日: 2021年12月14日

健康保険傷病手当金通算期間変更

健康保険傷病手当金通算期間変更

健康保険傷病手当金通算期間変更

2022 年 1 月よりの健康保険の改正内容

この度、健康保険法の改正が行われます。
その中で実務に影響が大きい改正を 3 点取り上げます。

① 傷病手当金の通算化
(令和 4 年 1 月 1 日施行)

傷病手当金は私傷病により労務不能になり賃金が受けられない場合に、労務に服することができなくなった日から起算して 4日目以降に支給される健康保険の給付金です。今までの支給期間は支給開始日から 1年 6 か月を超えない範囲とされていました。
例えばがんなどで入院退院を繰り返していると一時的に就労して傷病手当金を受けていなくとも、その期間も通算され 1 年 6 か月経過すると、それ以降同じ傷病で入院しても傷病手当金は不支給になっていました。
改正で支給期間は、支給開始日以降に就労していても、実際に 1 年 6 か月の分の給付を受けるまでは傷病手当金を受給できます。

② 任意継続被保険者制度の保険料や被保
険者資格喪失(令和 4 年 1 月 1 日施行)

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職し資格を喪失した後も最長 2年間、資格喪失前の健康保険に加入することができる制度です。この資格喪失時期が「任意継続被保険者となった日から 2 年を経過したとき、保険料を納付期日までに納付しなかったとき」となっていました。任意の資格喪失ができなかったので改定され任意継続被保険者が申し出たとき、受理された日の属する月の月末で被保険者を資格喪失できることになりました。
また保険料は、イ.退職前の標準報酬月額か、ロ.保険者全被保険者の平均標準報酬月額、どちらかの低い額でしたが、今後は健保組合で定めればイを基礎とすることができます。健保組合によっては従来と変更される場合があり注意が必要です。

③ 育児休業中の保険料免除要件の見直し
(令和 4 年 10 月 1 日施行)

育児休業中の社会保険料免除は今までは月末の時点で育児休業をしていれば当月保険料は免除となっていました。短期間の育児休業の時では月末日に休業しているか否かで免除が変わってしまうので不公平感があり改定されました。改定後は月末を含まなくても 14 日以上休業した月、賞与は育休期間 1 か月以上の時免除とされました。

収入と扶養の関係

収入と扶養の関係

収入と扶養の関係

収入の壁とは

秋になる頃、パートやアルバイトなどで働く方は、「年収はいくらまでに抑えるのがよいか?」と扶養の範囲を意識することも多いでしょう。税制上と社会保険上の両方に扶養範囲の壁がありますが、夫が会社員で主たる生計者年収 600 万円、妻パートのケースで考えてみましょう。

税制上の壁としては年 100 万円を超える収入があると住民税の課税が始まり、103 万円を超えると所得税が発生します。
妻の所得税は配偶者特別控除で年収が150 万円までは減額されず、150 万円を超えると控除が徐々に減額されていきます。そして 201.6 万円以上で配偶者特別控除はなくなります。

社会保険の壁としては妻が社会保険上の被扶養者ならば社会保険料は収めずに夫の加入している健康保険を受けられ、年金も国民年金の 3 号被保険者で基礎年金に加入していることになります。
しかし、妻が月 8.8 万円(年収 106 万円)となると妻自身が勤め先の社会保険に加入することになります。ただし条件があり
① 従業員数 501 人以上事業所
② 雇用期間 1 年以上(見込み含む)
③ 週 20 時間以上勤務
④ 学生ではない
の条件が付いています。2022 年 10 月からは従業員数の条件が 101 人以上、2024 年からは 51 人以上になる予定です。
さらに年収が 130 万円以上になると、前の条件にかかわりなく妻自身が社会保険に加入することになります。

扶養の範囲にするかライフタイルで考える

税制上の扶養を少し外れても、社会保険の扶養を外れることと比べれば金銭的負担はずっと少ないと言えます。
社会保険は加入すれば病気の時の傷病手当金や出産する際は手当金が受けられます。
年金も長生きすることが多い女性は妻自身の年金額が増えることは心強いでしょう。
壁を超えるのは損という考えでいくか、収入を増やさなければ手取りも増えないので税金や社保料を負担しても収入を増やそうとするとするか、家族や会社とも話し合いをしての選択でしょう。