強いため、個別の通達により、日本相撲協会から支給されるものは給与所得とされています。その他の収入の所得区分は次のとおりです。

相撲力士の収入の所得区分

事業所得と給与所得の区分の難しさが反映

事業所得と給与所得の区分は「従属性」や「独立性」等から判定されますが、実際には判断が難しいケースが多々あります。
たとえばバイオリニストは高度な技量をもつため、プロ野球選手と同様に取り扱われるものとも考えられますが、過去の判例では、楽団への従属性が強いものとして給与課税を認めたケースもあります(日フィル事件)。

 

電子申告では余裕をもって 不測の事態に備えましょう

電子申告では余裕をもって
不測の事態に備えましょう

電子申告では余裕をもって 不測の事態に備えましょう

申告・納付の期限日にトラブル発生!

仕事始めの令和 4 年 1 月 4 日、国が運用している e-Tax(国税電子申告・納税システム)において、受付システムで処理が遅延するトラブルが発生しました。
正午過ぎに申告書の提出手続きをしていたある企業では、電子申告後、即時通知では正常送付が確認できたものの、その次の段階で通常届く受信メッセージが届かず、電子納付の手続き前で先に進めなくなってしまいました。数日前に行った e-Tax ソフトの最新バージョンへの更新が原因なのか、それとも自社のパソコンや通信環境が原因なのかわからず、少し狼狽したようです。
e-Tax のホームページサイトで確認したところ、緊急のお知らせが発信されていて、原因は e-Tax にあることがわかりました。
9 時ごろから発生していたこのトラブルのお知らせの第一報は午前 11 時には出ていたようですが、13 時になっても、16 時になってもトラブルは解消されず、ようやく 20時になって復旧したようです。

期限後申告や期限後納付となるのか?

復旧した 20 時まで待ってその後の作業を行っていれば当日中に手続きが終わったでしょう。しかしながら、復旧を知らずに手続きが期限日の翌日(令和 4 年 1 月 5 日)となった場合には、期限後申告や申請、期限後納付となるのでしょうか。2 年連続の期限後申告で青色申告取消とか、消費税の届出書の申請が間に合わず最悪の事態に面しそうなケースもあるかもしれません。
e-Tax では、「期限後の申告又は申請となる場合、管轄の税務署までご相談ください。」と呼び掛けています。おそらく、「自己の責任によらない、やむを得ない事情として、税務署長に認められる形」で決着するものと考えられますが、実際に期限内での受付が認められるまで不安は残ります。

余裕を持った期限前の手続きが望ましい

今回は原因が国のシステムである e-Tax側にありましたが、もし、自社のパソコン環境のトラブル(何らかのウィルス感染など)が原因であれば、自己の責任で、宥恕されることなく、期限後の申告・納税・申請になってしまうものと考えられます。
電子手続きを行っている場合には、不測の事態に備えて、日数に余裕をもった手続き体制を整えておくことが望ましいです。

中年からの確定拠出年金

中年からの確定拠出年金

中年からの確定拠出年金

長生き時代に備えて

中年になって住宅ローンを終えたり子供が独立したりして家計に余裕が出るころは自分の老後のことが気になる時期でもあります。公的年金や預貯金以外に何に投資しておくのがよいのか、これから老後に備えても間に合うには何がいいのか迷うところです。女性の 4 人に 1 人が約 95 歳、男性は約 90 歳まで生きる現在、長い老後に備えて自助努力として税優遇制度の利用は外せないでしょう。

知っておきたい確定拠出年金(DC・iDeCo )

DC には企業型と個人型があり、企業型 DCの場合、会社が掛金を出しますので会社に制度があれば利用したいところです。上限は DC のみであれば月 5.5 万円まで掛けられます(他との併用は月 2.75 万円)。口座手数料も会社持ちです。掛金は会社負担ですので所得控除にはなりませんが運用時は非課税で増やせます。受給時も退職所得控除や公的年金控除の税優遇対象になります。
また、自分で掛金を積み増す「マッチング拠出」の積み増し分は所得控除の対象です。導入している企業にいるなら利用したいところです。
勤務先に企業型の制度がないなら個人型のイデコ(iDeCo)の利用で掛金の所得控除を受けながら運用することになります。
自営業なら月 6.8 万円、会社員、主婦、公務員は月 1.2 万円~2.3 万円が掛けられます。

