日: 2021年12月9日

70%損金算入の税制

70%損金算入の税制

70%損金算入の税制

施行されたのか、未だなのか

令和3年度税制改正の「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」が令和3年8月2日に施行されました。
この施行は、改正産業競争力強化法等一括法の施行日からとされていたためか、財務省や国税庁での案内はなく、この施行を広報したのは、中小企業庁でした。
なお、一括改正法の施行は、法公布日(6月 16 日)、公布後1ヶ月以内、3ヶ月以内、1年以内、と分かれていたので、経営資源集約化税制の施行と関連のあるものの施行の判別が分かりにくい状態でした。

中小企業庁が主導しての推進

中小企業庁は、8月2日に、「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について」を公表しました。
先の施行日を待っていたような対応で、中小企業庁の主導の下での「経営力向上計画」認定申請等の様々な手続きを経る必要があります、という案内をし始めました。

中小企業事業再編投資損失準備金制度

この税制は、令和6年3月 31 日までに株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額 10 億円以下に限る)に、株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の 70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入される、というものです。
ただし、この準備金は、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入します。

税制によるリスク対策支援措置

この制度創設の趣旨については、税制改正大綱は、「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」とし、財務省の税制改正パンフレットは、「M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とし、「税制改正の解説」も、中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

準備金の臨時取崩しでの益金算入

準備金の任意取崩し、経営力向上計画の認定取消し、本税制対象子会社の解散・合併消滅、その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)、その株式の譲渡、青色申告の取消し、等々の場合には、準備金の全部又は一部の取崩しをし、益金算入することになります。

小規模宅地等の課税価格の減額 「同居」はいつから?

小規模宅地等の課税価格の減額
「同居」はいつから?

小規模宅地等の課税価格の減額 「同居」はいつから?

「同居するのが一番の節税」と聞きますが

「同居をするのが一番の節税」という言葉をたまに耳にします。所得税に同居老親等(扶養控除)や同居特別障害者(障害者控除)という制度もありますが、ここでは節税効果の高い相続税の「小規模宅地等の課税価格の特例」のことを言っています。
相続税では、居住用や事業用の宅地は、被相続人らの「生活の基盤」となっており、その処分に相当の制約があることから、一定の限度面積まで、課税価格の 80%(又は50%)の減額を認めています。これを「小規模宅地等の課税価格の特例」といいます。

特定居住用宅地等の要件

被相続人の居宅の敷地となっている宅地を同居していた親族が相続等により取得した場合に、次の要件を充たすときは、「特定居住用宅地等」とし 80%減額(330 ㎡まで)を受けることができます。
(1)居住継続要件
相続開始時から相続税の申告期限まで、引続き、その居宅に居住していること
(2)保有継続要件
その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

条文に「同居はいつから」とは明記なし

この場合、同居親族が相続開始時から申告期限までには、被相続人の居宅であった家屋に住み続けばならないと規定はされていますが、同居親族が被相続人と「いつから同居しなければならない」とは、条文に明記されていません。少しの間でも、被相続人と亡くなる直前まで一緒に住んでいればよいということになります。

ご近所に聞かれても、平気なように!

だからといって、税務調査の際にチェックされないわけではありません。「同居」については、実態で判断されます。住民票だけを移している「形だけ」の場合には、同居の実態がないと判断されることがあります。
同居親族への郵便物の所在や同居親族の勤務会社での通勤手当(定期券)の申請状況、子供の学校はどこなのかなど聞かれることがあります。調査官が近所にヒアリングしたときに「おばあちゃん(被相続人)は一人暮らしだと言っていた」など言われてしまうと、同居の実態がないと疑われます。ご近所に聞かれても平気なぐらいの期間は同居していることが望ましいといえます。