2022 年度から制度改正で使い易く

確定拠出年金で積立てができるのは企業型が 65 歳未満、イデコは 60 歳未満でありますが 22 年 5 月からそれぞれ 70 歳未満、65 歳未満に引き上げられます。ただし、イデコも 60 歳以上でも公的年金に加入する必要があります。加入年齢上限改定により受給開始年齢上限も 70 歳から 75 歳になります。
また、制度改正で企業型 DC とイデコの併用は労使合意が必要でありましたが、22 年10 月からは原則併用できます。年齢が 50 代であれば給与がある程度高いので税制優遇による節税効果は大きくなるでしょう。
将来の年金受給見込み額が「年金定期便」に記載されてくるのでリタイア後の収入の予想で現在の生活費を基準とした老後資金の必要額を積立てで補いたいものです。

不動産賃貸経営者は要注意! 居住用賃貸建物の仕入税額控除

不動産賃貸経営者は要注意!
居住用賃貸建物の仕入税額控除

不動産賃貸経営者は要注意! 居住用賃貸建物の仕入税額控除

令和2年 10 月より取扱いが変わりました

マンションやアパートを賃貸する目的で建物を建築した際には、その建物の建築費・購入費に消費税が課されます。一般に建築費や購入額は高額となりますので、その消費税額も大きな金額になります。
この建物を居住用として賃貸するときは、建物の取得に係る消費税は非課税の売上げ(住宅の貸付け)に対応するものであるため、賃貸する側の仕入税額控除は、採用する計算方法により、取扱いが異なりました。

②を用いるため、金の売買により課税売上割合を意図的に引上げる事例もあったことから、居住用賃貸建物に係る消費税は、すべて控除できないこととなりました。

税抜き 1,000 万円以上の建物等が制限対象

制限対象となる「居住用賃貸建物」を大まかに言うと、次のようなものになります。

例えば、ホテル・旅館や販売までの間、居住用賃貸を行わないことが確実な販売用不動産のような、客観的に「課税売上げのみに対応するもの」は、仕入税額控除の制限対象となりません。それ以外のものが、制限対象の「居住用賃貸建物」となります。
ただし、居住用賃貸建物に商業用賃貸部分(課税売上げ部分)と居住用賃貸部分(非課税売上げ部分)がある場合に、これを合理的に区分しているときは、商業用賃貸部分の仕入税額控除は制限されません。

事務所賃貸に変えた場合・譲渡した場合

この新しいルールにより仕入税額控除の制限を受けた建物について、調整期間(大まかに言うと3年間)中に、次のような状況に変わった場合には、仕入れに係る消費税額の調整が行われます。

この場合、取得時に仕入税額控除が適用できなかった消費税額のうち、課税売上げ(①又は②)に対応する部分として一定の算式により計算した金額を、仕入税額控除の消費税額に加算します。

住宅ローン控除の借入限度は4区分に ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?

住宅ローン控除の借入限度は4区分に
ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?

住宅ローン控除の借入限度は4区分に ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?

新住宅ローン控除は借入限度額を4区分

令和4年度以後の住宅ローン控除は、控除率、控除期間が見直され、環境性能に応じて、借入限度額が4つに区分されます。

ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)とは


「ゼロ・エネルギー・ハウス」は、よく「ZEH(ゼッチ)」と略されます。一般的には、①~③により、家庭での年間エネルギー消費量を正味でゼロとする住宅をいいます。

住宅ローン控除では、日本住宅性能表示基準における「断熱等級5」かつ「一次エネ等級6」の性能を有する住宅が該当します。
必ずしも太陽光パネルを設置する必要はありません(環境省の「Q&A」より)

「ZEH」と「長期優良住宅」の違いは?

皆さんが気になるのは「ZEH」と「長期優良住宅」の違いでしょう。「長期優良住宅」は、「耐震性」「省エネ性」「メンテナンス性」などトータルで性能が高く、長く住むことができる住宅です。そのため、「省エネ」に特化したZEHに比べれば、求められる耐熱性能(UA値)は落ちることになります。

  一方で、「耐震性」のハードルが高いため、かなり建築費用がかさみます。ZEHにも平成 30 年から補助金が出ていますので、ZEHの住宅が増加傾向にあります。

令和4年度もZEH補助金が出る予定

令和4年度もZEHに補助金が出る予定です。令和4年度の予算成立後に正式にアナウンスされるものと思われます。

自分は課税事業者? 免税事業者?

自分は課税事業者? 免税事業者?

自分は課税事業者? 免税事業者?

消費税は資産の譲渡、資産の貸付、サービスの提供(非課税のものを除く。「課税資産の譲渡等」という)に課税されます。国内で課税資産の譲渡等を行う事業者は、消費税の納税義務者となりますが、一方で納税義務が免除される事業者もあります。自分が課税事業者なのか、免税事業者なのか改めて確認してみましょう。

事業者には、納税義務がある

事業者が国内で課税資産の譲渡等を行う場合、個人、法人を問わず消費税の納税義務者となります。
しかし、消費税を計算して申告納付する事務は煩雑であり、税務署にとっても負担がかかるので一定の配慮がされています。

免税事業者になる要件

次の要件に該当する事業者は、消費税の納税義務が免除されます。
・前々年、前々事業年度(基準期間)の課税売上高が 1000 万円以下
・前年 1 月~6 月、前事業年度開始日から6 か月間(特定期間)の課税売上高(又は給与等支払額)が 1000 万円以下
・個人事業者の開業年度とその翌年
・資本金 1000 万円未満である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など

課税事業者になる要件

反対に、免税事業者以外の事業者は、次の場合に課税事業者となります。
・基準期間の課税売上高が 1000 万円超
・特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)が 1000 万円超
・資本金 1000 万円以上である新設法人の設立1期目、2期目の事業年度 など

課税事業者になると有利な場合も

免税事業者に該当する事業者も税務署に申請して課税事業者となることを選択でき、税負担が有利になる場合があります。例えば設備投資を行った年度に、仕入にかかる消費税額を売上に係る消費税額から控除しきれない場合、課税事業者であれば差額の還付を受けることができます。

適格請求書の交付には登録番号が必要

令和 5 年 10 月より課税事業者が仕入税額控除を行うには、仕入先から適格請求書の交付を受けることが必要になります。
反対に顧客に課税資産の譲渡等を行う際、適格請求書を交付しないと顧客の側も仕入税額控除ができません。交付には自ら課税事業者となったうえで、適格請求書発行事業者としての登録番号が必要になります。

求人広告運営ルール整備の方向

求人広告運営ルール整備の方向

求人広告運営ルール整備の方向

求人サイト経由採用がハロワ採用より多い

求人情報協会の集計結果によると 2021年 10 月の求人広告の職種分類別件数が全体で 922,904 件あったそうです。前年同月比では 20.2%の増加です。雇用形態別でも正社員が同+41.1%、アルバイト、パートが+11.8%、契約社員他が+19.1%と求人は回復傾向です。
同協会が厚労省に提出した資料では、求人媒体はハローワーク経由の採用決定は12.0%ですが、求人メディア(折込み求人紙、フリーペーパー、求人情報 WEB サイト等)経由の採用決定が 37.6%と雇用仲介事業者が労働市場で存在感を増しています。
ハローワークも最近は使いやすく幅広く対応できるサイト作りになってきていますし、求人情報 WEB サイトは求人年齢や職種で掲載したいサイトも違ってくるという面があります。
求人 WEB サイトの種類の多さ、便利さを見るとやはり利用者は増えていくでしょう。

今後のルールの整備も検討

しかし、求人メディアの利用を巡るトラブルも増えています。求人で示された条件と異なる雇用条件明示があって契約締結前にトラブルになるケース、個人情報の取扱いをめぐるトラブル、ハローワークに求人を出した企業が別の無料広告を持ち掛けられ、無料期間掲載終了後に有料契約に自動更新され高額請求となったトラブル等、事業者との間で苦情が発生していることを受けて、安心して利用できる仕組みが望まれています。
ほとんどの事業者は良心的だと思いますが、中には不適切な事業者もいるということでしょう。
厚労省の労働審議会は、12 月に厚生労働大臣に対する求人広告のルール整備の建議(意見を上申する)を行いました。厚生労働省ではこれを踏まえて職業安定法の改正案を作成するとしており、通常国会に法案が提出される予定です。

非居住者である家主へ国内不動産 家賃を法人が支払う際の留意点

非居住者である家主へ国内不動産
家賃を法人が支払う際の留意点

非居住者である家主へ国内不動産 家賃を法人が支払う際の留意点

非居住者所有の不動産賃料に係る源泉税

社宅物件を探している関与先さんから、「仲介業者から家主が海外居住者の場合に対応可能かどうか聞かれたが、どういう意味か」との質問を受けました。
所得税法では、「非居住者や外国法人(以下「非居住者等」)から日本国内にある不動産を借り受け、日本国内で賃借料を支払う者(ただし自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人が支払うものを除く)は、その支払の際 20.42%の税率により計算した額の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければならない」と規定されています。仲介業者の質問はこの対応の可否のことです。
なお、家主が日本人であっても、1 年以上の海外駐在等で、不在期間中に自宅を賃貸している場合も非居住者家主となりますので、注意が必要です。

非居住者の居住国と租税条約がある場合

家主が現在居住している国と日本国との間に租税条約が結ばれている場合には、租税条約の定めるところにより、源泉徴収が免除または軽減されることがあります。
しかしながら、2022 年 1 月現在、我が国が締結している多くの租税条約では、土地等の不動産の賃貸料については、不動産の所在する国においても課税できるとの規定を置いています。よって、非居住者等に対して日本国内の不動産賃借料を国内で支払った場合には、所得税法の規定により20.42%の源泉課税が必要となります。

貸主に源泉徴収免除証明書がある場合

借主に支払時の 20.42%の源泉所得税徴収と納税義務を課しているのは、非居住者等の申告漏れを防ぐ目的があります。
そのため、非居住者等が、きちんと申告しますよという宣言(税務署長への申請)をして、税務署長から源泉徴収の免除証明書の交付を受ければ、源泉徴収の免除となる手続きもあります。交付された免除証明書を賃借人に提示すれば、その証明書が効力を有している間の支払について、源泉徴収の免除が受けられることとなります。
借主である賃借人からすれば、家主が非居住者等である場合には、日本国の税務署長が発行した「源泉所得税の免除証明書」の提示を受けない限り、家賃支払時には20.42%の源泉税を国に納付し、家主へは残りの 79.58%の賃料を支払うこととなります。

辞めたいけれど言えない… “退職代行”サービスが人気の理由

辞めたいけれど言えない…
“退職代行”サービスが人気の理由

辞めたいけれど言えない… “退職代行”サービスが人気の理由

新入社員が、すぐ辞めてしまった!?

今年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業が新年度の採用や研修などのスケジュールの大幅な変更を余儀なくされました。
今年度入社の新入社員も、例年行われている入社式や歓迎会など会社のイベントが中止になったり、入社当初から在宅勤務となったり、異例の事態に戸惑った人も多かったのではないでしょうか。
そんな中、今年入社の新入社員がもう辞めてしまったという企業もあるでしょう。
もっとも、大卒新入社員の 3 年以内の離職率は 30%前後の状況がここ 20 年以上も続いており、今年に限った傾向ではありません。しかし、ここ最近になって新卒を含む 20~30 代の若者をメインに、退職の際に直接退職の意思を伝えることが難しい労働者に代わり、退職の意思伝達や処理、交渉(交渉は弁護士がいる場合のみ可能)を行ってくれる退職代行サービスの利用者が増えているというのです。

なぜ退職代行を使うのか

そもそも、期間の定めのない労働者はいつでも退職できることとなっており(民法627 条)、会社を辞めるのに会社の許可は必要ありません。なのにどうして、代行会社を利用するのでしょうか。その理由として多いのは、次のようなものです。
① 退職の意思を伝えたが、人手不足を理由に受け入れてもらえない。
② パワハラがあり、相手の態度が怖くて退職を言い出せない。
③ 引留め交渉をされたくない
ここから、従業員本人の退職の意思が固まっているのに企業側がそれを受け入れない状況が読み取れます。退職したくても言えない、言っても聞き入れてもらえないという思いが利用者側にあるようです。

企業側が備えるべきこと

原則として退職は労働者の自由であり、企業は本人の意思を受け入れて速やかに必要な手続きを行うべきです。
代行サービスにより、ある日突然社員が出社しなくなると、退職理由を聞くこともできない場合が多く、業務の引継ぎも難しくなります。
問題がこじれるのを防ぐためにも、一度は縁あって入社した労働者を、気持ちよく送り出せるような職場環境を整備することが求められます。